ギルドで、ひと悶着あったようです。 あれ?クラス上がってないか?
暖かくなり、厄介な肩こりも通常レベルまでになりました。
これから、あまり間を空けずに書いていきたいと思います。
数日後、冒険者ギルドへ行く。
ジャックも一緒だ。
それまでは、やることもないので目一杯、ジャックと遊んでやった。
さすがに魔獣となったジャックは通常のペットの遊び方じゃ生ぬるいらしく、じゃれつかれようものなら何も知らない人が見たら完全に、
「ひ、人が魔獣に襲われている!」
上記の状況としか思えないだろうね。
甘噛みと言っても、ジャック視点の甘噛みだから、通常の人間なら肉や皮なんて顎の力だけで持って行かれて即死だな。
まあ、そんなハードすぎる遊びも、俺とジャックには「遊び」にしか過ぎない。
俺達が本気になったら、それこそ国家の一軍団でも潰してみせるんだがね。
そんな物騒なことを思いながら、顔はにこやかに。出会う人たちには挨拶を返し
(ジャックまでワフ!と言いながら挨拶してる)
冒険者ギルドまで歩いて行く。
ギルドの入り口まで来たら、ジャックは騎獣舎の近くにロープでつなぎ、
「いいか、このロープを切るか外すくらいは、お前なら簡単に出来るだろうが、ダメだぞ。俺が迎えに来るまで、ここにいろよ」
と言い聞かせる。
ジャックは俺の言葉が理解できるため、頷いておすわりの体勢をとる。
頭をなでてやり、俺はギルドの中へ。
「こんちわー!以前の亜竜討伐報酬、受け取りに来ましたぁ!」
と、開口一番、のたまうと……
「あ、ラスコーニコフさん、いらっしゃいませ。お渡しする報酬ですが、こちらではなく、ギルド長の部屋までおいでくださいとのことですので。こちらへどうぞ」
受付さんに案内されて、俺はギルド長の部屋に入る。
ほほう、これがギルド長かい……って、登録しに来た時に出会ったオッサンじゃないか。
まあ、あいつがギルド長なら俺が初っ端からCクラス冒険者になってた事も理解できるけどな。
「そんなとこに突っ立ってないで、まあ、座ってくれ」
ギルド長は気軽に俺に椅子を薦める。
俺も、ちょいと長くなりそうな空気を感じ、傍にある椅子に座る。
「亜竜討伐、ご苦労さん。しかし、予定と違って、えらく多かったようだな」
ギルド長が尋ねてくる。
このへんはお約束というやつか。
「ええまあ、ボスは異様にデカくて体長5mほど。他は通常でしたが、数が40匹ほどいましたんで……あ、後、卵が50個ほどあったようです。さすがにそれは村長へ引き渡しましたが」
「うえ、卵まであったのか。さぞかし手ごわかったろうな、卵持ちだったとは……」
「は?卵を守るために飛び立てないから、わりと楽に殲滅できましたよ?」
俺の返事を聞いて、ギルド長は何とも言えない表情をした。
「まあ、お前さんくらいのもんだろうな。卵を抱いて凶暴になったワイバーン40頭以上の群れに対して、空を飛べなくなっただけ楽だとか言うような人間は」
そう言うとギルド長は、デスクの中から金貨の入った袋を取り出す。
「討伐報酬が通常ワイバーンで1頭当たり金貨10枚。ボスは変異体のようで、村からの討伐報酬が金貨100枚。それと、ワイバーンの素材買い取りの代金を合せて、総合計で金貨700枚となる。端数もあるが、これは、お前さんのクラスアップ経費として引かせてもらうよ」
「ん?クラスアップ経費?」
聞きなれない言葉に俺は疑問を呈する。
「ああ、いくら魔獣を連れているのは言うものの、たった一人でワイバーン40頭を超える群れ、それも変異体のボスを含めて、これほど見事に短時間に殲滅してしまった腕。これが、たかがCクラス冒険者であってたまるかい。ということでギルド長会議に図って、お前さんをBクラス冒険者にすることにした」
え?
俺がBクラス冒険者?
「そんなこと事前に何も聞いてませんけどね〜?そのクラスアップ経費が今回の報酬の端数金額ですか?」
「そう、そういうことだ。ただし、今のCクラス冒険者証の交換は今日は無理。明日になったら、お前さんは晴れてBクラス冒険者となる」
ふーん……でも良いことばかりじゃないよね、これって。
「で?俺がBクラス冒険者となるについて何か条件があるんじゃないのか?」
「察しがいいね、その通りだよ。俺は、あのワイバーンの山を見ているから何も問題はないと思うんだが……問題は他の街の冒険者ギルド長なんだよ。そいつら、お前さんには実績が圧倒的に足りないって言うんだ。まあ、冒険者になって最初の仕事でワイバーンの群れを単独で殲滅させたやつなんざ、今までにいるわけがないってのにな」
「で?実績を作れってか?」
「その通り。とりあえず通常の依頼は全て受けられるBクラスに上げておいて実質的にはAクラスの依頼を数件、こなしてもらう。それで何も異論なく、お前さんはAクラスだ」
「はい?Bクラスは当面の間だけってことか?」
「当たり前だろう。どこのどいつが、BクラスだろうがCクラスだろうが、たった一人でワイバーンの群れを殲滅できるんだよ。ちなみに俺はAクラスじゃなくてSクラスでも問題ないと思うんだけどね……あんた、実力はこんなもんじゃないだろう?」
さすがギルド長、人間の強さは黙ってても測れるか。
「まあね、敵対国家の一個師団くらいなら、まとめて相手に出来るとは思うけどな」
「はあ、そんな歩く破壊兵器がBクラス冒険者として道を歩いていていいのかね?俺は、できることなら国家の元で秘密兵器として働くほうが似合うと思うんだが……」
「何なら、今ここで、この建物を粉々にすることも可能なんだが……」
「うわ!頼むから、やめてくれ。まあ、そんなわけで明日になったら冒険者証がBクラスになる。で、同時にAクラスの依頼が数件、指名依頼で舞い込む事になってるから、よろしく頼む。どの依頼も報酬はデカイぜ!」
こんな会話をして、俺はギルド長室を出る。
はぁ……明日から無理難題のオンパレードかよ。
ま、ジャックも一緒だから何とかなるだろうけどな!