あんよは上手、転ぶはお下手の乳児、のはずです。
気づかないうちに、ブックマーク4件、PVもトータル300超えて400に迫ろうとしています。
アマチュア作家の独善的作品をお読みいただいている皆様へは感謝感激です。
主人公も、今回でようやくお外へ出られるようになり、魔法も習い始めます。
これで、ストーリーがベビーベッドから広がるわ。
追伸:
時間が、ちょこちょこ飛びます。
連続した時間経過の話じゃないのでご注意を。
神様と会話して、自分のレベルとレベルの上限値について教えてもらった数日後、ようやくハイハイが可能となった。
いえーい!
これでついにベビーベッドという牢獄から脱出できるぜ。
後は、これもハイハイと同時期から、なんとかカタコトではあるが言葉が喋れるようになった。
カタコトなのは原因がある。
俺の魂、意識は転生前の日本人そのものであるから、こちらの言語は未だ完全習得していない(思考も言語もデフォルトが日本語なんだから、普通の赤ん坊みたいに音として吸収するように習得できないのだ)
通常の会話には困らないが、これでは魔法・魔術の詠唱に差し支える。
俺はカタコトながらも父親や母親と会話しつつ、家にある本も(昔は本が高かったんだよな。我が家にも10冊くらいしか無い……すべて手書きの写本だ)舐めるように何回も読みなおして言語の習熟に努めた。
それから数カ月。
俺は一歳と六ヶ月になろうとしていた。
「父さん、これからお仕事ですか?大変ですけど家計のため頑張って下さいね」
「あ、ああ、頑張るさ!愛しい妻と子供のためにな」
父さんは、いまだに乳児が完璧な発音で日常会話をしていることに慣れないらしい。
まあ、気持ちは理解できるけどね。
ベビーベッドから離れて、まだ数カ月の乳児が家計とか言い出すなんて普通じゃない。
「母さん、洗濯物を干すの手伝います。ボクのおむつが大半でしょ?このくらいは出来ますよ」
「え、ええ。でも出来る限りでいいのよ。こんなに山のような洗濯物で、す、か、ら」
よいしょっ!
の掛け声と共に自分の背丈より高い洗濯物の塊をカゴごと持ち上げ背中に乗っける。
母親の目が丸くなるが気にしないよ俺は。
洗濯機もないから水に濡れた服やおむつなどは結構重い。
それを絞って干すのだが、さすがに干すのは俺の背が足りない。
ハイハイで総重量30kgくらいの洗濯物の山を干場へ持ってきて水分を絞る。
最初は加減が分からなくて服ごと絞り破ってしまったが、もう慣れた。
水分を少し残しながら一割程度の力で絞ればいいのだ。
絞った洗濯物を母親に渡す。
はい次、はい次。
山のようにあった洗濯物も、ついに消えて干場はおむつや服がひるがえる洗濯物広場と化す。
普通の人は結婚と同時に仕事を辞めて家事に専念するようだが、うちの母親はキャリアウーマン。
家事が貯まると仕事を休ませてもらい、ちゃちゃちゃっと片付けて次の日から仕事へ出る。
乳児を放っておいて大丈夫か?
とか、よく言われるようだが、なに、職場は家の、すぐ近く。
俺の食事(現在は離乳食と母乳、半々)時には帰ってくるから問題なし。
俺自身は、絶叫して気絶するか、あるいは筋肉痛で動けないか、今のように大人しく本を読んでいるか、だから、最初は両親もパニクったらしいが今は平気で俺を放っておく。
まあ、普通の家庭・家族じゃないけれど、これでも愛情と信頼はたっぷりとあるからね、俺は不幸とは露ほども思ってないよ。
でもって俺は今日、ハイハイから卒業することを決めた。
まずはハイハイの姿勢。
それから、おもむろに立ち上がり、転倒。
いかんな、やはり四足歩行に慣れすぎて重心を高くすると安定しなくなる。
両足に力を入れて、と。
つま先にまで注意をはらい、立ち上がろうとする、こける。
何度もチャレンジするが、やはり転倒。
やっぱり頭が異様にデカイ体型だから(今、三等身も無いくらい。頭と胴体、手足のバランスが悪いのだ)
首に力入れないとダメかな?
首に力と注意をはらい、そろそろと立ち上がる。
おお、やった!
立った、立った!ク○ラ、じゃなくてラスコーニコフが立った!
はしゃいで首の力が抜けたら、こけた。
ちくしょ、気が抜けん。
その日は、歩くまで行かず、立つことに一日、費やしたのだった。
ちなみに次の日には、歩く練習に入り、歩けるようにはなったさ。
不安定だけどね。
走り、ジャンプできるようになるまでは、それから一週間もかかったよ。
まあ、両親は呆れた顔してたけどね(驚きが続くと慣れてしまうというのは本当だね)
ということで俺は一歳半と少しの年齢で、とうとう神殿へ行くことになったのだった。
いやー、明日は神殿行く!
と分かった時には眠れなかったよ(身体は睡眠を欲してるから眠ってるけど、意識は鮮明だったのさ)
きょ〜おは楽しい神殿訪問〜、ふふんふんふん。
鼻歌まで出る俺の気持ち、分かって下さい。
神殿ですよ神殿!
ついに魔法や魔術を教えてもらえるんですよ、そこのオニ〜サン!
と、完全に舞い上がってる俺の横で両親は神妙な顔をしていた。
なぜだろう?
そんな疑問は神殿を目の前にした時には吹っ飛んでいた。
いやー、威厳があるね、さすが実在する神の神殿!
威圧感もあるが、神聖なる雰囲気も漂ってくるわ。
両親は神殿の衛兵に何やら話しかけ、行く方向を指示してもらっているようだ。
受付かな?
俺は両親に連れられて神殿へと入っていった。
受付だったよ、やっぱり。
両親が受付担当と話していると、伝令係が走ったのか、ほどなく俺も知っている司祭様がご登場。
「おお、神に祝福され、保護まで受けている、あの時の子か。しかし、まだあれから一年と少ししか経ってないのではないか?とても歩けるような年ではないはずだが」
司祭様、それは普通の子供です。
俺は普通じゃありませんから。
父さんが話しだす。
「司祭様、この子は一歳半になったばかりです。しかし、もう歩くどころか走ることも飛び上がることも普通の会話すら普通にこなします。もう、神童とかいうものを飛び越えた、まさに神の子としか言えません。私ら夫婦は慣れましたが他の人たちは我が子ラスコーニコフが一歳半だというと、冗談言うなと一笑に付されます」
あ、我が家以外では、そうなのね。
でも自重はしませんよ、父さん。
司祭様について神殿内部へ入る。
「まずは、ここで神からの祝福とギフトを授かるのですが、この子は、もう済ませていますから手順を省きます。では、こちらへ」
司祭様に導かれて小部屋へ入る。
子供が座る小さな椅子と、反対側に神殿の係員が座っている椅子を挟んで小さな机があり、そこには水晶球のようなキラキラ輝く透明な球が敷物の上に載っている。
係員が司祭様の視線を受けて説明してくれる。
「これは、その子のレベルや魔力、体力値、その他の数値、魔法適性を見るための魔道具・鑑定球です。何も痛くないですし、この子には悪影響はありません。では、君。この鑑定球に、どちらでもいいから片手を乗せなさい」
係員の指示通り、片手を伸ばして球に乗せる。
さて、あれから鍛えてたけれど、カンストした他の数値は、どれだ伸びているのやら。
あと、魔法適性か。
どんな魔法・魔術が俺に適しているのか楽しみだな。
「用意はできました。では、この子の各数値と魔法適性を見ます」
係員が魔力を込めたか、それとも鑑定球のスイッチを入れたのか。
まばゆい光が鑑定球からほとばしり、目を閉じないと痛いくらいになる。
「お?おお、おおおお!こ、これは!」
まばゆい光の中、職業のプライドからか、係員は必死に鑑定球に浮かんだ数値を書き留めているようで、サラサラと文字を書く音が聞こえる。
しばらくすると光が消えた。
あまりにまばゆい光に球体が壊れるかと思ったが、そうではないらしい。
ただし、さっきまでの透明な球体ではなく真っ黒になってボウリングの黒ボールのようになっている。
係員が、すまなそうに、
「あまりの高負荷に魔道具がもたなかったようです。内部の魔法式は完全に焼き切れています」
え?
もしかして俺のせい?
もしかしなくても、そうだろうね。
俺の鑑定なんだから。
弁償金、高いのかなあ。
とか考えていると、司祭様が感激した声でのたまう。
「ああ、やっぱりこの子は神の寵愛を受けた神子だ!神からの予言さえ無ければ、すぐにでも神殿で預かりたいものなのに!」
ある意味、予想通りでした。
こんな子供、まずは宗教的な象徴に祭り上げられるのが普通だもんね。
しかし、神様、グッジョブ!
予防線張っといてくれましたとさ。
で、係員と司祭様、何か問答しているな。
「司祭様、これは何かの間違いです!あるいは、鑑定球が壊れてしまったゆえのエラー数字ですよ。レベル1の子供が、こんな数値になるわけがありません!」
「しかしな、今までに鑑定球が間違った数値を示したことはないし、未だかつて魔法式が焼き切れるほどの数値を示したものも存在せぬ。これは、真実の数値だと納得するしか無いのではないか」
「し、しかし!体力も魔力も99、賢さが85、素早さが32、器用さが50ですよ!これはもう、勇者とか大賢者、魔導師の長クラスか、あるいは、それをも超えるものです!こんなデタラメな事、信じられるわけがないです」
「まあ、今までの常識では考えられぬ子供というだけだ。この子の年齢は、いくつか分かるかね?」
「え?どう見ても、あ?よく見たら、頭と身体がバランスとれていない。発育異常ですか?この子は」
「ふふふ、常識で考えると、どうしてもそうなるか。そのアンバランスが普通の歳だと考えれば、どうだ?」
「いや、普通と言われましても。私も子持ちですからね。うちの子が生まれて一歳半から2歳までくらいが、こんな感じのアンバランスな体型でしたね。って!司祭様、まさか。まさか、この子は!」
「そうだ。大当たりだ。現在、一歳半の乳児だよ。この子は、な」
「嘘ですよ!そんなバカな!うちの子、ハイハイできたのが2歳過ぎてからでしたし、歩くのだって3歳近かったです。一歳半?ベビーベッドから起きられる年齢じゃありませんよ、それ」
「この子は、もう歩き、走り、飛び上がり、喋る。それで十分ではないか?この数値の証明は」
「あ、そうですね。いや、しかし、うーん」
「ともかく、この表は私が預かるぞ。なるべくなら、このことは広めないほうがいい。この子は神の保護すら受けておるのだから」
「あ、はい。わかりました。しかし、枢機卿会議には報告しないといけませんので、そこはご容赦を願います」
「ああ、それは仕方がない。法皇様と、その側近たちの会議だからな。あそこに隠し事は出来んよ」
ではな。
と言って司祭様は係員の小部屋を出る。
俺達は、ちょっとした会議室のような場所へ案内される。
司祭様が、おもむろに話し始める。
「今日の事は早々に教会の上部組織に報告され、絶対に枢機卿会議の議題となるでしょう。その結果、こちらへ審査官が派遣される可能性が高いと思われます」
俺は好奇心丸出しで尋ねる。
もう黙ってなんかいられないぜ。
「司祭様、審査官って、どういう方ですか?僕は審査を受けるような人間なのでしょうか?」
「うむ、異端審問のような審問官ではないのが救いだ。邪教徒、異教徒の審問ではないから、そのへんは安心だが、君の能力が高すぎるのが問題となろう。神の寵愛も審問官や審査官には関係ないからな」
「え?教会の方でしょう?神の寵愛が関係ないというのは変ですよ?」
「教会でもな、私のような信徒に直接関わるものと、法皇様直属の組織とは考えが異なるのだよ。彼らは、教会に仇なすものと、それ以外のものの2種類しか区別しないのだ。邪教徒、異教徒なら、即時、審問官が派遣され闇に葬られる。そうでないものには、まず審査官が派遣され、教会に悪影響をもたらすと判断されれば審問官に代わる。そこで悪影響が本物だと判断されると、これもまた闇に葬られるのだ」
「えーと。かなりムチャクチャな話ですよね、どう考えても個人の判断のみで有罪か無罪か判断してますよね」
「そうだ。とはいえ実質的に教会の利益になっているから始末が悪い。半分は異常でも後の半分が成功なら良いという連中だからな」
「うわー、終わりよければ全て良し、ですか。途中で、どんなに無実の人たちが殺され、苦しんでも、結果さえ出ればオーケー、問題無いよ!って集団ですか」
「ん、そうだ。だからな、今から君を彼らに対抗できるくらいの魔法使い、魔術使いにする。特訓だから厳しいぞ!」
「特訓、何でも来いです!レベル1の底力、魅せつけてやります!」
と、俺と司祭様はガッチリと腕を組んだ。
古い話で恐縮だが「友情のバ○ムク○ス」だ!
次の日から、俺の魔法・魔術特訓が始まった。