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世界はこの一冊の本によって変えられた  作者: 未知風
3章 本との遭遇
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1節 店と妖術

私は親に頼まれるといつも寄るスーパーに来た。


「何とか無事に着いたか」


そう呟いて中に入る。するとそこには人形が無数に転がっていた。私はどうしようもなくそれらを踏んで歩いて行く。

店の中を入っていくと、商品の棚にも人形があった。それにしても私以外人はいない。

その時だった。


『メルヘン♪メルヘン♪なにか楽しいことは起きないかな♪例えば店の中に入った一人の男が♪人形を踏んで♪その子達が泣いちゃったりして♪』


店のアナウンスから少女らしき陽気の歌が聴こえてくる。そしてその歌に答えるかのように人形たちが「痛いよ……どうして踏むの……」という泣き声で私に訴えかけてくる。


『あらあら♪かわいそうに♪そうだ♪その痛みを闇に包んであげましょう♪さぁ、お椅子さん♪出番よ♪デビルチェア♪』


何かが隣の棚から聞こえて来る。


(悪魔の椅子……まさかこれって?)


私は持っている本を開いてみた。


『これは妖術だな。日本にもこの魔法が伝統しているとは……』


私は呑気なこの本に対して素早くペンを走らせる。


『感心してる場合じゃない』

『そうだな。だが、私は筆術以外専門外だ』

『この役立たずが!!』

『分かった。お前に技の使い方を教える』


私はこの本に技の使い方を教えてもらった。向こうから禍々しい羽の付いた椅子が私に向かって走って来る。


「そこはせめて飛べよ。無樹緑むきりょく……」


相変わらず走ってくる。


(漢字間違えたか……)


本によると技名によっては漢字を間違えると発動しないのもある。 それに漢字が多いければ多いほど効果はあるそうだ。


(ならばこれでどうだ?)


無木良駆むきりょく


椅子は私との棚一つ分の間で止まっていた。そして禍々しいオーラや羽は取れてこの店内で見かける木で出来た椅子になっていた。


『お見事♪お見事♪でも人形さんたちはお怒りが爆発しそう♪だって元はそこにいた人間たちなんだから♪その怒りを元に人形たちは動き出す♪あなたを殺すためにね♪ヒューマンアウト♪』


全ての人形がゆっくり起き上がっていく。


(こんなの相手にしてたらキリないんじゃないか?)


私は本に書く。


『どうすればいい?』

『選択肢は二つだ。逃げるか、戦うか』

『勝てる確率はあるか?』

『面白いことを聞くね。だが無いよ、1%しか』

『1%もあるのか……なら、戦うよ』

『お前はバカか?』

『あんた、忘れてないだろうな……タイトルを』

『なるほど、そういうことか……あぁ、もう一度書いてやるよ。この本を持った者は全て変えれる』

『じゃあ、人形たちも解放しなくちゃな』


私は飛び交って来る人形たちに言う。


「全力で行くぞ?人形たち」


私は指で文字を書く。


無自亞名むじあな無争むそう


人形たちは私にぶつかることなく、いきなり出来た穴に落ちていった。


「どうだ、お嬢ちゃん?」

「あらあら♪役立たずのクズ共♪」

「来たか……って外人かーい」


金髪のロングヘアに黒いドレスを来た背の低い女の子は言う。


「ハーフよ♪ハーフ♪これからあなたの体もハーフにしましょ♪」


私は背後から殺気を感じたので素早く交わす。


「何だ、これ?」

「ゴミ箱♪それはあなたも刻めば餌も同然♪その名もトラッシュマン♪」

「いや、そこはどうでもいいから。何で刃物持ってんだよ!!」

「人は刃物って言うけどね♪それはほうき何だよ♪凄いでしょ♪」

「殺す気なのは変わんねーだろうが!!」

「だってあなたはゴミだもん♪さぁ、あなたも中へ♪お入りなさい♪」


(待てよ、この子。さっき、人形たちをゴミのように扱っていたような……奴らは人間なはず……)


私は本に書く。


『人形を守りながら戦うにはどうすればよい?』

『向こうの様子を見れば何とかなるだろ?』

『そうか……向こうか。ありがとう』


私は本をしまった。そして話ながら指で綴る。


「お嬢ちゃん、無攻ムコウに面白いおもちゃがあったよ」

「お兄さん♪騙されないよ♪さぁ、やってしまいなさい♪……どうしたの?」

「そいつはもう動かないよ」

「まさかあんたが……なるほど、その本を手にしてるということは。あの筆術師なのね?」

「何かダサいネーミング……」

「やっと会えた。私はメアよ、以後お見知りおきを。でも、こうしては居られないわ。逃げて……早く……」

「えっ?」

「いいから!!」


私は言われるがままに店を出た。一応、この勝負は私の勝ちのようだ。

結局、何も買えなかった。


店の外で本を開く。


『先ほどは凄いことをしたな』

『なにが?』

『会話の中にまさか技を組み込んでくるとは……』

『あぁ……』

『彼女の妖術は見た目の判断で説明なしにさせてもらいたい。君が使った技は次のだな。


無樹良駆(無気力 ムキリョク)……木で出来てるなら気力を全て無くす

無自亞名(無地穴 ムジアナ)……その場にいた自分以外の者を穴に入れる。しかし名前が認識できるものに限る。本当はムジナでもある。

無争(無双 ムソウ)……争いを止めるためのポーズとして床に倒れ込む。


そして会話の中に入れてた技がこれだな。


無攻(無効 ムコウ)……攻撃による効果を消滅させる。


この四つだな。早く家に戻った方が良さそうだな』

『なぜ?』

『今日会った眼鏡の野郎が来るぜ』

『マジか?』

『ここで嘘ついて俺が得するか?』

『はいはい、言う通りにします』


そして言われた通りに私は家に向かうのだった。

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