第百四十九.五話『大魔術師メイ・シャルマールに失敗はありません。ホントですよ。』
あれからおよそひと月が経過いたしました。
この大魔術師メイ・シャルマールに失敗はありません。
行方不明になってしまわれた友人の救出。着々と準備は進んでいるのです。ホントですよ。
現場で例の宝石を見つけました。ほら、あれです。貴方、いえ、失敬、句由比華澄に預けた赤い宝石です。あれと同じ物です。それも沢山在りました。殆どがバラバラに砕け散っていましたけど。その中でも比較的大きめで傷の少ない物を数個拝借してきました。そういえばこの赤い宝石に纏わる話をしておりませんでしたね。これは失礼をいたしました。わたくしとした事が。
この宝石は、あの方、ほら、神鏡麗美香さんのお姉さん。お名前は存じ上げませんが、あの方です。人や猫にどんどん入れ替わりされたあの方。移り元を順に辿って、本来の姿まで戻そうといたしましたが、最終的に岩になりました。御本人の身体は既に火葬されていた様ですね。人の魂をその身体から抜き取って別のモノへと移す。その力の触媒と成っていたのが、この赤い宝石でしたの。
その宝石が、あの事件現場に大量に在ったのですよ。不思議ですね。
貴方の話では、この宝石はこの世界の物じゃないって事ですよね。じゃあ何処から来たんでしょうね。
ふふふ、そうですね。その通りですわ。既にわたくしには確信がありますの。貴方も同じ意見の様ですわね。
でもどう使うのかは、さっぱりですの。発動させる機械らしき物の残骸は在りましたが、何も解りませんでした。
そちらの方でも調査はさせれたのでしょうか?
ふっ、貴方が答える筈ありませんわね。もう少し協力して下さってもよろしいのではないでしょうか? 組織が怖いのも解りますけれど。
友だちがいが無いですわね。
え?
あんたなんかと友だちになった覚えは無いですって?
本当にもう、貴方って人は素直じゃありませんわね。
これでも貴方の実力と心根は信ずるに値する。そう思っておりますのよ。薄氷の様な危ういところはいただけませんけど。
まあいいですわ。そんな事は。
それよりも深刻なのは、時間がもう残されていない事です。
急がなければなりません。急がなければ、二度と救出は出来なくなるでしょう。時間と共に、かの世界とこの世界の繋がりが途切れて行きますから。そうなってしまっては、もうどうしようもありません。
貴方が力を貸してくだされば、簡単ですのに。
いえいえ、もちろん、この大魔術師メイ・シャルマール独りで充分てすわよ。ただ、貴方の尽力があれば、少しは、ほんの少しは位は助かるという事です。ええ、口で言う程簡単な事ではない事は重々解っております。わたくしが帰って来られる保証なんてありません。時間内に戻れなければ、二度と戻る機会は無いでしょう。
え? どうしてそこまで危険を冒して彼らを助けるのかですって?
そんな事、決まっているじゃありませんか。
だって、
大魔術師メイ・シャルマールには失敗はありませんから