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イベント -意思-

 「な、これはどうなっている!!」


 状況を理解できていないフィルが叫ぶ。状況は始まりの時。俺がクロノ・クロニクルを使った瞬間に戻っていた。


 「クロノ・クロニクル…その効果は時戻し。発動後、ダメージを受ける。もしか一定時間が経過するとクロノ・クロニクルを発動した直後の状態に戻る。カードの状態や立ち位置なんかもな」

 「なぜ、そんなことをした!!舐めているのか!!この私を!!お前はバハムート・ゼロを倒していたはずだろう!!」


 フィルが憤慨した様に話す。自分が見下していた存在に敗れかけ、そしてそれを見逃されたことがよほど屈辱なのだろう。

 だが、俺は飄々と答えた。


 「なぜって、そりゃ色々理由はあるが…しいて言うなら覚悟を見ようと思ってね」

 「覚悟だと!?」


 ま、実際は相手の手札と自身の引きの内容を確認したかっただけなのだがここはカッコいいことをなんか行っておく。最後に戦うラスボスは余裕な態度を見せて主人公に語りかけないとな。


 「そうさ、世界を変えたいって言うならそれ相応の覚悟を見せてもらわないと困るだろ?それともなんだ?一度負けたくらいでもう心折られたか?」

 「ふざけるなこの程度で…折角のまぐれ当りをなくしたことを後悔するんだな!!」


 今度は足踏みではなくバハムート・ゼロを空へと浮かせる。そして地面に向かってネオ・アルカナフレイムを放つ。


 「ちょっとは考えられるようになったじゃないか。だけどまだまだ教育が足りてないぜ!!タブルキャスト。アルカナムジョーカー!!」


 また演唱によるドローを二倍にし、今度は魔法を放つ。偶然出た氷の魔法はバハムート・ゼロの翼を氷漬けにし、その身を地へと落とさせた。


 「ぐ、ぁあああ!!」


 (雷でも土でも良かったがラッキーだったな)


 勢いよく地面に叩きつけられたフィルは受け身を取ることもできずにダメージを受けていた。俺はそんな彼女へと向かっていく。


 「くっそ…この私をこんな地面に…!!いい加減にしろ!!この愚民が!!」

 「自分が特別だ!って?誰もがそう思っているさ!!自分だけだと思うなよ!!社長さん!!」


 俺は叫びながらフィルへと近づく。フィルは俺を止めるために魔法を発動させた。


 「く、くるな!!無謀なる巨大壁!!」


 キンっと鋭い音を立てて俺の双剣槍が防がれる。ほっとした顔になるフィル。だが甘い。


 「俺の手札が一枚減っていることに気付いてるかな?」

 「何?まさか…!!」


 そう俺の手札はゼロになっていた。迫ってくることに焦ったフィルはそれに気づかずにわざわざ壁を発動させたのだ。そのまま攻撃すれば勝てたのかもしれないのに。


 その瞬間壁の奥で爆発が起こる。不可視の壁がバハムート・ゼロからも爆発からも俺を守った。そして俺はその間に演唱を行う。


 『不確かな力!!我が名に置いて解き放て!!俺のターンドロー!!』


 俺の引いたカードはもちろんこれだ。


 <M-改変する世界…このカードが発動した時、手札を全て捨てる。そして捨てた数+1の数を手札に加える。手札入れ替えはデュエルの基本!!>

 <C-ロードオブ・フレイムタン…炎の精霊王。実体を持たない姿で遠距離攻撃を得意とする。召喚時間を過ぎると自爆する。道連れ攻撃にご注意を!>


 壁がなくなり、奥からフィルが出てくる。バハムート・ゼロもダメージを負っているがまだ健在だ。


 (フィルの手札はもうない。ロードオブ・フレイムタンで決着を付けられるか…?いやそれよりも)


 「改変する世界」


 俺は手札を入れ替える


 <M-変転する力場…相手の魔法の属性を変える力場を作り出す。逆転現象って奴です>

 <T-隆起する世界…足場を隆起させる。但し隆起場所は特定できない。ぐへっと腹に当てないようにね>


 「さあ、もう手札はゼロだな。対して俺はまだ二枚残っている。そして今、改変する世界を使ったことからもわかるように俺の手札には瞬移槍がある。もう言いたいことわかるよな?」


 ハッタリデス


 「く、っそ…それがなんだまだバハムート・ゼロが生きているんだただの槍くらい何とでも」

 「さあ、そう思うならやってみなさい。さあ、さあ。どうしたんだ君の力はその程度か?それとも…強力なカードなしじゃ、金や権力なしじゃ何もできないのかな」


 精神攻撃はデュエリストの基本。ちょっとやり過ぎな気もするが調子に乗っている俺はその可能性を一瞬でどぶに捨てた。


 槍によってバハムート・ゼロがやられたことを覚えているのだろうフィルは別の選択を行う。


 「そ、そんなわけがあるか、ないなら引けばいいんだ『絶対なる…』」

 「隆起する世界」


 突如地面が隆起し、演唱中だったフィルが必死の思いで避ける。そしてその際に演唱を止めてしまった結果、演唱失敗によるリキャスト時間が発生する。


 「く、リキャストが…!」

 「さあ、演唱も封じられたぞ!どうする?」

 「もういい!やれバハムート・ゼロ!!」


 そしてバハムート・ゼロを動かした。冷静さを欠いた一撃、この程度なら百体相手にし、何度も動きを叩き込んだ俺に躱せないものでもない。


 「浅いんだよ。攻撃が!考えが!お前はここにいないからそんな浅さなんだ!!」


 俺は地面に叩きつけられた腕の上に乗り、駆け上がる。そして双剣槍でバハムート・ゼロを突き刺し倒した。


 「さあ、これでバハムート・ゼロもいなくなった。答えろ!どうすればいいかを!答えてみろフィルー!」


 俺はそう言って一歩足を近づけた。


 「どうした通過点なんだろう?」

 「く…」


 そしてまた一歩足を近づける


 「金や力があれば勝てる。勝ち続けるんだろう?」

 「やめろ…」


 そしてまた一歩


 「俺は駒なんだろ負け犬なんだろう?」

 「ふざけるな!!」


 大きく振りかぶって襲ってきたフィルの双剣槍をフィルの手を掴むことで止め、ダメージを与えないように腕から叩き落とす。そしてそれを遠くに蹴り飛ばした。


 「そんな…」

 「なっちゃいない。なっちゃいないよあんた。駒以下だぜ。どうしてそんな状態でここに来た。勝てると思っていたのか?カードだって力だって結局それを活かす力量がなければ紙屑だ。」


 俺自身もばら買いで高いカードを買って俺Tueeee!!して調子に乗っていた時に同じデッキ使いやもっと上の奴にぼこぼこにされたこともある。あれは黒歴史だ、強いカードがあれば勝てるわけじゃないということを思い知らされた。ファンデッキに倒され時、雷門に一日中なじられたことは今も忘れられない。


 「大事な試合だったんだろう。成し遂げたい目標があったんだろう?なのにこの体たらくは何だ!!」

 「ヒッ!」


 俺の勢いに一歩フィルが下がる。


 「言ったよな、外れた道を人と違うことをするには覚悟がいるって。人に迷惑を掛ける以上何かを成し遂げるまで走り続ける必要があるって。だから何があっても折れるなよって」


 ファンデッキやキャラデッキで大会に出たりするのは自由だ。だがそれ相応の覚悟がいる。大会に出るのはガチデッキ使いだし、負けることも多い。なんでアイツあのデッキで出てるんだと言う目にさらされることもあるだろう。だがそんな目に合っても信念は曲げてはいけない。それは自身の思いを汚すことだしデッキに失礼だからだ。中途半端にやめれば一緒にデッキを考えてくれた友達や、始めようとする人々の気持ちを踏みにじることになるだろう。


 これは何もカードゲームに限った話ではない。世の中そういうものだ。


 「今のお前はどうなんだ?どうした?思考を放棄しているのか。抗い続けろよ。それが世界を変えようとする者の務めだろうが!」

 「…」


 俺はフィルを突き飛ばす。だがこれはあくまで軽くなのでダメージにならない。するとフィルは笑った


 「ふふふ、バカめ。隙を見せたな!!」


 そう言ったフィルの周りには一枚のカード。…どうやら演唱を行っていたらしい。


 「クラッシュオブフレイム!」

 「変転する力場」


 だがその攻撃は俺によって氷に変換され止まる


 「な!」

 「今の不意打ちはなかなか良かったよ。だが、しかし、まるで全然!この俺を倒すには程遠いんだよねぇ!」

 「槍のはずじゃ…」

 「ハッタリだよ。そう見せてただけだ」

 「そんな方法に私が!!」


 憤るフィルにさらに近づく。もはやお互いに手札はゼロだ。ここからはどうなるかわからない。


 「私は私は負けるわけにはいかないんだ。迅でもないお前なんかに!!」

 「そう思うならそれにふさわしいものを見せてみろ!!」

 「うおぉおお!!」


 フィルのパンチを俺は躱す、防ぐ、受け止める。フィルは何度も殴るが俺に当てることができない。現実では不可能だが、VRならば補正がかかるためVRチルドレンの攻撃でもやろうと思えば受け止められる…結構きつめだし、痛いが。VRチルドレンはダブル補正状態だから厄介だ。


 「なぜだ!なぜ!当たらない!!」

 「さあな、良く考えてみろよ!」


 そして何度か殴ったあと、ついにフィルは地面に手を着いた。


 「くっそ…なんだよこれ!なんなんだよ!!」

 「世の中、勝ち続けられることは少ない…実際にはどんな時も自分よりもっと大きなもので踏みづぶされる…。それでも何かを訴えたいならそれすらも乗り越えていかなければいけないんだ」

 「…」

 「悩み、考え、協力し、学び、挑戦し、行動し、あらゆる事柄を使わなければ倒せるものも倒せない。ホラ、俺は倒せる相手だぞ?こんな段階で躓いて、そんなんでVRの技術を手に入れて、その技術を守り戦っていけるのか!?他の企業から!大きな社会のうねりから!!」

 「…もういい、リタイアする。別にここで勝てなくても別の場所で勝てばいいんだ。陣取りデュエルで勝てれば同じ点数に持ち込める。最終結果で勝てばいい」


 「はあ」


 俺はそこでため息を付いた。


 「ま、こんなところでいいかね。…残念だよ」


 俺は失望の目をしたまま、フィルに双剣槍を突き刺した


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過去作紹介

結城中学ロボ部!!
学園×スポーツ×ロボット×VRMMO! 仮想現実の世界で巻き起こる少年達の熱き戦い!

おすすめ短編集
『ハーレムなんて絶対いやだ!』や『プロ・ゲーマー ノリ』などがあります
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