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異世界に行っても存在する、成りたい自分と成れる自分の壁。  作者: 棚橋 将紀
第2章 目覚めと困惑
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目覚めと困惑 7

それからバチェロさんに色々教えてもらった。

人がベースで獣が混ざっているのが、獣人。

獣などがベースで、人の様に2足歩行で言葉を話すのが、亜人。

この世界は大きく分けて4つの国がそれぞれ支配している事。

それぞれの人が、なんらかの職業に就いているという事。

生まれてくる子のほとんどが女の子であるため、男が珍しいという事。


たくさんの事を一気に教えてもらったため、正直全部は覚えられなかった。


「もう質問の時間は終わりじゃぞい」

「じいちゃん、眠い……」

「おお。そうじゃな。今日はもうみんなで寝るぞい」


俺がしつこく質問している間に、夜も深い時間になっていた。


ローテーブルを家の端に動かし、ペラペラの布団を2枚敷く。

この家ではバチェロさんとディオネちゃんの2人暮らしのため、布団は2枚しかない。

俺は遠慮こそしたが、2枚の布団で3人で眠る事になった。


魔晶石の入った入れ物を ”コツン“ と叩くと、明かりは消え、ほんのりと月明りが所々にある家の隙間から入ってくる。

なんだか野外実習にでも来た気分だ。


しばらくすると、2人は眠りにつき、すやすやと寝息を立て始めた。

いや、バチェロさんに関しては、少しずつ音量を上げ、いびきをかいている。


俺がなかなか眠れずにいると、俺とバチェロさんに挟まれて寝ていたディオネちゃんが、ゴソゴソと動き始めた。

俺の方へ寝返りをうったが、その顔の距離がとても近い。

獣人とはいえ、とても可愛い少女の顔が目の前にあると、なんだかドキドキする。


すると、ディオネちゃんが薄っすらと目を開けた。

俺は、何もしていないぞ! っと言わんばかりに、そっと両掌を上げ、降参のポーズを取った。

それを見たディオネちゃんは、その手をボーっと眺め、ニコっと笑った。


0距離に近いその距離で、可愛く微笑まれると、男心くすぐる何かがあるが、俺はロリコンじゃない。

そう、ロリコンじゃないんだ。

そう自分に言い聞かせ、息がかからないように、口を反対側に歪ませて呼吸をした。


そんな俺をからかうかの様に、ディオネちゃんは布団に潜り、何やらゴソゴソとし始めた。

まるで俺に身体を擦り付けるかの様に……。


あぁ……やばい。

なにしてるんだこの子。

俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない……。


バチェロさんは尚もいびきをかき、完全に眠っている。


俺の横腹辺りに頬ずりをしているディオネちゃんの顔の位置が、徐々に上に上がってくる。

心臓が飛び出そうだ。

どうしよう……どうしよう。

ディオネちゃんは既に俺の身体に乗っかっている。

布団からヒョコっと顔を出すと、また俺に微笑んだ。


やばい。

夜這いだ。

これが噂に聞く夜這いだ。


再び布団にディオネちゃんが潜ると、俺は覚悟を決めて、ギュッと目を瞑り、拳を力強く握った。

俺から何かしらしたら怒られるかもしれない。

この世界では、助けられたら体で払うのかもしれない。

たくさんの事が頭の中でグルグルする。

もう身を委ねるしかない!!

俺は悪くない!!

被害者なんだ!!

もう好きにしてくれ!

むしろやってくれっ!!


そんな事を考えていたが、ディオネちゃんの動きが止まっている事に気付いた。

俺の腹の上辺り。

完全に止まっている。


恐る恐る掛け布団をめくってみると……。


ディオネちゃんは俺の腹の上で丸まって眠っていた。

なんだか、ホッとしたような、ガッカリしたような……いや、ホッとした。


そういえば、この子は猫の獣人。

今の位置が暖かくて心地よかったのかな。


ほとんど猫なんだな。

……残念。

ちがう。

安心した。


もう寝よう。


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