1節 選択
私は眠っていた体をゆっくり起こす。
昨日、風呂洗った際に体の隅々(私の目だけでは見ることの出来ない一部分だけ除いて)まで見たが、特に何もなっていない。文字とかこういう場合書かれると思ったが、それもない。
ベッドから離れてリビングに向かう。そこで朝食を済ませる。
両親のいないリビングでテレビから流れるニュースの報道が忙しく鳴り響く。
私は身支度を済ませてリュックを背負い、外に出るためにドアを片手でドアノブを通して押した。
あれ、なんか開かない。
なんでだろう。もう一回試してみる。
やっと外が見れるぐらいの隙間が開いた。
ドアの前にメアちゃんが横たわっていた。
病院から脱走して私のところにわざわざ来たのだろう。そして私のドアの開く攻撃でさらに追加攻撃を食らったのだろう。ゲームで言うならば通常攻撃を食らった後に毒効果を食らってしまうあの焦らし攻撃だろうか。
とにかく瀕死状態だろう。
「痛いです……」
よかった。一応は生きているようだ。
「お腹がすいて痛いです」
ご飯を食いに来たのかよ。毒効果じゃなくて動けなくなるあの麻痺効果状態だったよ。
「なにか食う?ひとまず家に上がってというか立てる?」
メアちゃんはごろりと私が扉を開けれるように横に動いた。
「連れてけよ、泥棒」
何なの、このハーフ。人が親切にしてやったのに。なら、こっちだって考えがあるぞ。
「なんだ、ただの人形か。学校に行かなくては……」
私は扉の向こう側に行き、戻ってきた扉に鍵を閉めて歩こうとした。
しかし私の左足を何かが掴む。
後ろを振り向くと、メアちゃんが不機嫌そうな顔というか今にも死にそうな顔で私の足を握る。
「お兄さん、アイムハングリー……」
はいはい、分かりましたよ。私はメアちゃんを腰あたりを片手で抱いて鍵を開けて中に入る。女の子ってこんなに軽いんだなぁ、それなのに無茶して。
私はパンにチーズを乗せてオーブントースターでそれとウインナーを焼く。出来上がったそれを皿に乗せてその上にウインナーを乗せてケチャップで笑顔の顔を書いてメアちゃんに持っていく。
「ちっ……B級料理じゃないのか……」
いや、何この子。何を期待しているの?こんな普通の家にそんな高級料理あるわけないじゃん。というか朝そんなに食べれないし。
「ごめんね、そんなものじゃなくて……」
「いえいえ、まずいから大丈夫ですよ」
何この子。腹立つ。この子に助けられたと思うとなおさら腹立つ。
そんな思いをしている私に対してメアちゃんは真顔で聞く。
「これからどうするの?べっ……別にあんたがパスタに絡まれて死のうが何しようがどうでもいいけど。あっ、そうそう知ってる?あなたの本を求めて今、二つの派閥が起きてるの。一つは……喉乾いたからミルクよこせ」
何だよ。いいところで命令かよ。
そう思いながらも冷蔵庫から牛乳を取り出してコップに注ぎ彼女に渡す。
「何よ。べっ……別に背が低いとか胸が小さいからとかそういう意味で頼んだんじゃないからね。こんな貧相な料理に合いそうなのはミルクだと思っただけなんだ……やっぱ、ミルクね」
会話の途中で飲むなよ。というか黙って飲めよ。このツンデレメアが。
私のことを無視して話を進め出すメアちゃん。
「話を戻すとね。一つはあの眼鏡たちのような本を消すことしか考えない輩たち。もう一つは解決策が見つかるまで本を守る私たちの輩たち。まぁ、どっちもあなたの本を求めてることに変わりはないわ。だから奪いに来る。ここまでオーケイ?」
「は?渡さねえーよ」
「やれやれ、そう言いやがると思ったわ。私は今からあなたに第三の選択肢を与えるわ。あなたから本を奪うことはしない。その代わり私をあなたのそばに置いといて下さい」
「いや、急に告白されても……」
急に顔が赤くなるメアちゃん。その熱気がこっちに漂ってきそうだ。
「べっ……別にそういう意味じゃない……もん……」
「あぁ、いいよ。そばに置いてやる」
「え?」
「メアちゃんなら信頼できそうってことだよ」
メアちゃんは時計を見て顔を見られるのを防いでいたが、真顔でこちらを向いて言う。
「あの学校は?」
「やべっ。遅刻する。メアちゃん、行くぞ」
「行くってどこに?」
「学校に決まってるだろ?」
私はメアちゃんの右手を取って廊下を走り、玄関に置いたリュックを背負って外に出た。
そして鍵を閉める。
最寄り駅に着いて電車に乗って気が付いたことを言う。
「メアちゃん、制服どうするの?」
「勝手に連れてきて何ですか、それ……まぁ、なんとかするけど」
その後、沈黙した空気が続き、その電車を降りた。その駅から後ろからついてくるメアちゃんと共に学校に向かうのだった。




