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出会いの回想

 私が初めてこのお祭りに足を運んだのは、もう十年前になる。

 当時小学一年生だった私は両親に連れられ、この賑やかな非日常の世界にやってきた。


 目の当たりにした文字通りのお祭り騒ぎに、私の心は踊り、夢中で人混みの中を駆け回っていたのを覚えている。


 ヨーヨー掬いも金魚掬いも射的も型抜きも、その全てが楽しくて何度も何度も列に並んでは遊んでいた。

 とりわけ私が好きだったのが、くじ引きだ。


 怪しげで強面なお兄さんがやっているくじ引きではなく、近所の子供会に属する子供の親たちが中心となってやっていた、百円で三回引けるくじ引き。


 毎年景品は違うのだが、一等から一二〇等くらいまであり、一〇等までが豪華な景品になっているというのは共通していた。

 

 もちろん豪華と言っても、幼かった私から見ればの話であり、例を上げるなら小型ゲームや、かっこいい水鉄砲、玩具のお化粧セットなど、そんなようなものだ。



 


 

 小学三年生の年。

 もうすっかり一人でお祭りを見て回るようになった私だったが、相変わらずくじ引きには熱中していた。


 やる回数も人並外れて多いが、去年一昨年と、一〇等までの内の約半数を私が当ててみせたこともあり『くじ引きのあずみちゃん』なんてお祭り限定の通り名もあったりした。


 私はまんざらでもなくすっかりその気になっていて、この年の私のお目当ては二等景品だったハート型の小型ゲームだった。根拠のない自信だが、間違いなく自分がそれを当てられると確信していたように思う。


 そしていざ一回目のチャレンジの時が来た。箱の中に無数に散らばるくじを勘の趣くままに三枚引き、一つずつ捲っていく。


「七等!」


 私の当たった等数を告げる一言に周囲が「おおっ!」とざわめく。

 一回目からの大当たりと周りの反応に私は気を良くして二枚目、三枚目と一気に捲った。


「三等!」

「おおっー!」

「一等!」

「えぇっー!?」


 初っ端から当たり一〇等の内三つを当ててみせた私は、鼻息荒くすっかり有頂天になっていた。

 今になって思えば、大人達が箱の中に当たりくじを最後に入れてよくかき混ぜなかったのかな、と思う。


 何はともあれ、この分ならお目当ての二等景品を当てるのも時間の問題かなって思っていた、のだけれど。

 その後何回やっても二等が当たることはなく、もう一回! と列に並び直して少し経った時、クラスの同級生で何かと私を邪険にする女の子がにやにやしながら私の前に現れた。その手には私が欲しかった景品が握られており、私の物欲しそうな視線に気付いてか「何?」と半笑いで見せびらかせてきた。


 私は欲しかったその景品から無理矢理視線を引き剥がし、くじ引きの列から離れた。

 後ろからその子の馬鹿にした笑い声が聞こえたのを覚えている。


 負けた! 悔しい!

 途中からその子とお目当ての景品が被っていることは察していた。だけど絶対に私が取れると思っていたし、何より絶対に取られたくなかったのに!


 私は半べそをかきながら明るいお祭り通りを駆け抜けて、辿り着いたのは夜の闇に包まれた神社だった。

 立入禁止の看板が立て掛けられ、黒と黄色が編まれたロープが行く手を阻むように張られていたが、私はそれを跨ぎ越えた。

 鳥居をくぐり、鬱蒼と茂る木々に囲まれた石造りの階段を登ると、小さなお堂が奥にポツンと佇む。

 神社の名前は『行々神社』。


 私はお堂に続く石段に腰掛け声を殺して咽び泣いた。


 虫の鳴き声以外なにも聞こえないその場所に私の嗚咽が混じる。もし近くを通りかかる人がいたらその不気味さにゾッとしたことだろう。


 この時の私はとにかく誰もいない場所で感情を発散させ泣きたかった。基本的に私は我慢する性格(たち)だったから。

 学校で無視や心無いことを言われても誰にも相談せず、ぐっと我慢する損な性格。

 その性格は今でも変わっていないのだけど……。


 言い返してやりたい気持ちもやり返してやりたい気持ちもある。だけど、それが出来ないからせめて得意だと思っていたくじ引きでは負けたくなかったのだ。


 勝ち誇ったあの子の顔を思い出すと、悔しくて悔しくてまた涙が溢れてきた。ぐすぐすと鼻も啜り、嗚咽も止まらなかった。



 その時だった。


「うるさいな。静かにしてくれる?」


 お堂の影から一人の男の子が現れたのは。

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