3節 無理槍
その後、しばらく私がリビングで椅子に腰をかけていた頃だった。
「おじゃましまーす……というかしてるか?」
その大きな声よりも大きな衝撃音が鳴り響いた。私は急いで走り寄る。
「ここに女は来なかったか?」
「無理矢理押しかけてきて何だ、あんたは?」
「無理槍……ねぇ?」
指を動かしながらその言葉が出る。気付くのが遅かった。私の腹あたりに槍が入る。私の腹から床にめがけて血が出てくる。
「兄さん?兄さん!!」
「メア……来るな……」
精一杯の声でそう言う。メアの後ろには二つの剣を持つ彼女が下着姿でいた。
「おやおや、探し物が自らて招くとはねぇ?」
「無我」
私の手が無意識にその文字を示す。
「お前、何か言ったか?」
無言のまま私は文字を示す。そして気が付いたそこにあったのは手足や頭がバラバラになった槍の男と怯えた表情をした女が二人だった。周りには赤い血が飛び付いているようだ。
「これは一体?」
私がそう言うとメアちゃんの手を引いて二つの剣を持つ彼女は部屋に戻ってしまった。
部屋を見渡す。
その死体は光の粉のように血と共に何も無かったかのように消えた。だが、私の心と彼女たちとの心の間には見えない傷が付いてしまった。




