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エピローグ

 それから俺は必死で勉強して、成績を上げた。

 親はそんな俺を見て「やっとわかってくれた」などとふざけたことをほざいていたが、別にお前らのためじゃない。

 学校の教師からは旧帝大の内どこかの医学部を受けるよう言われたが、俺はそれを無視してあの病院がある県の県庁所在地にある、県立医大に進学した。

 別にレベルを下げたかったわけじゃない。あの病院に、研修医時代から行けると聞いたからだ。そもそもあの病院はこの大学の出身者が多いし。

 そして俺は、この土地に帰ってきた。退院の時から、一度もここには来ていない。

 だからみんなと会うのは、数年ぶりだ。

 俺は懐かしい道を歩いて、第一棟のエントランスに入る。

「はるか! ひさしぶり!」

「春風さん。また会えましたね」

 そこには、あの日々と同じように、秋空と冬音がいた。

 冬音は、少し大人びた見た目になっていた。

 秋空は……。驚くほど変わってない。なんだこいつ。

「ふふふ。男の娘は世界の理から外れたところにいるんだよ。というわけで、はるかとの熱い一夜はいつ訪れるのかな」

 ほんとに何も変わってないな!

 これまた記憶にあるのよりはやや老けた高橋と再会する。

「まさか本当に戻って来るとは。これからもよろしくな」

「ひさしぶり、新鳥くん」

 西川さんも、まだここで看護師をやっているようだ。

 そして高橋は俺を夏海のいる病室に連れて行く。

 やっと、会えるんだ。

 高鳴る鼓動。緊張で強張る足取り。

「ここだ」

 高橋は、プレートに『蒼葉』と書かれた部屋の扉を開ける。

 そこのベットに座っていたのは、確かに俺のずっと会いたかった人。

 冬音同様、少し成長した顔。それでも強くあの時の面影を残していた。

 こうしてまた会えた時、俺はなんと言うべきか気の効いた言葉をずっと何年も考えてきた。

 でも、俺が選んだのはシンプルな一言。

「ただいま」

 夏海はにっこり微笑んで。

「おかえり」



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