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勇者の従者は秘密のアサシン   作者: SHO-DA
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発覚

 エンノ。勇者様になっちまった元「妹」。戦場でのこいつはすげえかっこいい。見とれてしまうのは俺だけじゃない。

 そのくせ、普段のこいつはからっきしだ。趣味はつまみ食いで特技は大食い。よく見ればいつも口元になんかの食べかすがついている。

 寝起きの悪さは、従者泣かせ。おまけに羞恥心皆無。悪い男に騙されたら大変だ・・・まあこいつも人を見る目はあるんだろうけど・・・それで俺を従者にして大丈夫か、って思う。

 それでも、こいつの心配をしていれば、つらいことをちょっとは忘れられる・・・。

 無垢で無邪気で無敵な「妹」・・・愛している。そっちじゃないけど。

 

第12章 発覚


 コルンさんの作戦を伝えると、アルデウス様は長い時間、沈黙してしまった。いろいろお考えになっているのだ、そう思って俺も静かに待った。

「・・・この策は危険です。ホルゴスが危う過ぎる・・・こんな賭けは認められません。そもそも、これでは城主様のお立場が丸つぶれだ・・・やはり勇者など、組織での戦いには適応できない、時代遅れの決戦兵器でしたね。」

 え?でもコルンさんは自信ありそうでしたが。それに城主の立場って・・・。確かに『影守』が城主との関係を重視するのはわかるけど、もともとは独立してたはずで・・・。

「パルシウスくん。これは、キミに、また頼まなければいけません・・・できますか?」

 アルデウス様の頼み事・・・つまりは難しい『仕事』だ。妥協も話し合いもなく、こちらのことは秘密のまま一方的に・・・?『影守』は・・・ホルゴスの、人族のための組織で、だったら勇者様に手伝うべきで・・・。

 ・・・言えなかった。アルデウス様の判断に異を唱える口を俺は持っていない。それは『制約』以前に考えてはいけないことだった。俺は湧き上がる疑問を何度も打ち消す。

「どうしました?パルシウスくん。できますか?」

 ためらった。ためらって・・・大丈夫。いつも通りだ。俺はアサシンだ。短剣の切っ先。今アルデウス様が短剣をつかんで、ふるっただけだ。俺は考えない。感じない・・・。

「・・・もちろん。アルデウス様のお頼みとあらば、このパルシウス、たとえ勇者の一行でも・・・処理してみせます。」

 そう。結局はいつもの『仕事』だ。割り切って引き受けるしかない。俺は、どう勇者たちを処理するか、その手順を考えながら、部屋を去った。


 そうさ。いつものことだ。そうそう。

 俺は黄金の大山塊亭を後にした。

「パシリ・・・さん?」

 デリウエリさんの声が不審げな声が聞こえたが、気にしなかった。

 外は昼からの雨で、道には水たまりができていた。俺はそれも気にしないで、ひたすら歩いて、上から下までずぶぬれになった。すぐ夜になった。これが、昨日俺が待ち望んでいた『明日』だったのか・・・いつもと同じじゃないか。一年前になくなった『明日』は、やっぱりもうなかったんだな。

 雨がやまない。

 いつの間にか、俺はリュイの屋敷の前にいて、まだ明るいリュイの部屋を見ていた。ごめんな、やっぱりあの人たちの仲間にはなれなかったよ。お前にも会えない意味なんてあるのか?どんな最悪な未来でも、お前に会えない今の方が、この現実の方がつら過ぎる。

 あのきれいな空色の髪。フキゲンでワガママでエラそうな俺の親友。ずっと親友でいいじゃないか。あの物言いが、小さくて暖かい体が懐かしい・・・胸はぺったんこだけど。

「ナンだとぉ!」

 え?部屋のカーテンが開き、窓が開いた。

「ち・・・。失敬な野良犬め。」

 リュイはそう言って窓の外をにらんだ。俺のいない方を見ていた。俺は、そんなリュイを見続けていた・・・やせたんじゃないか?

「あ~・・・全く、どこの野良犬やら。こんな雨の夜に出歩く犬はどうかしているぞ。」

 それはお前だ。こんな日に窓を開けたら部屋もお前も濡れちゃうじゃないか。

「犬め。迷ってるのか。犬のくせに迷子とはとんだ役立たずだ。」

 雨音は強く止まないが、不思議にリュイのつぶやきは消えずに俺に届く。

「どうせ家にも帰れぬ役立たずなら、自分の行きたいところに行って、したいことをすればいいのだ。周りの迷惑?知ったことか!」

 これがリュイだ。俺のリュイ。親友だ。でも俺はお前みたいになれないよ。アルデウス様のお役に立てなくては、影守として、そのためには・・・あの人たちを。

「この駄犬!己のしたいことすらわからぬとは、迷って当たり前・・・だが、いつまでも迷い犬でもあるまい。必ず行くべき場所があるはずだ。自分で見つけるんだ。わかるな・・・もう見つけているはずだぞ。」

 俺に・・・言ってるんだよな。リュイ。俺に。リュイは、一瞬だけ俺を見た。

「さらばだ。迷い犬。次は、ないぞ・・・ほんとにホントだぞ!」

 窓は閉じられ、カーテンが閉められて、部屋も暗くなった。それでもリュイの声は俺の耳に残っていて、しばらく俺はそこから動けなかった。


 それから、どれだけ経っただろうか。俺は再び、黄金の大山塊亭に戻った。ここで『仕事』をしよう。そうさ。わかってる。俺の居場所はアルデウス様のいる、影守にしかない。もう何十人も殺して、これからみんなを裏切って、今さらそれ以外の選択はない。最初から一択だったのだ。

 まず殺気とか敵意や害意、そういったものを消す。宿の警備は厳しいが、特別、中から解除はしない。それじゃ怪しすぎる。俺ならこの程度、突破できるし。

 ただ、面倒なのはコルンさんだ。あの人が何かの仕掛けを施さないわけがない。それは人を信じるとか俺が怪しいとかとは別次元で、絶対にやってることだ。敵検知や結界、妹たちだってガンナーの俺のような情報感覚を持っていないとも限らない。

 だから、まず俺が敵と思わない。そうすれば、敵と思われない。敵意消散スキルだ。他の

検知系にも引っかからない。なにしろ『隊員』なんだから。

 そう。俺はあの人たちの隊員で仲間。一緒に寝泊まりし、飯を食い、戦って、笑って。

 仲間なのか?本当に仲間だったのか?なら、俺は今何をしようとしているんだ・・・。

おかしい。いつもなら簡単な切り替えがうまくできない。おかしい。おかしい。スキルが?

 山塊亭の前で、俺はどうにもならず立ち尽くしていた。

「ユシウス?・・・やはりユシウスではないか!」

 シル姉!いや、護姫様の声がする。外で警固していたのか。いや、そこじゃない。

「そうして不機嫌そうな顔をしていると昔のままではないか。いつもヘラヘラしていたから気づかなかった・・・どうした?記憶が戻っておらぬのか?我がわからぬか?」

 護姫様は、ズカズカと俺の前に来て、俺を見下ろす。

「全く、ずぶぬれではないか。さっさと入るぞ・・・どうした?」

 俺の足は動かない。俺の口は開かない。完全に持ち主の意志を無視している。どうにかなってしまいそうだ。

「いいから来い!」

 護姫様は俺の腕を強引に引っ張って、そのまま自分の個室に押し込んだ。

「ほら。まず頭をふけ。顔も・・・我が風や水や火の精霊魔術の使い手であればすぐに乾燥させられるのだが・・・。」

 結局俺が動かないので、護姫様は自分でタオルを使い、俺の頭や顔をふいていった。

 シル姉は、そう言えば昔はすごい世話焼きで、昔もこうやって俺の面倒を見たがっていた。

「だんまりだな・・・隠しておきたいことがあるのだな。しかしな・・・。」

 護姫様は俺の左手を取って、呪文を唱えた。シル姉と俺の左手が光り、族章が現れた・・・あ。しまった。

「ほうら・・・ゴウンフォルドの族章だ。やっぱりユシウスじゃないか。」

 この遠慮のなさも昔のままだ。むしろ普段の方がシル姉らしくない。

「弟よ・・・もう12年ぶりか・・・おっと。とりあえず服は脱げ。着替えろ。風邪は魔術でも治せぬからな・・・私の部屋着だ。着ろ。」

「・・・相変わらず強引だ、シル姉は。」

「やっと口をきいてくれたか。」

シル姉はうれしそうに俺を抱きしめた。

「大きくなったか。」

 それはあなたです。身長も、胸も・・・。シル姉は俺の上衣を脱がせ、体を拭こうとしたが、さすがに遠慮して自分で拭くことにした

 しばらくそんな俺の様子を微笑んでみていたシル姉だったが。

「言えるか?事情があるのであろう。教えてもらえぬか?」

 言えるわけがない。俺はシル姉を、妹たちやコルンさんや、ミュシファさんを、セウルギンさんもキーシルドさんも、みんなを殺そうとしているんだ、なんて言えるわけがない。

「まただんまりか・・・昔と変わらぬと思ったが、やはり少々変わったな。仕方なきことだが。しかし昔の お前はフキゲンでも、もっと堂々としておったぞ。エラそうで。」

 それは俺じゃない。あいつを連想する。もう会えないあいつを。

「今は妙にしょぼくれておる・・・どうしても言えぬか。」

 言えないよ。みんなにこそ、言えない。

「せめて、お前のことをエンやソディに知らせてもいいか?」

「ダメだ!・・・お願いだ、シル姉。頼むから、言わないでくれ・・・頼むから・・・」

 俺はきっと泣きそうだったんだろう。そんな俺を、シル姉はもう一度抱きしめてくれた。

「昔はこうするとお前が逃げ出したものだが、子どもじゃないとか言って。今の方が素直なのか、弱虫なのか・・・。」

 シル姉。プレートアーマーを脱いだシル姉は暖かくて、柔らかくて、いいにおいがする。相当鍛えているのに、女らしくて・・・。

 ただ、問題は。

 シル姉は俺の頭を撫でようとしてくれているが、相変わらずのへたくそだ。力加減が全くでたらめで、乱暴で痛くて単調で退屈だった。昔はこれが嫌で逃げ出したんだ。妹たちも嫌がって、それで俺が代わりにあいつらの頭を撫でるようにせがまれて・・・。

 それでも今は、じっと耐えた。抱きしめられて、シル姉の体温と柔らかさを感じていたかった。

「随分と甘えん坊になったものだな・・・12年前は、我は何もできなかった。お前が家を出されるとき何もできなかった・・・許せ。いや、きっと許してはもらえぬだろうが。」

「何言ってるんだ?シル姉のことを恨むわけがないだろう・・・俺が能無しだったけさ。」

「能無し?それは違うぞ。ただ、お前は・・・危険だったのだ。皆がお前を恐れた。たった4歳のお前を。」

 ・・・これもだれかさんを思い出すな。・・・俺に覚えは、全くないけど。

「ないのか?」

「記憶の封印は一年前に解けたけど、昔と今がつながっていないんだ。だからいろいろ実感がなくて。」

「なるほど・・・お前には・・・まだ世に認められぬモノを呼び出す力があった。それは使い方によっては 危険すぎる、とも。そして、そもそもはお前の振る舞いだ。乳母たちに早々に嫌われて・・・生まれて二日目の赤ん坊が流暢に話し出せばだれもが恐れようぞ!この賢い愚か者。みなが気味悪がってしまった。全く。お前の次からは早々に言い含めることにしたが。」

 そう。俺達、転生者は前世の自我を引きずったままこの世に生まれる。だから赤ん坊だけど、自我はいくらかあるし、「ご飯」とか「トイレ」くらいは覚える。そう言えば、調子に乗って、もっといろいろ話した気もするが・・・なぁるほどっ・・・。

 シル姉は俺の前にそれを察して、うまく隠していたのか。上手に「子ども」を演じて。その反動で、俺を相手にするときは逆に大人ぶっていたんだな。メーワクだったけど。

「結局大人たちからすれば、気味の悪い子どもがフキゲンでエラソーで、危ない力を持っている・・・怖かったのであろう。だから、お前は力と記憶を封じられて、里子に出されたんだ。」

 ホント、どっかで聞いたような話だ・・・。あれ?

「シル姉?何でシル姉が泣くんだ?今じゃ鉄壁無双の護姫様じゃないか。従者相手におかしいよ。」

「バカめ。やはりお前だ。油断するとすぐエラソーに、姉を姉とも思わぬ・・・それでも再び会えて、しかもこんなに近くにいて・・・事情を言えぬのは止むを得まい。我も誰にもしゃべらぬ。だから、ここにいろ・・・そして、二人の時だけでも、姉と思ってくれ。」

シル姉は強く俺を抱いて、俺もシル姉を抱きしめた。

「ありがとう・・・シル姉、ありがとう・・・。」

 でも、俺はシル姉たちを殺さなきゃいけないんだ。俺は・・・。スキを見て、と頭の中を横切らない訳じゃなかった。でも俺の体は、全く動かなかった・・・ダメだ、こんなんじゃ。


 護姫様の部屋から出た時、何かが落ちた音がした。

「ミュシファさん?どうしたの?」

「あ・・・あの、その・・・あたし、何も見てないから。」

 お盆を落としたミュシファさんは、相変わらずコミュ障的な意味不明のことを口走っている。

「お二人が、そういう仲なんて・・・知らないから!」

 そう言ってお盆を拾い、ミュシファさんは走っていった。

 ・・・まあ俺は護姫様の部屋から護姫様の部屋着を着たまま出て来たから、そう思うかもしれないけど・・・ねえ?その短絡的な妄想は何なの。追いかけるのも弁解するのも面倒くさい。思春期症候群には何を言っても無駄。放置決定・・・俺、思春期に冷たい?

 ち。リュイの奴め。一年も前のことだ、今さら引きずっちゃいない。だから安心して11歳に、12歳になればいいじゃないか。そうすればずっと親友でいられたのに。

「ミュシファさん・・・いる?」

「あ・・・えと・・・うん。」

 彼女の部屋の前で、そっと声をかける。

「さっきの誤解だから。俺、雨でずぶぬれだったから、着替えもなくて、そしたら護姫様が見かねて部屋着を貸してくださったんだ・・・それだけだよ。」

 それだけってのは嘘だけど、まあ、いいか。

そ~っと扉が開いて、なぜか鼻を赤くしたミュシファさんが顔を出した。

「・・・ほんと?」

「ほんと・・・ホントのホント。」

 俺は無限連鎖地獄に入る前に先回りをした。

「うん。信じる。わざわざありがと。」

 俺、何で感謝されてるんだろ。ていうか、なにやってるんだろ?

「どういたしまして。じゃ、お休み。ミュシファさん。」

「おやすみ・・・パシリ。」

 扉は閉じた。

 ち。どうせあの子も・・・。なのに俺は何をやってるんだ!

 ふと視線を感じた・・・誰もいない。気のせいか。疲れて周囲を探る気もしない。

 今日はもう引っ込もう。


 結局、この雨の夜。俺は何もしないで、自分の部屋に戻った。アルデウス様は「いつまでに」とは仰ってなかった。一番いい機会を逃さずに、処理すればいい。そういうことだ。まだ時間はあるはずだ。そう何度も言い聞かせて、やはりいつもの朝が来た。


 いつも通り。そう、機会を待つために、まずはいつも通りやっていこう。まずはそう思うことにした。だから、いつも通り、戦姫様をまず起こしに行く・・・。気持ちが少し楽になり、切り替えることができた。 相手が寝ているとはいえ、朝から『仕事』は、準備不足だ。

 なんとなく調子が出ないまま部屋に向かう。すると・・・またこの展開か。

「どうしたの!そんなんじゃ、あなた、死ぬわよ!」 

 ぎくっ。一瞬デリウエリさんに叱られたような気がして・・・なんだ、鬼軍曹か・・・こいつとも今日でお別れか。いや、元キャラとだけどさ。まあ慌てない。機会を待って・・・。

まずは、今日も朝は戦いからだ。戦姫ソディア様のお部屋に行く。

 無駄と知りつつノックをする。まあ無駄なんだが。で、部屋に入る。

 ・・・ホント。年頃の娘がこんなにムボービでいいんだろうか。今日もトップレス。毛布なんか放り出して、完全にベッドで大の字。まあ、下を履いているだけ勇者様よりマシなんですけど。小柄な体にふさわしい、小ぶりな胸は、今はほぼ水平だ。ちっぱい?

「ちっぱい言うなぁ!」

 むくっ。わあっ!半裸のくせに、ケリはやめろ。いや、拳もだ。つい必死で逃げてしまう。これだけ暴れて揺れないのは残念だ。一応近くに剣やら危険物がないことだけは確認したが。

「この、この、パシ公。てめえまだ逃げるか!」

「逃げますよ、それじゃ殺されちゃいます。」

 戦姫様が、そこで獰猛に笑った。ホント、年頃のかわいらしさが完全にこの凶悪さに隠れてしまっている。残念だ。

「オーケイだ。それじゃ朝飯の後、素手ゴロしようぜぇ。素手ゴロ。半殺しで勘弁してやる。」

 誰だ、女の子に素手ゴロなんて言葉を教えたのは。ていうかこんなに狂暴に誰がした・・・あ、俺だったな。「兄」のように無能なら捨てられる、こいつは昨日そう言ったもんな・・・。

 俺の動きは止まってしまったが、戦姫様も『朝飯後』に切り替えたらしい。良かった。

「パシ公、新しいパンツ出してくれ。」

「はいはぁい・・・。」

 あまりよくなかった。


 それでも、戦姫様はまあまあ早く片付いた。今度から「ちっぱい作戦」かって思いついて

「今度ってなんだよ!」

 そう呟いてしまう。今度なんて。チャンスがあれば俺は今日中にでも、『仕事』を終える。

 いかんいかん。ここは敵地・・・じゃなくて仕事場。油断禁物。「亀はミミちゃん少女はメアリー」・・・って、セウルギンさんのネタだった。あの人のネタの中では傑作の方だ・・・。ち。忌々しい。何もかも。


 再び無駄と知ってのノック。もういい加減ノックやめようかな・・・「もう」?ち。

舌打ちばかりだ。

「勇者様、パシリ入りますよぉ。」

 精霊界は・・・現出してない。よっしゃあ。後は、パンツ履いててね・・・お、大人しくベッドにはいた。毛布にくるまってるから、見えない。ふうっ。

 揺り起こすためにそっと枕もとに行く。あれ、寝てるときしているヘアバンドがとれている・・・初めてだな。

 髪が乱れている勇者様の額には、左右のこめかみから小さく白い角が一つずつ。

 ・・・そう言えば、こいつ、これ、いつも隠してたな。『オヅヌ』って言ったっけ。鬼娘。

 勇者になって、みんながお前を尊敬して、あこがれて、愛しているのに、お前はまだこんなのを気にしていたのか・・・。

 子どもの時、角を気にして泣いているエンノ。俺はエンノのその角を撫でてやったんだ。

思わず手が頭に伸びて、優しく髪を、そして角を撫でる・・・。

 ずばぁっ!エンノが、いや、勇者様が起き上がった。ていうか跳び退った。

 両手は額の角を隠している。

 下は・・・今日も履いていない。女の子なら隠すところはそこじゃないだろう。きれいな胸のふくらみとか、そのささやかな草むらとか、いろいろ。

 でも勇者様は額に手を当てたまま、俺をにらんで、泣き始めた・・・。

そう言えば、こいつは角のことで、随分いじめられていた。だから、兄弟の俺たちにすら隠すようになってた。そんな角を、俺は見てしまった。でも、伝えなきゃいけない。俺は本当に怖いとも醜いとも追思ってないって。全力で伝えなきゃって。

 こいつにとって、裸なんかより、角の方がよっぽど見られたくなかったんだ。うかつに触った俺が悪い・・・だけど伝えなきゃ。

「勇者・・・エンノ様。角のこと、うっかり触ってしまってすみません・・・でも、とてもきれいで、エンノ様にお似合いです。俺はエンノ様の角。かわいくて素敵だと思います。」

 12年前も、そう言えば似たようなことを言った気がする。その時、どうしたっけ?

 俺はまだ俺をにらみ泣いているエンの近くに行って、そっとその手を角から外す。

「エンノ様。大丈夫です。俺は怖がったりしません。おきれいですよ。」

 そう言って俺はその虹色に輝く髪を優しく撫で、そして、その小さな角にそっとキスした。

 全身を紅潮させたエンは、そのままくたくたって俺に体重を預けた。俺はそのまま髪を撫で続けて・・・。

 あら・・・寝ちゃった。起こしに来たのに、また寝せてしまった・・・。

 ほんと、何やってるんだろ、俺。俺はエンを・・・勇者様を抱き上げ、ベッドに横たえた。

 毛布でそのきれいな体を隠す。ヘアバンドは・・・ちぎれてたのか。

 起きるまで、ここにいるか。何か起こすの、かわいそうになってきた。でも、今ってチャンス・・・。

 ドンドンドン。ノックが聞こえる。ほっ。

「パシリ・・・あの・・・勇者様、まだ?みんな待ってるけど・・・」

「ミュシファさん。すみません。今日は手ごわくて。」

 俺がわざわざ手ごわくしちまったってのは内緒だが。

「もう少しかかります。よかったら皆さんお先に朝食をとっててください。」

「うん・・・そう言ってみるけど、多分待つと思うな。」


 俺はエンの寝顔を眺めた。ホント、きれいになっちゃって。勇者様になんかなりやがって。俺なんかの、能無しで何やっても半パものとは大違い。三人とも大したもんだけど、やはり勇者様は一段高い。

 でも、こいつもきっといろいろあったんだろうな。

 勇者エンノは精霊に愛され過ぎている。言葉を話せないだけでも、不便はあるだろう。角だって、気にすることはないと思うけど、周りが気にするんだろう。だからあんなに一生懸命隠して、俺に見られたって泣いて・・・あれ?これってお手討ちモンじゃない?無礼討ちってやつ・・・。

 こいつが起きたらそうなるかも・・・なんか楽しみだ。こいつに手討ちにされるんなら、本望って気がする。できればリュイに殺されたかったけど、でも、エンでもいい。いや、エンがいい。そしたら、俺はこの苦しさから解放されそうだ。そんな気がする。

 だから、俺は勇者様が目覚めて、俺を、あの美しい精霊語で罵って、手討ちにしてくれることを真剣に祈って、待った。

 だけど、目覚めた勇者様は、俺に角を指さして、もう一回ってかわいくねだる仕草をした。少し顔が赤かった。俺は、俺に撫でられた虹色の髪が万色に輝くのに感動し、そして小さく白い、エンのかわいい角にそっとキスした。胸の苦しさを押し殺して。


 ドンドンドン。

 びくっ。俺も勇者様も思わず飛び上がった。

「・・・パシリ。やっぱりみんな待つって。まだかかりそう?」

「ミュシファさん・・・勇者様が今お目覚めになられました。これから大急ぎで身支度を整えますが・・・手伝ってくれます?」

 正直、若い男一人が、年頃の娘のこんな世話をするのは問題だぞ。前にも言ったけど。今なんか雰囲気微妙だし。でも。

「いいの?あたしが手伝っても?」

 ・・・かえって長引く。そうですね。よくご存じでいらっしゃる。

「オッケーです。何とかなります。勇者様も協力的ですし。」

 勇者様はいつになく素直に下着を身に着けだした・・・一人でできるモードか?・・・いや、それ向きが違うから。

 結局、いつものように下着をつけさせ、上衣を着せてボタンをはめてやる。スカートをはかせ・・・足上げて、足上げないで、足さげて、と。で、髪も急いで整える・・・ブラシを出した俺の手を勇者様がつかんだ・・・手がいいの?はいはぁい。俺は自分の手で優しく勇者様の髪を整える。今日は前髪も俺に任せてくれた。また寝るといけないから、手早く済ませた。

 勇者様は鏡の前で、今日の出来栄えを見て、ブイサインをした。ご機嫌で結構だ。で、ヘアバンド、どうしよう。ぷら~ん。あ、替えがある。よかった。俺はない方がいいけどな。

 俺たちは急いで部屋から出て、食堂に向かう。

 ち・・・お手討ちにならなかったか。マジで残念だ。


 待たせた朝食は、みんなの目が怖かった。それを全く気にしない勇者様はやはり「大物」だ。

 待たせた分、いつになくお替りのペースが早い。ああ、戦姫様、落としたスプーンは交換しますから。セウルギンさん、魔術師ってそんなに食うって俺始めて知りましたよ。「メシは熱いうちに食え」って?手がかからないのは一にキーシルドさん、二に護姫様・・・ってまたお替りかい。食いすぎだ、その体形どうやって維持してるの。エンノ様ぁ・・・口拭いてあげます。じっとしてて。・・・コルンさん?妙に存在感がない。

「あのう・・・コルンさん?お替りいります?」

「・・・いいえ。今朝はもういいの。ありがとうね。」

 コルンさんはきれいな笑顔で断ったが、なんだろう。メガネのせいか、表情が読みにくかった。


「パシ公!わかってるだろうな!」

 ち、忘れちゃくれなかったか。戦姫様は、俺の腕をつかみ・・・痛い痛い・・・強引に広間に連れ出しそうとした。

「ソディ、随分お気に入りだな。」

 護姫様が声をかける。いや、ここは助けてよシル姉・・・。

「こいつ、今朝、本気の俺の攻めを余裕でかわしやがった。」

 ・・・だってあたったら死ぬもん・・・あ、こいつに殺してもらうって手があったか?でもなあ・・・リュイやエンならともかく、こいつに殺されても、何か救われない気がするのはなぜだろう・・・きっと「ま、いっか?」で終わっちまうからだろう・・・目に浮かんだ。

「ま、仲良くな。」

 護姫様の笑顔が、シル姉の笑顔だった。俺は、あの人の弟で、こいつは妹で・・・シル姉は事情を知らないこいつが俺になついているみたいでうれしいんだろう。

 でも、ライオンになつかれる方の身になってくれ。遊ぶのも命がけなんだから。もっといい命の捨て場所はないかな。

 ほら、いきなり真空跳びひざ蹴りが来るし。その身体能力は人類の驚異で、今は俺の脅威だ。

「ち、よけやがったか!」

 だから避けないと無駄死に・・・犬死にか?迷い犬のまま犬死?違う。

左の蹴上がり・・・に見せかけてのかかと落としが本命、と。

 俺は迷っていない。この子を殺して、みんな殺して、それがホルゴスのためだってアルデウス様がおっしゃるなら、そうするだけの道具・・・考えちゃいけなくて、感じちゃいけなくて。

 左のひじうち。かわしたら俺の手をつかんでひねる?

 遅い!俺はソディのひじをかわし、手をつかませず、逆に足を払った。あ、決まっちゃった。タイミングはまりすぎた・・・。

「・・・パシ公ぉ~っ」

 地獄からの声がする。が、次の瞬間

「もう一回だ。今のタイミングだと、俺は手わざの攻防に気を取られて足元がお留守だったんだな・・・もう一回。今度は防いで見せるから・・・頼むよ。」

 楽しそうだなこいつ・・・・将棋の『待った』じゃないんだぞ。

 そんなこんなで、結構な時間をソディ・・・戦姫様と過ごしてしまった。色気は欠片もないけどな。で、ついに請われるままに助言らしいことまで言ってしまった。

「もともと大剣をお使いになる戦姫様に、人間相手の格闘術など、さほど重要ではないのですが・・・。」

 トロール・・・は、まあ、まだしも、ケルベロスとかドラゴン相手には、ねえ。

 そういや、ウワサじゃ、こいつドラゴンの成獣とはやってたな。確かタイマンで。

「ですが、体術も含めて、体全体を使うことで、より効率よく戦えるかもしれません。」

 剣術と体術をバラバラに覚えるのではなく、両者を統合する。今だって、ソディは、打撃技と関節技、投げ技の連携がイマイチだった。剣術も含めて、全部統合して、関連付けて戦いの流れにする・・・。

「・・・難しそうだな。」

「あ、すみません。ただの思い付きです。気にしないでください。」

 柄にもないことを言ってしまった反省で、思わずそう答えたのだが

「いや、納得いった。パシ公の言う通りだ・・・俺はこの一件の後は修行をやり直すよ。今日はサンキューな。」

 そういってうれしそうに笑うソディは、いつもの獰猛さが消えて、年よりむしろ幼くて・・・かわいかった。紅金の髪が太陽に反射してきれいだった。

 そうか。今日は晴れだったんだな。雨と何も変わらないけどな。俺は・・・この子を・・・殺せるのか?

状況は何も変わらない。むしろ次第に苦しくなってくる。


「済みません。ミュシファさん・・・朝食の準備も片付けも全部やらせてしまって。」

 従業員も普通にいるんだけど、離れだし気軽だからって結局従士と従者が主に雑用をしている・・・安全対策にもなるしな、普通なら。

 だから結構ミュシファさんは忙しい。今日なんか特にだ・・・。

「・・・ミュシファさん?」

 どうしたんだろう?また、戦姫様がなにか・・・って俺といたじゃん。

「・・・パシリ・・・パシリはすごいね。」

 はあ?何言ってるのこの子はいつも・・・。

「だって・・・ここにきて、何日もたってないのに、もうみんなに溶け込んで・・・食事のお給仕も、勇者様の髪の手入れも、戦姫様の戦いのお相手だってできるし・・・なんでもできて・・・ズルイよ・・・ずるい・・・。」

 ち。この思春期症候群め。何を泣いてやがる。こっちだって、いろいろある中やっとなんだぞ。だいたい人族の危機だってのに・・・。

「そんなこと、ないよ。いつもニヤニヤしてるからみんな話しやすいだけだし、食事とか雑用は、ほら、宿舎暮らしで集団生活の下っ端仕事で慣れてるし。」

 ミュシファさんはうつむいたままだ。

「妹や弟を寝かせるのに頭を撫でたり髪をいじったり、まあできるようになって」

 まだか、まだ顔を上げないのか?

「逃げ足だけは早いんで戦姫様にもなかなか捕まえられないってだけで・・・。」

 ミュシファさん?

「ゴメンね。パシリが悪いんじゃないのでも、何にもできないあたしが、悔しくて・・・だから何でもできるパシリがうらやましくて・・・ゴメンね。」

 ・・・。この子・・・。俺はミュシファさんに近づきそっと髪を撫でる。

「きやあっ!」

「驚いた?・・・でも一分だけ、俺に少し触らせて・・・話を聞いて。」

 しばらく泣き顔のままうつむいていたミュシファさんは、それでも小さくうなづいた。

 赤い髪。俺と同じで精霊の加護のない、普通の髪。でも女の子の髪だ。少し汗臭いけど、その手触りが繊細で、俺の手をすり抜けるようだ。

「ミュシファさん・・・俺なんて全然ダメなんだ・・・俺はホントにやりたいことができなくて、ホントに必要なことが身につかなくて・・・ダメなんだ。」

 ミュシファさんはいつの間にか目を閉じている。そして大人しく俺に髪を預けてくれた。

「ミュシファさんは、何がしたいの?何になりたいの?みんなの役に立つスカウトでしょ。」

 こくん。素直にうなずくミュシファさん・・・今はそんなに面倒くさくない。優しく優しく髪を撫で続ける。

「じゃあ、こんな雑用で俺に及ばないとか、そんなの全然大したことじゃない。そんなの気にしちゃいけない・・・大丈夫。ミュシファさんは、器用で素早くて、頭の回転も悪くない・・・。きっといいスカウトになれる・・・。」

「ホントに?ほんとにそう思う?」

 ミュシファさんは眼を閉じたままだが、その表情はさっきより随分穏やかになっている。

「ホントのホントのホントのホントだ。」

 この展開。昨日もあったな。俺も芸風がすくねえな。

「俺はなりたい自分になるために一生懸命努力しているミュシファさんが素敵だと思う。」

「・・・それも本当?パシリ・・・チャラいこと言ってない?」

「言ってない・・・この目を見てくれよ。超マジな目だぜ。」

 ミュシファさんは恐る恐る目を開けて・・・笑った。

「そこで笑う?俺のマジ目線で笑う?傷ついちゃうな。」

「だって、おかしいもん・・・チャラいよ、やっぱし・・・でも、信じてもいいよ。」

「上から目線の信じてもいい、か。はいはい。どうせ俺はチャラくて軽いですよ。」

「怒った?」

「まさか。その通りだし・・・でもこれも信じて。ミュシファさん。なりたい自分をめざすなら、頑張る自分も信じて・・・好きにならなきゃ。」

「自分を・・・好きになる?」

「そう。」

 俺の手は問答の最中も彼女の髪を撫でている。なにせ不機嫌姫リュイお墨付きの特技だ。

「ミュシファさん、いつも失敗したら自分を責めて、また自信なくして、また失敗して・・・負の連鎖だよ・・・でも頑張って失敗したんなら、仕方ない。そう思う時があってもいい。頑張った自分を責めるのは間違いだと思う。だって、頑張ったんだから。頑張んなきゃなりたい自分になれないんだから。ミュシファさん、いつも頑張って、それで失敗して、それでも頑張って・・・そんなえらい子はなかなかいないぞ。だから、えらい自分をまず好きにならなきゃ・・・。難しかったら、俺が褒めてあげるよ・・・いつもえらいぞ、ミュシファ。どんなに苦しくても頑張ってるミュシファが俺は大好きだ・・・大丈夫、きっとキミはなりたい自分になれる。だから、そんな自分を好きになろう、な?」

 ミュシファさんは大泣きしてしまった・・・まずったか?これじゃ俺がいじめたみたいじゃないか・・・。

 そう思って困っていたが、ミュシファさんは俺にしがみついて離れようとはしなかった。

俺はそんなミュシファさんの髪を撫でながら思った。

 これは、俺の話なんだ。俺が俺に・・・いや、リュイが俺に言ってくれていたことだったんだ。俺は何をしたいのか?何になりたいのか?まだ見つけられないで、じたばたして苦しむ俺に、リュイが教えてくれたことだったんだ・・・。あのバカめ。10歳のくせに。何であいつは10歳なんだ。もう15とか20とかでいいだろう。ペッタンコだけど。


 ミュシファさんがようやく笑顔になって、作戦の準備してくるって街に出かけた。自由になった俺は、離れの中を歩いていたところだった。なんか、疲れていた・・・苦しい。

「パシリくん。」

 階段の上から俺に声をかけたコルンさん、眼鏡で表情はわかりにくかった。嫌な予感がした。


 そして、俺はコルンさんの部屋に呼ばれた。コルンさん・・・ここじゃ一番怖い。まさか・・・俺は気を取り直し部屋に入った。

「今日は大人しくはいってきたのね。」

「俺だっていつもああじゃないですよ。」

 と、さりげなく調子悪いアピール・・・一瞬足が止まる。先客だ。キーシルドさん!真実の見極めに、聖教師の神聖魔術が有効なことは子どもでも知っている。ち。

「座ってパシリくん・・・今日はあなたに聞きたいことがあるの。」

「何でしょう?もちろんコルンさんの言うことなら・・・大概はお教えしますよ。」

「『大概』?いつもは『なんでも』なのに・・・今日は謙虚ね。」

 真実検知や尋問系のスキルなんかの前で、軽はずみな安請け合いは厳禁だ・・・。大丈夫。これくらいは、俺の対抗スキルで平気で潜り抜けられる。いつもなら・・・。

「ところで、これ、気づいてた?」

 コルンさんは俺の肩から何かを取るような動作をした。そして、手を開く。小さな菱形の・・・何だろう?まさか!

「なんのアイテムかはナイショ・・・へえぇ~気づかなかったんだ。らしくないわね。」

 ダメだ。動揺するな。ブラフかもしれない。手品でなにかつけてたフリをして・・・。

「らしくない?とぉんでもない。俺はいつもうかつでチャラいって言われてますし。全然わかりませんでしたよ。」

 そう。嘘じゃない。俺がそういうふうに言われているのは事実だ。不本意ながらわからなかったことも。

 しかし、謎のアイテムに加えて、聖教師。二段構えか・・・さすが、コルンさん。でも大丈夫だ。確定していたら今さら尋問なんかしない。だからいくらでも潜り抜けられる。こんなのはピンチの内にも入らない。

「・・・じゃ、パシリくん。パルシウス。これはあなたの本名?」

「・・・俺がパルシウスってことは本当です。もっともみんな俺をパシリとしか呼ばないんで、そっちが本名だと思ってるヤツもいるかもしれませんが。」

 答えにはできるだけ前提や仮定をつける。そうすれば『真実』が広がって解釈される。

しかもきわどい質問はYES/NOでは応えない。今も『本名』じゃなくて『本当』と言い換えることで嘘じゃなくなる。

「あなたは、別の組織から派遣されてきたの?」

「え・・・いやだなあ。俺、衛兵の下っ端、従兵ですよ。まだ衛兵隊に所属していますけど。正式にやめる暇がなくて。」

 大丈夫だ。このままなら。大丈夫・・・。

「さすがね・・・じゃ、ね。昨日からあなたに敵意を感じるの。あなたは、わたしたちの敵なの?」

「何・・・何言って・・・。コルンさん。俺がみんなの、勇者様やコルンさんの?・・・何をバカな。」

 驚いたり檄したふりをして、語尾は濁す。それで、真実の確定は困難になる。しかし・・・敵意?そうかもしれない。昨夜から俺は何回もこの人たちの敵、そう思おうとしていた。普段と逆だ。敵検知かなんかにひっかかったか?マズったな。ホント、らしくない。

「しぶとい、しぶとい。」

 この人笑ってる。確証があるのか・・・いや、いつもの遊びかもしれないぞ。意外に「ゴメンねえ、お姉さんからかっちゃったぁ」とかってオチも捨てきれない・・・マジで読みにくい、この人。

キーシルドさんも一切表情を変えない。あの感激屋はどこに行った?今は魔術を行使してるかどうかも悟らせない。意外にポーカー強そうだなこの人も。

「パシリくん・・・私たちの情報を流したのはあなたね?裏切ったの?」

 どきっ。核心だ。が、答えははぐらかすこと。でも裏切ったわけじゃないともいえる、何しろ最初から俺は密偵として入ったのだから、裏切りとはいわないよな。だけど。

「・・・どうしたの?」

 俺は裏切ってなんかいない。

 俺は最初からあなたたちの仲間じゃないから。

 だから「いいえ」と言えばいいじゃないか・・・。

 なのに・・・なのに・・・。こんな尋問なんかになんで詰まるんだ・・・何で?

「・・・パシリくん。あなたの右手の隊章・・・随分消えかけてるわ。仮の隊章でも、普通はそんなにすぐに消えない・・・でも、それがある限り、あなたの居場所や状態はわたしに伝わるの。」

 それはそうだけど、手袋とかで外に出してなければ位置とかばれないはずって誰から聞いた?コルンさんから?それがもう情報操作だとしたら!・・・大丈夫だ。まずい場所に行っていないはず。状態・・・状態異常もない。

「時々あなた消えるのよ。これが感知できないところに。それはつまり、結界とか、検知妨害とか、強力な認識阻害とかが働いている場所にでも行かなきゃありえない。そしてあなたは何度もそういう場所に行っている。」

 ち。アルデウス様のところじゃ、間違いなく引っかかる。あと、デリウエリ師匠の部屋も。そのたびに隊章が消えていく・・・そういうことか。だけど、アルデウス様のことを話すわけにはいかない。それに・・・何でさっきから俺は・・・こんなに・・・。

「パシリ・・くん。」

 コルンさんはメガネをはずし、真顔になって俺の前にやってきた。危ないですよ・・・人質とかにとられますよ・・・油断大敵ですよ・・・コルンさん。

「これだけは答えて。YES/NOで。」

 二択。だが、ここまで追い詰めた場面での選択は、実は一択だろう。

「あなたは・・・私たちの仲間じゃなかったの?」

 ずきっ。なんでだろう。何で胸が痛いんだろう。でも平気。こんなことに俺は左右されない。どうやって、今を・・・・乗り切ろう・・・。この答えは・・・言えない。

「例え私たちの敵だったとしても、この数日、ずっとそうだったの?・・・私にはそう思えなかった。今日だってあんなにみんなと・・・。」

 もう二択じゃない・・・質問多すぎです。尋問としては失格ですよ。コルンさん・・・。

「朝エンノ様とソディア様を起こして、みんなの食事を手伝って、ソディア様と稽古して、泣いてるミュシファを慰めて・・・。」

 ち、駄々洩れじゃないか俺のプライバシー・・・。

「あなたはわたしたちの仲間だと思いたいの!でも、もし、そうでなくても、例え敵だったとしても・・・その立場を超えて、一瞬でもわたしたちを仲間だって思ってくれなかった?パシリくん。もしもそうでなかったら・・・私は人間を信じられなくなるわ・・・パシリくん。答えて。」

「・・・パルシウス殿。拙僧は貴殿から多くを学び、また多くの想いを共に共感したと思っ

ております・・・その貴殿が、我らを最初から最後まで裏切っておったとは思えぬのです・・・もしもそうだとしたら、拙僧は神の栄光を、人の世にもたらす自信が・・・なくなる・・・。」

 コルンさん・・・泣かないで・・・キーシルドさん・・・信じすぎだよ・・・人間なんて

 たいした生き物じゃないけど、でも中には立派なヤツもいるんだ。みんなが俺じゃない・・・

 コルンさん・・・キーシルドさん・・・。

「す・・・すみませんが、質問が・・・多すぎて・・・ど、どう答えればいいのか・・・俺・・・。」

「・・・そうね。私もバカね。もっと・・・簡単な質問にするわ。パシリくん・・・あたし達のこと・・・好き?YESorNO・・・?」

 コルンさん・・その答えはとっくに決まってる。それだけは即答なんだ。

「YESです・・・俺は・・・みんなが、隊のみんなが好きです・・・ホントに・・・ホントに大好きなんだ・・・。」

 これはまぎれもない真実で、だからこそ、俺は、俺は・・・。みんなが大好きなのにそのみんなを殺そうと・・・。殺さなきゃ・・・。でも・・・苦しい。


 その時、静かにドアが開いて、エンノ・・・勇者様が入ってきた。

「エンノ様・・・お願いします・・・。」

 エンノ様・・・いつになく、固い表情だ。あの無邪気な笑顔はない。・・・当然か。隊に裏切者がいたんだから。

「パシリくん・・・エンノ様にはさっきから精霊魔術であなたの感情を見ていただいていたの。」

 感情!・・・駄々洩れだ。どの質問でどう苦しんだか?それがわかれば、俺の真偽なんて一発じゃないか・・・。さすが、コルンさん。二段構えと見せかけて、更に隠し玉の三段構え・・・終わった。

でも・・・これで楽になれる。アルデウス様、すみません。リュイ・・・ゴメン。でも、俺は、もう・・・。

「え?エンノ様?あの・・・」

 エンノ様の虹色の髪と瞳が強く輝きだして、その輝きはエンノ様の全身に広がった。虹の・・・七色の光がくるくる入れ替わってそれはとても神秘的な光景だった。

 そのうち光はエンノ様の頭上に集まって、一瞬強くまたたき、消えた。

 そして、目の前には微笑むエンノ様と・・・その周りを飛ぶ小精霊・・・羽が生えた20㎝くらいの少女・・・の姿があった。

「行者の使い魔!初めて見た・・・。」

「拙僧もです・・・迷信ではなかったのですね!」


 唖然としていた俺だが、その小妖精がエンノ様になにかささやき、エンノ様もきれいな・・・俺たちには理解不能な美しい旋律を返していた・・・なんだか俺、処刑されるのに、すごい幸せだ。エンに殺してもらえるなら本望だ。こんな景色まで見られて。もう苦しまなくてもいいんだから。

 俺は膝をついて、無言のまま処分を待った。

 ところが小精霊はエンから離れ、俺の頭に飛びつき、座ったようだ。

 頭の上から妙に甲高い声がする。

「エンノは、パシリと感情を共有した。」

 エン?俺の気持ちがわかるんじゃなくて、一緒に寄り添って感じたってことか。このバカ!あんな苦しい思いを・・・ゴメンな。謝るから、だから、お前の手で殺してほしい。

「真実を告げたい。でも、真実は告げられない。」

 それは、俺の苦しみだ。

「赦されないことをした。でも、赦してほしい。」

 それは俺の我がままだ。

「仲間になりたかった。でも、仲間になれなかった。」

 それは俺の絶望だ。

「一緒に居たかった。でも、一緒に居られない。」

 それは俺の未練だ。

「みんなが好きだ。大好き・・・でも、俺は裏切った。」

 ・・・それが俺の真実か。理屈じゃない。俺自身が俺を裏切者と思っていた。そういうことだ。だから苦しかったんだ。

 もういいだろ。もう、いいよ。

「ありがとう。大切なことを教えてくれて。」

 俺は頭の上にいる小妖精にお礼を言った。俺自身がわからなかった、俺自身の本心を代わりに言ってくれたんだから。

 俺は礼を言うと、なぜか気持ちが明るくなって、少し笑った。

 小妖精は、俺の顔の前まで降りてきて目の前で浮かんでいる。不思議そうに首を傾げて俺を見ていた。そして、一度、俺の周りをまわり、エンのところに戻っていった。

「エンノ・・・勇者様。あなた方を裏切ったこの俺に、死を与えて下さい。」

 俺はいっそすがすがしい思いで、エンにそう言った。何かから解放されてその時を待った。


 ところが、エンは顔をしかめプンプンと怒りだした。さっきまでの神秘的な雰囲気が台無しだ。そして、また小妖精につぶやいた。

 しばらく小妖精はエンの周りを飛び回り、今度はその頭上に立った。

 俺も、コルンさんも、キーシルドさんも黙ってその様子を見ていた。

 そして、小妖精は誰よりもエラソーにふんぞり返って、こう言ったのだ。

「勇者エンノはパシリを信じる。パシリは、勇者エンノの従者。」

 ・・・いま・・・なんて?

「エンノは、パシリの苦しみを信じる、我がままを信じる、絶望を信じる、未練を信じる、そしてパシリの愛情を信じる。だから、パシリはエンノの従者。パシリはエンノの従者。」

 そう告げると、小妖精はエンのもとに行って、微笑むエンの手の平に抱きしめられ・・・光を残して還っていった。

 エン・・・いや、勇者エンノは俺の前に来て俺の手を取った。そして、コルンさんとソーキルドさんを見た。

 コルンさん・・・何だよ、その投げやりなポーズは。顔笑ってるけど。

 キーシルドさん・・・涙まみれのくせにそんな顔で笑うんだ?いつものいかめしい顔よりよっぽどもてるぞ。

 そして、エンノ様・・・すぐ近くで俺に微笑んでくれる勇者。こんな俺を信じてるって・・・。

 くっ・・・く・・・。ついに俺はこらえきれなくなった。

 俺は床に頭をたたきつけ、つっぷして、そして叫んで泣いた。

 俺は、この時ほど大声を出したことはない。

 俺は人前でこんなに泣いたことはない。

 だけど、この時ほど、我慢ができなかったこともない。

 俺の声は離れ中に響いたらしく、いつしかそれを聞きつけたみんなが部屋にやってきて、全員集合してた。コルンさんはかなり困った顔をしていた。キーシルドさんも。今ならポーカーで勝てる・・・わきゃない。俺の感情が駄々洩れだ。みんなが何があったと聞いている。

そんな混乱だらけの部屋の中で、それでもエンノ様は全く動じないで、突っ伏したままの俺を強く抱きしめ続けてくれた・・・『大物』だ。

 そして『本物』の・・・『俺の勇者』だ。


「落とし前をつけに行きます・・・もしも生きて帰って来れたら、その時こそ。」

 午前中の俺の一件を、コルンさんがみんなにどう話そうか悩んでいるうちに、俺は書置きを残して抜けだした。昼飯は食える気分じゃない。抜け出すのはちょろかった。

 生きて帰る自信は、あまりない。俺はアルデウス様を裏切ることになるのだから。結局、どちらかを選ぶしかないなら、殺されてもいいから殺さなくてもいい方を、という気持ちも少しあった。

 リュイ、エン。この二人を除けば、アルデウス様こそが俺を処分するのにふさわしい。

 そして、今、アルデウス様が目の前にいる。相変わらず、顔は覚えていられないが、今はアルデウス様だとわかる。俺は、その足もとに膝まずいて、首を垂れる。

「・・・申し訳ありません。俺に勇者は・・・・あの人たちは殺せません・・・もう誰も暗殺したくありません。密偵もやりたくありません・・・俺は影守失格です。アルデウス様の短剣として、不要になってしまいました。もうやめさせてください。・・・もし許されないのなら、ご面倒でも、アルデウス様自身の手で俺を殺してください。」

 俺は今日何回目かの死を覚悟した。アルデウス様は長く、長く沈黙を続けた。勇者の暗殺を決める時よりも長かったかもしれない。

「リュイシュウスの言った通りになってしまいました・・・パシリにはどんなに才能があったとしても、あいつには人殺しも密偵も向いていない、と。でも、わたしはそう思いませんでしたが・・・。」

 リュイが?親父嫌いのリュイが俺のことで話をしたのか?

「だから、もしもパシリが自分でやめたいって言ってきたら、自由してあげて、そう言っていました。」

 ・・・俺がこうなるのをやはり知っていたのか?「見た」とは思えない。でもわかったんだ。あいつは俺より俺を知っている。

「そして、そのかわりに自分は主都の商業ギルドの後継ぎと結婚する、と提案してきました。娘は、主都とホルゴスに強いパイプをつくり、商業的な利益と政治的な後ろ盾を得ようと考えたのです。そして、それがホルゴスを守る力になる、とも言いました。だから、パシリがいなくても、しばらくは大丈夫になる、と・・・。

 あの子は天才です。わたしには思いつきませんでした。わたしは目の前のことを一つ一つ処理することしかできませんでしたが、あの子は国全体を見て、ホルゴスや族長連合すべてを助ける方法を考えていたのです。」

 すごいや。リュイ。アルデウス様に天才なんて言わせて。さすがだよ。

「パルシウスくん。でも、それは、あの子が族長連合やホルゴス、まして私のためにしたのではありませんよ・・・キミのためです。キミが守ろうとしたこの街を、あの子は守ろうと言うのです。そして、キミをキミ自身の宿業から自由にしたかったのです。」

 ・・・俺のため?守るのも結婚するのも俺のため?そんなの・・・違うぞリュイ!俺はお前と一緒にいたかっただけなのに。お前と一緒なら俺は何だってできたはずなのに。

「パルシウスくん・・・影守としてのキミは、わたしが今ここで処分しました。これからは自分のために生きてください・・・あなたの宿業はリュイシュウスが背負いました。わたしは、リュイシュウスとキミが私の後を継いでくれないかと妄想していましたが・・・見事に振られてしまいました。それでも、あの子とキミは離れていても運命共同体なのかもしれません。私はそんな気がしています・・・パルシウスくん。さようなら。もうキミには会いません。デリウエリには、今後は上役ではなくなりますが、連絡係としてこれまで通り接してください。」

 そう言ってアルデウス様は消えた。俺は、もうアルデウス様がどんな姿をしていたのかは無論、どんなお声だったのかも思い出せなくなっていた。俺はリュイに続いて、アルデウス様を失って途方に暮れた。


「パルシウス・・・パシリさん。事情は知っていますが、何ですか、その顔は!」

 昨日から俺は何回叱られた?そんなに今の俺はダメなのか。甘ったれでしょぼくれた迷い犬。それでも・・・帰る場所がある。約束したんだ。「もし生きて帰ることができたら・・・その時こそ!」って。もう迷わないって。

 だから、俺はいつも通り、デリウエリさんに手を振って、できるだけ軽~く・・・できなかった。しばらく立ち尽くして、ようやく声が出た。泣くのだけはこらえきった。

「デリウエリさん・・・師匠・・・いろいろすみません。」

「何がすみません、ですか!命知らず・・・何かあったら相談に来なさい。全く。」

 デリウエリさんは怒ってたけど、きっと不機嫌じゃなかった。


 俺は階段を一段一段昇る。みんなの所に、約束を果たしに行くんだ。そして今度こそ・・・でも許してくれるだろうか?無理な気もする。エンノ様は赦してくれたけど、戦姫様には「死ねやぁ」って撲殺、護姫様には「弟とは思わぬぅ」とかで斬殺されそう・・・みんな頑固そうだし。ミュシファさんなんか大泣きしてナイフで刺しに来そう・・・大泣き・・・人のことは言えないか。

 階段が長い。もちろんいつもの階段のはずだけど。一段ずつ昇るのがつらくなっていく。

 コルンさん・・・「やっぱし死刑ね。」何て眼鏡を光らせて言いそうだ。キーシルドさん、絶対頑固だ。「天罰降臨!」とか、うわあ、絵的にめっちゃよくはまる。セウルギンさん、前みたいに「その罪バンジーに値します」とかって、ジャンプで許してくんねえかな。


 それでも、俺はエンノ様の、勇者様の部屋にたどり着いた。ノックをする。

「・・・パルシウスです。勝手に抜け出して申し訳ありません。ただいま戻ってまいりました・・・勇者様。」

 少しの間と、そっと開けられた扉。その影には口をとがらせて眉を顰め、子どものように怒っている勇者様がいた・・・やはり死刑?

 勇者様は俺を部屋に引き入れると正座をさせて、同時に何やら血相変えて次から次へとまくしたてた。相当怒ってる。でも、勇者様の罵倒の全ては、精霊たちが美しい音楽的な旋律として俺の耳に届ける。かわいそうにビジュアルの迫力が台無しだ。

 プンプン。まるでそんな擬音が聞こえそうな勇者様だ。くすっ。つい笑ってしまうと、頭突きが来た・・・いてぇ!・・・角だろ!角で頭突きってありか!勇者様!ウシか、闘牛なのか!

 頭を押さえてのたうち回る俺。勝ち誇った勇者様の姿が見える・・・。なんかかわいい。

 はいはい。負けました。俺の負けです。俺は痛みをこらえて土下座に入った。ザ・ジャパニーズ・ドゲザ。すっかり得意技だ。

 しばらくそのポーズ。ず~っと同じポーズ。まだまだ同じポーズ・・・。

 ついに俺の肩に勇者が触れて、俺の体を起こさせ・・・そして、俺の前に右手を差し出した。勇者として初めて会った日のように。その顔は怒っていない。穏やかでとても神秘的だ。

 俺の忠誠は、もうリュイには捧げられない。でも、きっとこれは、あの子が夢見た俺の未来だ。リュイ。俺は、あの空色の髪をした少女を愛していたのだろうか?違う気がするし、そういう気もする。言えるのは、大切な親友だってことだ。でも、俺はあの子に別れを告げて、勇者の従者になることを決めた。今、本当の意味で、あらゆる意味でそう決めた。

 俺は、この無垢で無邪気で無敵な勇者・・・そしてかつての「妹」エンノ・・・の、その右手を取って

「我、パルシウスは、勇者エンノに永遠の忠誠を誓います。」

 そう告げて、その手にキスをした。前回と違い、誓句を唱え『永遠の忠誠』を誓ったのだ。心からの。正直少しハズいけど、誇らしくもあった。

 勇者エンノはしばらくその姿勢のままで・・・そして笑ってくれた。とてもうれしそうに。


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