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異世界の姫さまが空から降ってきたとき  作者: 杉乃 葵
第六章 朱堂アリス

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第七十五話『Cracking』

「後は、ポチ次第だから」


 結局、美霧からの手紙の内容を麗美香は話さなかった。ただ、「オレっ娘ちゃんのことを、もっと考えてあげた方がいいよ」とだけ言った。どういう意味だよ。ほんと。美霧はなんで手紙を寄こしたんだと聞けば、麗美香は一旦口を噤んだ後、「わかんない」と告げた。それは果たして本心だっただろうか。


 用はそれだけといった感じで、その場を立ち去ろうとする麗美香を呼び止めた。

「おい。もう一つあるだろう」

「もうひとつ? なんだろう……?」

 こいつ本当にわかっていやがらねえ。人差し指を口に当ててて首をかしげ、頭の上にはてなマークが見えるような表情で呟いていた。


「ユニーク枠の件だよ! 忘れんな」

「あーあー!」

 おー、そんなのもあったかなあ的な感じで手を叩いて頷きやがる。

「忘れてたのかよ!」

「あー、いやーあー、まあ、ちゃんとやるからあ。あはは」

 こいつ、やっぱり忘れてやがった。こいつに頼むんじゃなかったよ。ほんと。

「じゃあーーーねーーー」

 麗美香は、大きく手を振りながら走り去っていった。あの野郎……逃げやがった。


 しばし中庭のベンチに座り、情報を整理することにした。アイツと話すとなんかわちゃわちゃして混乱するからな。

 今の話で気になるところといえば、麗美香が言った、「美霧が人の心を読める」ってくだりだ。それに相当する内容が手紙にあったのだ。それについて聞くと、アイツは口を濁しやがった。ただ、美霧が周りにその能力のことを話してないとすると、手紙は本物と考えるしかない。麗美香が言うように自動書記によって美霧の霊が書いたか、あるいは美霧は実は生きていたか。これも麗美香が指摘したように、美霧が死んだと言っているのは摩耶先輩ただ独りだけだ。でも、なぜ摩耶先輩が嘘を付く必要がある? 嘘じゃなくても霊視で間違えたとか。その辺は、霊能力に詳しくないからわからない。そして、手紙の内容である。麗美香の話が本当だとすれば、それは美霧からヤマゲンに宛てた極個人的な内容のものだったのだろう。

 でも、そうだとして、そうまでしてヤマゲンに伝えたかったことって何だったんだろう。



 ※※※


 ここは学校のとある一室。

 暗闇でひっそりとノートパソコンを操作している女子生徒が居る。

 ノートパソコンの液晶の光が、彼女の顔だけ青白くを浮かび上がらせている。

 ショートカットで、その目は猫を思わせる。


「んーと、なんだっけ。あー、そうそう、ユニーク枠ね。ユニーク枠。それらしいフォルダはぁっと。これかにゃー。なんかいっぱいファイルがあるですよ。全部は観てられないなあ。そんなにゆっくりしてられないしね。見つかったらやばいし。『捕獲した謎の生命体についてのレポート』? なんじゃこりゃ。なになに、うわ……グロぉぉ。解剖写真とかないわぁ。わたしぃこういうグロいのん苦手やぁ。おええ。なんかすごいやばい感じっすよ。なんか超常現象ばっかり載せてる雑誌の記事みたいですよん。ん? 『以下の学生については厳重な監視体制に置くこと』ほうほう。『1年A組 山根耕一』『ニーナ・クリーステル』『1年C組 風江舞』ふむふむ、あら、『1年H組 神鏡麗美香』オヤビンの名前があるですよ。オヤビンやばいっすよ。オヤビンも対象者になってますにゃ。まあ、わたしは報酬貰えればそれでいいんですけど。報酬貰うまでは生きていてくださいよぉ。たのんます。

 他にはぁっと、「時空の歪みについての調査レポート」。ほうほう、面白そうやん。なになに、『突如本校校舎屋上上空に出現した時空の歪みは、1年C組 風江舞によって閉ざされるに至る。現在、風江舞に事情聴取中。歪みの再開の可能性および歪みの向こう側についての情報は未だ確認できず』うーん。よくわからない。

 こっちはなにかなあ。『朱堂しゅとうアリスの自動書記実験レポート File-01』ほむほむ。どれどれ。うわあ……漢字だらけえぇ。意味わからん。んーっと。『同じ環境、同じ手法を一般被験者にて実験を繰り返すも同様の結果を得ず』なんのこっちゃ。

 うーんっと、『ユニーク枠対象学生一覧表』ほほう。おー、結構な人数居るんだにゃあ。『1年A組 ニーナ・クリーステル……山依元子……1年B組 赤部真知……1年C組 風江舞……朱堂アリス……1年H組 神鏡麗美香……』ふむふむ。美霧さんのお名前はありませんねえ。元から入って無かったのか、それとも居なくなったからなのきゃ。 

 お、これは『収支報告書』ひゃー。数字とか表とか、わからーん。支出は『実験費用』とかなんとか。ふむーう。収入はっと、ほうほう、いろんなところからの支援金みたいだにゃー。記号で書かれてるにゃ。一番多いところは、『AAA』わかんにゃーぃ。くちょー。どこかにきっと記号の対応表があるはずにゃ。ふふふ……やっぱりあったにゃ。って、パスワード掛かってる。うーん。さすがに理事長の誕生日とかではなかったきゃ。PCのパスは誕生日だったくせにぃぃぃ。引き出しとかにパスワード書いたメモがないかにゃ。がさごそがさごそ。なにもないにゃ。うーん。くちょー。無念なりぃ。ん? 見つけたにゃあ。ふふふ。去年の卓上カレンダーが入ってたにゃ。4月11日に◯が付いてるにゃ。こいつだにゃー。カタカタぽちっとな。ひらけーごまーちゃん。どん。ふふふ、開いたにゃ。


 え……『記号:AAA 神鏡総合研究所』


 これって、オヤビンの爺様の研究所ですやん……

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