謁見と美女 7
本日の2大イベントのうちの1つ、パーティ結成を済ませた俺たちは、もう一つのイベント、ジョーカーとしての力の覚醒のために、神々の部屋へと移動した。
自分が才能を持つ職業を象徴する神の御神体の前で覚醒を行うそうだが……
俺は今、ハデスの前にいる。
「ねぇ、エリス様、まさかとは思いますけど、ジョーカーの神って……」
「はい! 冥界の神、ハデス様です!」
ハデスの前で覚醒の儀式をやる事なんて滅多にないらしく、エリス様は、司祭様という立場を忘れているかの如く目を輝かせている。
それはまるでおもちゃを与えられた子供のように、純粋に輝く瞳で俺とハデスを見てくる。
やめてほしい。
俺は正直言ってハデスに力を借りるような真似はしたくない。
しかし、この儀式を行わないと、ジョーカーとしての力は発揮できないそうだ。
各職業、神々の力を借りて、その力を使うとか……。
俺にはその神の奴隷になるようにしか感じない。
しかも、俺の場合は相手がハデス。
無理矢理この世界に引きずり込んだ張本人に力を借りるなんて嫌だ。
散々ハデスの前に立つのを嫌がって駄々をこねてみたが、ノアとエリス様に言いくるめられ、俺はハデスの前に立っている。
これで俺も正式にハデスの犬だ。
あ〜やだやだ。
やる気の無い俺を尻目に、すぐ横でエリス様が片膝を着き、御祈りを始めた。
すると、俺とハデスがスポットライトを浴びるかのように、光が降り注ぐ。
いや、ちょっと待ってくれ。
これが出来るなら、なんでパーティの儀式の時にやらないんだ。
俺はチラチラとエリス様を見るが、エリス様は集中しきっていてその目線には気付かない。
まぁ、いっか。
全てを諦め、されるがままにしていると、不思議な事に、俺の身体の中心が熱くなってきた。
俺はこの感覚を知っている。
これは、魔法珠を身体に入れた時の感覚。
身体を焼かれる様なあの感覚が、再び俺を襲った。
その業火の中に身を置く程の感覚に、叫ばずにはいられなくなり、一頻り叫ぶと、徐々にその感覚はおさまっていった。
2度目ではあるが、どうしてもこの感覚には慣れない。
むしろ、熱さが来る事が分かっているから、恐怖感は倍増だ。
俺は息荒く、儀式が終わったのかエリス様に確認をした。
が、エリス様からの返事はない。
不思議に思い、俺のすぐ横で跪坐くエリス様に目を向けるが、エリス様は動かない。
まただ。
またハデスの前で時間が止まった。
「ハデス。 こっちの世界に来たんだろ」
「どうやら学習能力はあるようじゃな」
「うるせぇよ。 今度はなんだ」
「そうツンケンするな。 お前にジョーカーの力をやったんじゃ。 まずは感謝の言葉からじゃろ」
「はいはい。 あんがとよ。 お前が言ってた50年に1度の逸材って言うのはジョーカーの事だったんだな」
「そうじゃ。 全てわしが与えた力ではあるがな」
「だろうな。 でも、魔王はもうこの世界にはいないんだろ? こんな力があっても意味ないだろ」
「それはどうかな? 万能な力が必要な時は必ずやって来る」
「あっそ。 で? 俺は何をしたらいいわけ?」
「それは自分で見つけ出せ」
「なんだよ」
「それよりも、力が湧いて来ている感覚はあるか?」
「わかんないけど、みぞおちらへんがあったかい」
「それじゃ。 それが全ての源。 上手く力を使いこなすんじゃぞ」
そう言うと、ハデスは石像に戻り、俺の周りの時間が動き出す。
俺にはハデスが何を言いたかったのかよくわからなかった。
「コウタさん。 儀式は終わりました。 あなたは何にでも成れる、ジョーカーとしての力を手に入れたんです」
正直言って実感はない。
やる気もいまいちない。
だけど、何かを成し遂げないと元の世界には戻れない事だけは分かっている。
俺は、エリス様にお礼を言って、ノアと共に神殿を後にした。
「コウタさん、おめでとうございます」
「え? あ、ありがとう。 それでさ、俺はこれからどうしたらいいの?」
「まずは、ジョーカーとしての力を磨きましょう。 コウタさんは、未だ魔法を使った事もありませんよね?」
「え?! 俺、魔法使えるの?」
「もちろんですわ! コウタさんはジョーカー様。 なんでもできます」
「ど、どうやったら使えるようになる?!」
「ん〜そうですねぇ……では、ギルドに行って、クエストを受けてみましょう。 冒険者は、クエストを受けて、達成した報酬で生計を立てる職業なんです」
ノアの言う通り、俺たちは、外で待っていた兵士を引き連れてギルドへ向かう事にした。
魔法が存在する世界に来たからには魔法は使いたい。
俺にそんな事が出来るなんて今は信じられないけど、ワクワクして来た。
なんだか楽しくなって来たぞ!
すぐ後ろでガチャガチャと音を立ててついて来る兵士達が気になって仕方ないけど。
と言うか、正直うるさい。
なんとかならないものか。




