プロローグ
プロローグ
将来は○○マンみたいにカッコいいヒーローになる!
久しく見た小学校の卒業アルバムにはへんちくりんな文字でそう書いてあった。
所詮小学校の頃の夢なんてそんなものだ。でも当時の俺は本気でこれを書いたのだろう。
夢なんてものは年を重ねるごとに、叶わなくて当然、諦めて当然になる。
だから後になって見返して「バカだなー当時俺」とか思うのだろう。
それは俺にも例外なく当てはまっていた
小学校の時ヒーローに憧れて始めた空手、俺は才能の有無で勝負が決まる事を思い知らされた。
中学二年の夏、脈ありと思われた女の子に告白するも玉砕した。
後日、その子は俺が俺より格下だと思っていた奴と付き合いだしたという
他にもいろいろなことがあったが、とにかくその時俺は気付いた。
俺は何にも選ばれなかった人間で
どう足掻こうとも選ばれた人間に一生届くことのない人間で
この世界に生きるだだ時間を駆逐するだけのモブだと言うことに
故に、世間大多数を占める人種一〈モブ〉一である俺は、才能を持つ少数派―〈主人公〉―のために夢を諦めて、譲らなくてはならないのだと
笑えない、気に食わない、それでも認めざるを得ないこの現実。
少しでも現実から離れようとした俺は次第に学校へ行かなくなり、高校へ入学し2ヶ月たった頃には完全な引き篭もりと化し、アニメにラノベ、音楽やゲームと言った娯楽を貪り続けていた。
そんなある日、俺のもとに一通のハガキが送られてきた。
真っ黒な紙に白いペンで文字が書かれていて、内容は貴方を異世界にお招きしますとか何とか。
そんな感じの素っ頓狂なことが書かれており、文末には最後にはfrom E,Sofiaと記されていた。
俺はソフィアさんを知らないががきっとこの人が差出人なのだろう。
ともあれ、もしこれが本当なら、これ程願ったり叶ったりな話であった。
なんたって異世界と言えば異能に目覚めたり魔王を倒したり世界を攻略したり、それでもってハーレム作ったり…とにかく素晴らしい世界には違いないのだから。
そして俺はそんな世界へ行ける
溢れる興奮を抑え、ハガキの裏も確認する。
裏側には見たこともない文字がぎっしりと敷き詰める様に書かれており、その中央に花の形をした赤色の高級そうなシールがはられていた。
「なんだこれは?取りあえずこのシールめくってみるか」
そして俺がシールをめくった瞬間
―バチン
手に電流が走ったような感覚に襲われる。
「痛ってぇ、」
そう言いつつ俺の手を見ると、さっきシールをめくった指先から迫るように俺の手が消え、みるみるうちに俺の身体は消えていった。