ようやく鑑定魔法が使えます。 やっぱり、レベルの上限は極めたいですね。
色々と世の中の常識に挑戦しては怒涛の電車道で押し出している主人公ですが、この回でようやく「鑑定魔法」が使えるようになります。
でもって、レベル1の数値上限が、けっこう(自分にとっては)きつい縛りだと思い知らされます。
さあ、どうする、どうなる一歳半!
次の日、父さんと一緒に朝から神殿詣で(もう慣れたんだけど、父さんは俺を1人では出歩きさせない。まあ、一歳半だもんね。親の心情は理解出来得るよ、と、一歳半の当人は思うのだった)です。
でもって神殿の訓練場で、今日も司祭様と二人っきりで魔法・魔術のおけいこ。
「ラス。今日は無属性魔法・魔術の一つ、鑑定魔法を教えます。これは重宝しますから、基礎魔法だけど、しっかり覚えるようにして下さい」
わお!
ついに憧れの鑑定魔法がきたー!
「司祭様、今まで鑑定では今現在の上限数値しか見られませんでした。消費した体力や魔力の数値というのは鑑定魔法で確認できるんですか?」
「あ。あまりに君が魔法の天才だっただけに基礎的な説明を忘れていました。魔法や魔術には、それぞれ習熟段階を示す数値があります。いわゆるレベルのようなものです。鑑定魔法も無属性魔法・魔術の中に入りますから無属性魔法や魔術の習熟度が上がれば、それにつれて鑑定魔法の習熟数値も上がりますよ。数値が上がれば、より詳細な鑑定ができることになりますね」
「あ、そういうことだったんですか。じゃ、魔法や魔術は一つ一つ段階的に上げていくのではなく無属性や地水火風などの属性ごとで上がっていくわけですね」
「はい、大正解!いやー、君に教えるのは楽ですよ、ラス。まさに1を教えただけで10返ってきますからね。たまに常識も破壊されてしまいますけど」
「やだなあ、司祭様。ほんの思いつき、冗談の世界じゃないですか」
「ラスの場合、冗談が本物になるところが恐いんですけどね。まあ、いいでしょう。今から鑑定魔法を教えます。まず、私が君に鑑定魔法をかけます。その感覚を覚えておきなさい」
司祭様が俺に向けて手を伸ばす。
例によって波動のようなものが俺の体の中を通って行く。
でも、ただの魔力とは明らかに違うな、これ。
あ、分かった。
振動数、周波数が違うんだ!
「司祭様、コツは掴みました。やってみますね」
「あ、まだ呪文も教えてない、って。うわ、なんだこの鑑定魔法は?!」
俺が鑑定魔法の周波数だと思った波動を司祭様へ向けて放った途端、俺の頭の中に、データが飛び込んできた!
人族 ハーモニック・サイモン 38歳
レベル45 魔導師(高) 神聖教会司祭
体力 50(48)
魔力 50(48)
素早さ 45
器用さ 50
賢さ 60
魔法・魔術:
適合率(高)
無属性、地属性、水属性、火属性、風属性、光属性
適合率(中)
闇属性
適合率(低)
精霊属性
武器・防具:
適合率(高)
錫杖、棒、杖、ローブ、僧服、皮鎧
適合率(無)
盾、金属鎧、チェインメイル、刀剣類、槍、ナイフ
ギフト:
神の使徒、預言者(低)、道を整えるもの
うあああ!
なんだ?
なんだこれ。
「し、司祭様!何ですか、このデータの山は?!」
「あ、やっぱり。初めての鑑定魔法にしては、あまりに精緻な魔法だったので、こうなりましたか。まあ、昨日、あんな無属性魔法の使い方をするような子ですからね。無属性の習熟度があがっていても変じゃありませんね」
「というと?これがレベルが上がった鑑定結果だと?」
「そうです。同じことを自分に向けてやってみなさい。自分で自分を鑑定すると、より詳しいことが分かるはずです」
物は試し、やってみる。
人族 ラスコーニコフ 1歳
レベル1 なし なし
体力 99(98)
魔力 99(98)
素早さ 50
器用さ 58
賢さ 89
魔法・魔術:
適合率(高)
無属性(69%)
適合率(中)
なし
適合率(低)
なし
武器・防具:
適合率(高)
なし
適合率(無)
なし
ギフト:
恐れを克服する、己を超える、仲間を呼ぶ
うわ、細かく出てきたな、こりゃ。
でも、これは分かりやすいぞ。魔法や魔術の習熟度まで表示される。
武器や防具は、この身体では使えないってことなんだろうね、この表では。
しかし、ギフトが、やっぱり普通じゃないよな、これ。
「司祭様、より細かく表示されます」
「はい、よろしい。しかし驚いたな、ラス。君は呪文詠唱のギフトでも貰ったのか?」
「あ、いいえ、貰ってませんが、それが何か?」
「君が鑑定魔法を放つとき、完全に無詠唱だったことだよ。私は魔法や魔術に習熟したため、呪文省略と無詠唱まで会得したが、君は一昨日から魔法・魔術修行を始めたばかりだ。そんなレベルの者が最初から無詠唱で高度な鑑定魔法など、とても信じられない。まあ、君と私の仲だから、まだ私は理解できないこともないが、審査官だと理解する努力もせず、審査破棄で審問官登場となるだろうね、間違いなく」
「と言うことは、ですね。枢機卿会議という組織とは全面対決になる恐れが十分にある、と言う事になりますね。あ、それから。なんで枢機卿会議、なんですか?普通、法皇庁会議とか、法皇側近会議とかの名称になりますよね?」
「うーん、ラス。君は鋭い、鋭すぎるよ。実は、元々の名称は法皇庁会議だったんだよ。それが、今の法皇様に代わった途端、幼い法皇様を補佐するという名目で枢機卿達が法皇様を幽閉状態にして、会議という名目で自分たちの利権のみを追求する枢機卿会議に名称まで変えてしまったんだ」
それを聞いた俺は、どうしたかって?
枢機卿会議、ぶっ潰す!
という方針になったのさ。
もう、審査官も審問官も、敵だ!
まとめてぶっ潰して、幽閉されてる法皇様を助けるのが、一番目先の目的に変更!
さーて、魔法と魔術の修行に励んで、まずは法皇庁で無双してやろうじゃないの!