待ってろよ、亜竜ども。 ってなことで、ワイバーン(群れ)退治です。
はい、ついに冒険者としての最初の仕事に出かけます。
個人的なことですが、先週、父親が天に召されました……
今までの介護の苦労からの解放と、ちょっと気が抜けたようになってたのとで、小説を書くどころじゃなかった状況に陥ってました(通夜、葬式、その後)
少しは日常に戻ってきたので、これからは書きますね。
朝一番に、ギルドの前に行くと、もう昨日の少女……ナタリーとか言ってたな……が待ってた。
もう仕事を受けて書類も提出しちゃったんで、いまさら逃げるわけもないんだけどね。
「おはよう、ナタリー。さ、乗ってけ」
「お、おはようごぜーます。ら、ラスコーニコフ様」
「言いにくいようだから、ラスで良いよ、それと、様付けは禁止な」
「わかっただ、ラスさん」
「それでいい、さ、乗れ。行くぞ」
「オラが乗っても良いのか?オラは、ただの農民、村人だ。盗賊や獣、魔獣なんかが襲ってきても戦えねーだよ」
「はっはっは、戦う事は無いと思うよ、多分な」
俺とナタリーを乗せて、馬車は、荷車を載せた荷車(荷車一台に、他の四台が括りつけられてるんだ、これ)を牽いて、街の出入口へ向かう。
出入口で、俺は冒険者証を見せてフリーパスあつかい、ナタリーは出国税として銀貨一枚を支払う……
それからは、ひたすら街道を馬車でカッポカッポと進んでいく。
まだ街が近いから、盗賊も獣も襲ってくる気配すら無いが、今夜(当然、野宿だよ)からは危険だろうな、多分。
だけど、ナタリーはともかく、俺は、なーんも心配なんかしてない。
魔力も体力も五桁に達してる俺に、危害を加えられるものがあるとしたら、神のレベルにある存在だけだ。
多分、魔王ですら、俺がマジになったらひと捻りだろう。
ちなみに俺、獲物の解体用と、ちょいとした工作用にナイフを一本、腰に差しているが、こいつは世間体用である(だって、魔力刀の方が切れ味が鋭いんだよ?でも、世間は、見えない刀は認めてくれないのでね)
あ、ちなみに現在の俺のレベルだけどさ、
人族 ラスコーニコフ 2歳
異名:人の形をとりし死神
レベル107 修行僧 冒険者
体力 10145(10145)
魔力 10699(10699)
素早さ 2159
器用さ 1584
賢さ 2379
魔法・魔術:
適合率(高)
無属性(99%)、闇属性魔法(99%)
地属性(71%)、水属性(71%)、火属性(71%)、風属性(71%)
聖属性(67%)、光属性(67%)
適合率(中)
適合率(低)
武器・防具:
適合率(高)
鋼鉄のナイフ(特殊能力:なし)攻撃+2
適合率(無)
なし
ギフト:
恐れを克服する、己を超える、仲間を呼ぶ
ふふふ、ナイフの攻撃力は、意外に高いな。
武器屋で、柄の装飾が気に入ったから少々高かったけど買ったのだけど、お得だったようだ。
まあ、ナイフで攻撃するよりも、魔力刀でぶった切るほうが速いんだけどね、実は。
ナタリーは、しきりに俺に聞いてくる。
「なあ、ラス、さん。あんた、武器がナイフ一本しか無いし、魔法や魔術の媒体も持ってないようだし、かと言って、弓や飛び道具も使わないようだし。一体、何で亜竜の群れと戦うんだ?」
これである。
答えは……教えてやるか、な。
丁度いい獣も近づいてるようだし……
「ん、それはな……ちょうどいい相手が来たようだ。馬車の周囲に結界張るから、ここから動くなよ。でもって俺は、今からそいつらの相手してくる」
ナタリーの返事を待たず、俺は馬車から飛び降りる。
同時に、馬車と荷車を中心として魔力結界を張る(今回は、魔力を固定化して物理結界として使用)
さて、おいでなさいな、狼さんたち!
気配を消していたのに、何で分かったのだろうかと言う顔をしながら、かなり大型の狼集団が、前後の草むらから現れた。
ふっふっふ、魔力レーダーを使えば、半径5kmくらいの範囲は丸わかりだよ。
のっそりと現れた狼達は、前世の地球上では見られないほどの大きさだ。
小さいやつでも大型犬クラス、中心のサイズは人間大、群れを引きいてるボスは、それ以上のやつだろう。
あ、ナタリーが青い顔で震えてる。
結界中だから、そっちに狼は行けませんよ、安心しな。
さて、まずは小手調べ。
ここはナイフでお相手しましょうかね。
「ほら、来いよ、犬っころ。お前らが人に懐いて犬の元になるんだよ」
何を言っているのか分からなくても、バカにされているのは分かったようで、低く唸ると、3頭が同時に飛びかかってきた。
ほほー、この分だとボスの統率力は凄いものがありそうだ。
「ギャン、キャン、ギャーン!」
1頭の続いた声に聞こえるようなタイミングで、俺に飛びかかってきた3頭は瞬時に腹を切り裂かれて絶命する。
俺?
血糊すらナイフに乗りませんよ。
目にも止まらぬ速さで斬り裂いてるから、血すら倒れた後からドクドクと出てる。
仲間が、あっという間に殺られたので、今度は慎重に、中心サイズの5頭ばかしが低く唸りながら、俺にゆっくりと近づく。
さて、さすがに5頭も相手にするとなるとナイフ一本じゃキツイよな。
俺は魔力刀を作り出し、空いた左手に持ち替える。
右手にはナイフだ。
すぐ近くまで寄ってきた5頭は、ぐるぐると俺の周りを回り出す。
ほう、これはこれは……集団戦術まで駆使するとは、なかなか優秀なボスだな。
これは、ボスだけ殺さずに俺のペットにでもするか。
ぐるぐる回ってる奴らの間に刀身を長くした魔力刀を差し入れる。
モノも言えずに見えない刀で斬られた仲間を見て、ぱっと他の4頭が散る……いいねいいね、ボスが欲しいよ。
まあ、それでも俺の相手にゃならなかった。
狼も真っ青のスピードで走り回る俺に付いて行けない4頭は、次々と首を飛ばされていく。
ものの30秒で5頭の死骸が……
後の群れが一斉に襲い掛かってくるのかと思いきや、ひときわガタイのデカイ奴が出てきた。
あ、こいつがボスだな。
賢そうな顔してるわ。
殺したくないよなー、こいつら。
どうしたらいいかな〜?
ここは、魔法や魔力よりも殺気か?
俺は「俺に従え!そうしないと群れは全滅させるぞ!」ってな感じで念を込めた殺気を、俺と対峙してるボス狼に放つ。
「キャイン!キャイン!」
あ、腰が抜けたか?
あまりの殺気に。
おーおー、ボスが小便漏らしてるわ。
腰砕けしたようで、立とうとしても立てないようだ。
俺が近寄っても、観念したのか、腹を見せている。
俺は、手持ちの干し肉をボスに食べさせてやる。
俺の意図がわかったのか、干し肉を俺の手から食べたボス狼は、俺の手を舐めてくる。
よし!
ペットの狼、ゲットしたぞ!
その後、群れ全体も俺を新しいボスと認定したようで馬車の周りに張り付いた。
ナタリーは、自分の見たものが信じられないようで……
「ラスさん、あんた何者だ?この魔獣化したボスを中心とした狼の群れには、でっかい商人の集団馬車でも手を焼く事が多かったのに……いまじゃ、魔獣がペットの犬みたいになってるわ」
「まあ、このくらいでないと亜竜の群れに立ち向かうなんてのは無理だろ?そういう事さ」
俺が殺した狼達は穴を掘って、そこに遺骸を投げ込み、火の魔術で骨も残さず焼いてやる。
この世界、獣も人も魔獣も死骸を放っておくとゾンビ化するのが普通だというからな。
人間2人の旅から人間2人と狼20頭って集団になったが、そこはそれ。
馬には闇魔法と催眠術で狼への耐性をつけさせて、狼達にはナタリーも馬たちも俺の仲間という形で認めさせた。
さて、大集団になったが、これで夜の警戒体制は抜かりないな。
俺達は亜竜退治へ向かって馬車を進めていくのだった……