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プロローグ ~家~
疲れた……。今日も、友だちのフリをした。こんなに疲れることはない。好きなのに。伝えられない。怖くて、いつも友だちのフリをしてしまう。
スキンシップも友だちの域を出ないように、“好き”の言葉も友だちの域を出ないように。
家に帰って、うつ伏せに布団に飛び込む。柔らかく、自分の身体を包み込んでくれる。そのまま、スマホを見る。メールを開いて、しかし閉じる。また、メールを開く。そして、また、閉じる。
「はぁ……。」
溜め息を吐いて、目を閉じる。目の裏に浮かぶあの子の顔。目を開けば、部屋中にあの子の写真。
布団から立ち上がって、鞄をあさる。取り出したのは、あの子の写真。今日もまた、増えてしまった。
好きなのに、伝えられなくて、積もりに積もった気持ちが突き動かした。止めたくても、止められない。募った気持ちを落ち着けるには、これしかないから。
ご飯を食べて、勉強をして、お風呂に入って、寝る支度をして、布団に入れば、またあの子の事を考える。
意味もなく、私はあの子の名前を呟いた。
「叶楽……」
あの子が、好きだ。