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異世界に行っても存在する、成りたい自分と成れる自分の壁。  作者: 棚橋 将紀
第2章 目覚めと困惑
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目覚めと困惑 9

バチェロの家に着くと、2人は準備のために中に入って行った。

俺はというと、とくに準備もないので、家の前で待っている。

リャムに貰ったダガーを腰に挿すだけだ。

ジャージ姿に装備出来るようにと、ベルトも一緒にくれたが、ジャージの上からベルトを巻くのも違和感がある。


待っている間、とくにやる事が無いので、俺はキョロキョロと村を見渡していた。

つい先程まで案内をしてもらっていたが、目の前はバチェロに塞がれ、ディオネが(じゃ)れついてきていたため、いまいち村の事がわからなかった。

しかし、小さい村なので、キョロキョロ見渡すだけでも多少は村を見れる。


どうやら、店が多い。

しかし、村の人同士が購入し合っているのがほとんどで、外部から買い物に来る人は少ないようだ。

この村が貧しい理由の1つだろう。


そして、話に聞いていた通り、男の人は見かけなかった。

人間、獣人、亜人の違いはあれど、今日出会った人はみんな女性だ。

貧しい村だからだろうか……皆がほとんど同じような服装をしている。

布きれで出来た服を着ているだけで、装飾はとくにしていない。

なにか恩返しをしたいものだ。


……しかし2人が遅い。

村を見ながら考え事をしているが、かれこれ30分くらい経つだろうか。

バチェロの家に着いてから、俺は家のそばからほとんど離れていない。

どこかに行ってしまったとは思えない。


着替えの途中だったらまずいので、俺はそっと家の扉の前で耳を澄ましてみた。

何かの話し声はするが、よくはわからない。

『ぞい』と言う語尾と『にゃ』と言う所だけは聞き取れる。


そういえば、ディオネは外では『にゃ』って言葉を使っていなかったなぁ。

5歳児くらいの話し方ではあるが、普通にしゃべっていた。

なにか理由があるのかな?


まず何歳なんだろう?

見た目は小さい。

身長は俺の腹くらいまでしかない。

リャムの話では、10歳で職業を調べるとか。

って事は10歳は超えている。

まずこの世界では10歳から働くのか。

大変だなぁ。

俺なんて、高校卒業するまでバイトもした事なかったのに。

小さいのに偉いなぁ…………にしても遅い。


話し声はしている。

なんだかリラックスしたような声がさっきからずっと聞こえている。

なぜ出て来ない。


俺はノックをし、そっと扉を開けてみた。

すると2人は、帰宅した時と同じ格好でローテーブルを囲んで、お茶を啜っていた。

……なんでだ。

もう聞いてみよう。


「あの、準備出来ましたか?」

「準備?何の準備じゃ?」

「いやいや、王都に行くために準備するって……」

「おぉ!忘れとったぞい!」



こいつら忘れてやがった。


リャムの店を出て、ここに着くまでなんて、ものの数分だ。

帰宅した瞬間に忘れたのか?

ニワトリかこいつら。

まず、俺が中にいない事は気にならなかったのか?

普通に団欒中じゃねーか。


「お、王都……行きましょ?」

「そうじゃな!では準備するぞい!」


何もなかったかのように準備を始める2人。

謝ってはくれないんだ……。


今度は入口に立ったまま監視するかの様に待っていた。


2〜3分で準備が出来た2人。

バチェロは、相変わらず上半身裸のまま、体にベルトの様な物をたすき掛けで締めている。

背中には長い棒が。

どうやら、その棒を装備するためのベルトの様だ。

ディオネは、先程と同じく、布の服に、小枝の様な物を持っているだけ。


武器取りに来ただけじゃねぇか。

たったそれだけのために帰宅して、どうやって忘れられるんだ。

それよりも、バチェロは服を着てほしい。

ディオネは……ヒーラーって言ってたから、多分魔法用の小さい杖だけでいいのだろう。


「それじゃあ行くぞい!」

「おーー!」


忘れてたくせに、2人は勢いよく村の入口に走って行った。


俺を置き去りにして。


いずれにしても、この世界での初めての冒険が始まった!!


次回からは第3章になります。

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