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世界はこの一冊の本によって変えられた  作者: 未知風
3章 本との遭遇
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3節 報道

家の中は相変わらず誰もいない。

刃物に刺されていた両親さえもいない。ついでに偽物も。

静かに私だけの物音がする。

私はリビングに行き、クーラーを付けて本を開く。


『いやー、炭酸はうまいよなぁ。特にコーラは』


私がこんな大変な思いをしてるのに、なんでこいつはそんなに呑気なんだよ。


『おい』

『今度は落とさないぞ』


枕の下にこの本を置いた時に行った世界で缶が落ちてきたのはこいつの仕業か。


『お前、呑気だな』

『あー、お前さっきはよく頑張ったな。奴の技はこれらか。


止利華(鳥花 読み→とりばな)……鳥が巣を作るかのように見えることからその技名が付いた。相手に向けて花がくっつくため動きを鈍くさせる。


止雨(時雨 読み→しぐれ)……雨状に触れたものは止まってしまう厄介すぎる技。


止血(吐血 読み→とけつ)……血を止めることで相手を弱らせるが、術者にもそれなりの疲労がかかる。


止煮神(死神 読み→しにがみ)……掴まったら片手鍋とおたまで煮込まれるらしい。人のような形の神のため、ストーカーとして間違えられることもあるので術者は気を付けよう』


じゃねーよ。俺は眼鏡の野郎じゃねえから、それ言っても無駄だ。


『止鼓露(兎心 読み→ところ)……心臓を止めること。術者もそれに近い段階になる。下手をすれば死に至る。


それでお前の新たな技はこれと。


無羽(夢羽 読み→むう)……無いところから羽を生み出す技。


まさか相手の技とくっつけて使うとは。下の技は面白い発想だったぜ。


無止(無視 読み→むし)……近くにある効果が全て消えるだけの技。


ん?メアちゃんって子が気になるか?お前、ニュース報道見ろよ』


私はテレビを付ける。


「先ほどこちらの近くで何やら触発があった模様です。小さな女の子と眼鏡をかけていた男の子の二名は大きな病院に運ばれた模様です。あっ、今情報が入ってきました。二人とも病院から脱走した模様です。これは例の本が絡んでいるのでしょうか?」


アナウンサーがこちらを見ながらそう言ってくる。例の本とはこの本のことか。それにしても二人とも脱走したとはどういうことだろうか。

テレビ画面になぜか内閣が出て話し始めるところだった。ニュースの画面の文字を見る。


【憲法九条に書かれている戦争破棄を破棄し平和概念を消す】


「おいおい、戦争はしないって敗北以降から言いつけられてるだろう」


突っ込みを入れた後、内閣の話を真面目に聞く。


「天皇と同意の元で日本国憲法の九条を本日にて破棄する。ただし「陸海空軍」などの組織はなしに身を守るといった意味で戦争を許可する。これからは「国の交戦権」を認めるとする。なぜなら例の本を持っているのは日本人じゃないかもしれないからである。外国人に狙われて権利に縛られて死ぬというとは私としては悲惨を生むことになる。ならば防ぐ意味でその権利を省いたと考えて欲しい。これだけは言う。戦争を好きでするな。国民の皆さんはくれぐれも気をつけて頂けますよう願いたいです」


身を守るためか。

人を殺していく戦争は止めたんじゃないのか、内閣。まさか内閣も偽物か。

それに残念だが持っているのは日本人の自分だ。待てよ、自分の相手は日本だけじゃない。

世界全体か。

たとえ魔法を使用しても世界には核兵器を持っている地域もある。

自分がこの本を持っているはずなのに関係のない人たちが死んでいくのか。

テレビを見ながらいろいろ困惑する考えが頭の中を掻き乱す。

私はこの時、まだ知らない。本当の敵はもうすでに近くにいることを。

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