巡る季節
高校時代に書いた話だから、もう7年前ですね
時代設定も2011年。懐かしい
桜が咲く日が間近に迫るものの、まだまだ寒いその日。
母親は娘に問う。
「――というわけ。だから冬だって必要なんだよ? 柊、分かった?」
「わかんない」
母親は、娘の言葉に肩を落とす。
「ママ。もうひとつ、いいかな」
「何?」
「どうして柊のパパは、女の子なの?」
母親は答えに窮する。
この子の父親ことは、どう説明すればいいのやら。いつも母親は答に困っていた。
そして親子の向こうから歩いてくる白衣の細身な男。
「春風さん。こんにちは」
母親は男に呼びかける。
「よう、冬音」
「その様子だと、上手くいったみたいですね。夏海さんの手術」
「まあな。もう大丈夫だ。これでやっと、長い長い『冬』は終わったんだ。『冬』を、越えたんだよ」
男は空を眺めながら、言う。
「もうすぐ、本当の季節も春になる。いい一年が訪れるといいな」
「でも季節である以上、また『冬』は訪れるのではないですか?」
「ああ、だがこれまでの『冬』はとんでもない極寒だった。もうここまでのものは来ないだろう。これまでの『冬』を乗り越えてきた俺達なら、きっと余裕で乗り越えられる」
男がそう言ったその時、南の海から強い風が吹いてきた。
次の季節は、必ず訪れる。
何度も何度も繰り返す。
そこで見える光景は、ひとつひとつがとっても綺麗で。
巡り巡ってその次は。
どんな景色を、見せてくれるの?




