高校一年の夏
作品内に登場する地名は実在しますが、関連性は全くありません。
じりじりと肌を焼くような暑さが日の沈みとともに和らぐ。とはいえ、耐え難い暑熱が照りつける日中に比べればマシというだけで、まだまだ暑いことに変わりない。
残暑が続く八月の終わり頃、近年では九月に入ろうと厳しい暑さが当たり前になっているので、『残暑』なんて言葉そのものが形骸化している気もする。
残暑も何も、まだまだ夏真っ盛りじゃん、と私は思う。
気力を蝕む茹だるような暑さは健在だが、この日だけはいつもは夜の闇に飲み込まれてしまう田舎の街が、それに逆らうように光を照らし賑やかだ。
白熱灯をぶら下げた沿道の屋台からは美味しそうな匂いと、威勢のいい呼び込み声が溢れている。
鮮やかな花の刺繍が入った浅黄色の浴衣は、この日の為にしっかり仕立ててもらった。皺一つないパリッとした襟元を摘みぱたぱたと扇ぐと、微々たるものではあるがそれでも何もしないよりは幾分かマシな涼を得る。
「はあ、暑いな~」
うんざりして口をついたのは夏になれば誰しもが口癖になるありきたりな言葉。
だけども本当は気分上々で、柄にも無く鼻歌を歌いだしたい気分だったりする。
私はお祭りが好きだ。
この時しか食べられないりんご飴やチョコバナナはもちろん、ペラッペラの容器に詰められた何の変哲もない焼きそばやたこ焼が、この日だけはなぜか格別に美味しい。
休憩用のテント内に常設されているかき氷のシロップを水で割っただけのジュースも然りだ。
そのテント内に設置されているベンチに腰掛け、コップに注いだブルーハワイのシロップジュースを飲む。
毎年ここの祭りに来るたびに飲んでいるが、その度に昔を思い起こさせる懐かしい味わいは変わらない。
飲みながら私は昔を思い出す。それは今日、これから会いに行く『きみ』と初めて出会った時の記憶――。