日常と変化 6
ゆっくり、ゆっくりと進み、風呂場とトイレを覗き込む。
そこには特に何もなく、ただ玄関の明かりが入り込み、薄暗くはあるが、いつもの風呂とトイレがあった。
次は本命のメインルームだ。
もし、誰かが侵入していたとしても、先程、大声を出してしまったので気づいているはず。
すでに逃げてくれているかもしれない。
ただ、未だに気配がする。
「おい!そこにいるのはわかってんだよ!」
軽く威嚇をしてみるが、返事はない。
恐る恐るメインルームの扉を開け、扉を開けたすぐ右手にある電気のスイッチに勢いよく手を伸ばす。
まるで壁を叩く様にスイッチを押そうとするが、何度か狙いを外し、本当に“バン!バン!”と壁を叩いてしまった。
4度目程だろうか。
何度か壁を叩いているうちにスイッチが入り、メインルームに明かりが灯る。
メインルームとはいえ、6帖程しかないこの部屋は、すぐに昼間の様に明るくなった。
明るくなったからだろうか。
不安な気持ちは少し薄れ、俺は、すんなりとメインルームは入った。
辺りを見渡しても誰もいない。
クローゼットを開けて見ても、ベッドの下を覗き込んでも誰もいない。
ただ、カーテンが微かに揺れていた。
10cm程開いた窓から風が微量に吹き込み、揺れていたのだ。
どうやら、外出する際に窓を開けっ放しにしていた様だ。
この部屋は3F。
流石にここから飛び降りて誰かが逃げるという事は考えにくい。
気配を感じた正体が、このカーテンだったんだと思い、俺は窓を閉めた。
公園で知らない老婆に絡まれたからか、疑心暗鬼になっていた様だ。
その後、自身の不安を拭い去る様に、部屋にある全ての鍵を確認し、閉めて回った。
あとはシャワーを浴びて寝るだけだが、やっぱり誰かがいて、シャンプーで頭を洗っている間に背後にでも立たれたらたまったもんじゃない。
ただでさえ、洗髪中は背後に誰かがいる気がするのに、今の気持ちでは怖くて目なんて瞑れない。
「明日にしよう」
そう自分に言い聞かせる様に独り言を言うと、俺は、部屋にある全ての電気を点けたまま眠りに就く。
なかなか寝付けなかったが、いつのまにか眠っており、朝を迎えた。
昼過ぎだろうか。
目覚めると……体調が悪い。
体が熱い。
咳が出る。
変なもの食べたからか、単純に風邪をひいたのか。
しかし、簡単にバイトは休めないので、シャワーを浴びて、家を出る事にした。