謁見と美女 6
兵士に神々の神殿に連れてきてもらった俺は、1人で神殿の中に入った。
そこには、以前会った案内の人と、ノアの姿が。
「遅かったですわね」
「ノアが俺を無視して先に行っちゃうからだろ!」
「とにかく、まずはパーティ申請の紙にコウタさんが記入してください」
飄々と言ってのけるノアにこれ以上ツッコむ事も出来ずに、俺は申請書を受け取った。
そこには、パーティメンバーそれぞれが直筆で名前を書く欄があり、上から2番目には既にノアの名前が書いてあった。
「パーティ申請書……なになに……パーティメンバーは、病める時も、健やかなる時も、メンバーを想い、メンバーに尽くし……って結婚と変わんないじゃないか」
「そうですわよ? 今後の人生をかけてメンバーと過ごすのですから。 冒険をする以上、命のかかった生活が始まる時点で、結婚よりも神聖な誓いかもしれませんわ」
「そ、そんな誓いを軽々しく俺なんかと立てていいのかよ」
「軽々しくなんて思っていませんわ。 コウタさんは伝説のジョーカー様ですから。 重く受け止め、私は光栄とも思っています」
おいおい……ジョーカー効果すげぇじゃないか。
ジョーカーってだけで、王女であり、ダイナマイトセクシー美女を従えるとか……。
ありがとう神様!!
俺はノアの気が変わらないうちに、そそくさと申請書を書き上げ、1番右下にある『代表者サイン』に自分の名前と、拇印を押した。
「それでは、山本コウタさん、ノア・ホーランドさん、こちらへお越しください」
俺から申請書を取り上げた案内の女性が、神々の間とは違う扉に案内してくれる。
その扉を開けると、その内装は完全な教会。
本当に結婚式を挙げるようでドキドキする。
ノアは堂々としているが、ドギマギしながらキョロキョロしている俺を尻目に、案内の女性が祭壇へと歩いて行く。
「儀式を行います! お2人は祭壇の前へ!」
案内の女性に呼ばれ、2人でバージンロードを歩く気分で祭壇へ向かう途中、ノアが俺の手をソッと握った。
俺はその行動に心臓が張り裂けそうな気分だ。
俺が絶対幸せにしてやるからな! ノア!
「儀式に必要なので、コウタさんも私の手を握ってください」
そういう事なのね。
必要な事だからやったんだ。
1人で舞い上がってしまった。
「それでは、儀式を執り行います! 私、司祭のエリスが今回の証人となります」
案内の女性がフードを取ると、自分を司祭だと名乗った。
緑色に近い色のショートカットで、品のある顔立ちからは、神聖な雰囲気を醸し出している。
とても先日のイタズラをした人には見えない。
多分、バチェロに頼み込まれたんだろう。
そして、ただの案内の人だと思っていてすみません。
「お2人は手を繋ぎ、目を閉じて少し上を向いてください。儀式を行う際、お2人に神聖なる光が降り注ぎます。 目は閉じたままで、パーティを想いながら気持ちを清らかに保ってください」
なんだか凄いぞ。
儀式だ。
ちゃんとした儀式だ。
俺たちはソッと目を瞑った。
「今日、パーティを組むお2人に神々の祝福を!!」
エリス様がそう言うと、祭壇がガタガタと音を立てた。
神々の祝福の効果だろうか。
祭壇が揺れるほど俺たちの周りでは何かが起きているみたいだ。
しばらくすると、温かい光を感じた。
目を瞑っていても、強い光を浴びれば瞼の内側からでもわかる。
神々しいとはこの事か。
俺は、心まで温かくなった気がする。
ーーが、なにが起きているのかも知りたい。
エリス様には目を開けるなって言われたけど、知りたい。
俺はすごく薄目ではあるが、ゆっくり、少しだけ目を開けた。
すると、俺たちの目の前には、祭壇に登って魔晶石で俺たちを照らすエリス様の姿が。
一生懸命バランスを取り、俺たちを照らすエリス様。
この人、なにやってるんだ。
儀式って……なんなんだ。
いつのまにか普通に目を開けてしまっていた俺と、エリス様の目がバッチリ合った。
すると、エリス様はバツが悪そうに汗を流しながら目を逸らした。
その後、ゆっくりと祭壇から降り、何事もなかったようにーー
「終わりました。 これでお2人は本日をもってパーティメンバーとなりました」
俺、見ましたよ。
エリス様、俺、見ましたからね。
そんな視線を送ると、エリス様はアタフタとしながらも。
「パ、パーティの名前に記入がありませんでしたので、後日にでもパーティ名を決めて、再度お越しくださいね!」
誤魔化してきた。
「よろしくお願いしますわ。 このノア・ホーランド。 コウタさんの為に全力を尽くします」
「あ、ありがとう。 こちらこそよろしく」
安い演出をしてきたエリス様はさておき、俺は晴れてノアとパーティを組んだ。




