イベント -秘策-
僕は今、フィールドに立っていた。あたりを見回してその大きさを確認する。そこまで大きくない。大きさで言えばスマッシュデュエルで使用したフィールドと同じくらいだ。
僕はフィールドの端に行きそこを触る。何もない空間に障壁があることを確認した。
(スマッシュデュエルではフィールド外に出て落ちたら負けだったけど、このカウンターデュエルでは不可視の壁によって通れないようになっていてその心配はないみたいだ)
一通り確認し終わったあとレイサンダーの前に立つ。
『では皆さんカードを引いてください』
「「デッキオープン」」
その言葉と共にお互いに手札を展開させる。僕は自分の手札を確認した。
<C-風影蜂…風と影の力を持った蜂。針で突き刺して攻撃する。蜂蜜とれるかな?>
<C-風影猫…風と影の力を持った大きな猫。ネコ科は強いんだぞガオー>
<I-風切の弓…風を纏った矢を放つ弓。弾数は5。風を切るってどんだけ速いんだ?>
<A-トップストリーム…勢いよくジャンプすることでジャンプに風の力を加え高く飛び出す技。ハイジャンプ!!>
<M-キャスリングチェンジ…モンスターと自分の居場所を入れ替える魔法。しかしどういう原理で生まれたものなのだろうか>
現在、僕のデッキは対レイサンダー用にモンスターを増やし、陣形を阻害する魔法を多めに組み込んである。そして僕の秘策があればいくらレイサンダーが相手でも勝てる見込みがあるはずだ。
そう考えたところで実況の声が聞こえた。
『全員の手札が展開されましたではカウントいたします。3…2…1…スタート!!』
実況のその掛け声と共に試合が始まった。
先に動き出したのは僕だ。僕はレイサンダーに駆け寄っていく。先手必勝。相手がモンスターを召喚して完全空間支配を始める前に一撃を与える!!
だが、僕がそう考えることは予想出来ていたのだろう。レイサンダーは逆に開始と共に後ろに飛び退いで時間を稼ごうと動き出していた。
「ふっ!!」
僕は躊躇いもせずに初手で二対のダガーの内、一本を投げた。レイサンダーはいきなり自身の武器の一つを投げてきた僕の行動に驚く。
「うっそ!投げてくるの!!」
ダガーを防ぐために無理な姿勢で剣玉を扱う。ダガーを何とか弾き飛ばしたもののその態勢は崩れた。
「今だ…!!風影蜂!!」
「やるね…だけど!来い囁く妖精ティファ―、ミフル!!」
態勢を崩しながらもレイサンダーは自身のモンスターを呼ぶ、だがその間に風影蜂と僕が近づく。レイサンダーのデッキ[囁き合う妖精]の弱点はその攻撃力のなさと回避を除いた単純な防御力の弱さだ。近づいてもレイサンダーは僕に反撃することもできないし、さらに回避を前提にした戦術ではこちらの攻撃を防ぐことはできない。近寄り確実に当てる場所に行ければ…
(ダメージを与えられる!!)
ティファ―とミフルが飛び立っていく中、僕と風影蜂はレイサンダーの懐に入り込んだ。
「これはちょっと…」
「そこだやれ風影蜂!!」
「…まずいかも?」
風影蜂の一撃は剣玉の持ち手の方で防がれる。そしてレイサンダ―は風影蜂ごと薙ぎ払うように振りながら玉の部分を飛ばして僕をけん制してきた。
「この程度じゃ俺にダメージは与えられないよ!!」
僕が牽制によって立ち止まったことを確認したレイサンダーはそう言う。僕はふっと笑った。
「それはどうかな?発動キャスリングチェンジ!!」
「なに!?」
僕は風影蜂と自身の位置を入れ替える。レイサンダーの目の前に移動した僕は剣玉を手で押さえダガーでレイサンダーを切り付けた。
「ぐぅ…これはやられた!!」
至近距離で攻撃を受けたレイサンダーは躱し切れずにその一太刀を受ける。レイサンダーのカウンターが一溜まった。
それと同時に会場から歓声が沸く。無名の新人がいきなりレギオンリーダークラスに一撃を与えた賞賛の声が聞こえる。
僕はレイサンダーからの攻撃を警戒し、一歩後ろに飛び退いた。同時にレイサンダーも後ろに飛び退き距離を確保する。
「フラッグデュエルでの戦いを見られていたか?完全に対策しているよね?」
「…[囁き合う妖精]はモンスターと陣形アビリティを使ったデッキで持久戦向きのデッキです。なのでまずは速攻で一点貰うつもりでした」
「ふふふ、なかなかいい着眼点だ。楽しくなってきたよ。その通り俺のデッキは尻上がりで初期は弱い…でも既にモンスターは出た。ここからが本番だよ?」
「それくらいわかってますよ!でも、それでも、勝つのは僕だ!!」
そうレイサンダーが言う通り本番はここからだ。僕は残ったダガーを握りしめレイサンダーをしっかりと見つめた…
☆☆☆
俺は自身の手札を確認した。
<A-突の陣…縦一列に三体のプレイヤー、或いはプレイヤーのモンスターを並べることで発動。光を身に纏い相手に突撃できる。…まっすぐ進んでいきます!>
<A-三角の陣…相手を三角形の中に囲むことで発動できる。囲んだ空間を光で満たし攻撃する。トライアングルアタcry>
<S-囁き合う妖精王ルル…囁き合う妖精たちの女王。その声は威力は無いものの相手を吹き飛ばす力を持つ。妖精の王ってなんか女性のイメージ>
(…正直いきなりダメージを喰らうとは思ってなかったな~ワクワクしてきたよ。相手が自身の予測を上回る行動を取るほどデュエルは面白くなる!!相手が全力で来ているんだこっちも答えないとね)
俺はそう考え、そして視線をティファ―とミフルに向けた。
「こっちはオッケーよ!」
「こっちも大丈夫だよ!」
それを見て俺は頷いた。
「よし!じゃあやるとしますか!いくよセナ君!!セナとレイサンダーでは7と0、7ほどの違いがあるのだ!!」
「大した違い無いじゃないですか!!」
俺の言葉にセナ君はツッコミを行う。だがこちらの警戒を怠っていない。俺は現在の互いの位置を見極めそして打つべき手を考えた。
(三角の陣を張るには立ち位置が遠すぎる。まずは突の陣…そして手札を補充すべきか)
「縦!」
俺のその言葉と共に妖精たちが一列に並ぶ。並びに気付いたセナ君は自身の位置を横にずらす。
「発動!突の陣!!」
光に包まれセナ君の方へと突撃する。素早いスピード…セナ君は必死の思いで横に飛び出し躱した。だが俺の狙いはセナ君ではない。
突撃した俺はそのまま進み、セナ君の後ろに居た風影蜂を貫く。
「しまった!!」
気づいた時には既に遅い。蜂はダメージを受け消滅した。そして突撃後の距離を利用して俺は演唱を行う。
『さあ始めよう!!新たな楽しみを生み出す…』
演唱に気付いたセナ君はそれを止めるために倒れていた体を起き上がらせ走り出した。だが突の陣で開いた距離を瞬時に埋めることはできない。
「風切の弓!!」
『アビリティよ!!現れろ!!俺のドロー!!』
それに気づいたセナ君は弓を生み出しこちらを言ってくるがそれが命中するより速く演唱が終わる。
<分路の陣…道の分路のように前列の左右に二人、後列の真ん中に一人置く。右か左かどちらかの道に対して光の攻撃が行われる。どちらにしようかな?>
俺はカードを確認し、矢を剣玉で払う。そしてセナ君の方へと向かっていった。セナ君は対抗するために連続で矢を放つが俺はその機動を読み切り、回避を行いながら走りぬいていく
「止められない…なら!!風影猫!!」
「モンスターで足止めか!?同じ手は二度は喰らわない!!分路の陣!!」
出てきた瞬間、俺は猫のモンスターを陣形アビリティによって潰す。
「残しておいても邪魔になるだけだからな!」
「く!」
そして近づき剣玉でセナ君を攻撃する。セナ君はダガーでそれを受ける。つばぜり合いの形になる俺達。だが既に俺の布石は動いている。ティファ―とミフルが動き、三角形が完成…
「…!!」
する寸前、つばぜり合いを止めたセナ君はこちらに背を向け走り出した。
「な!?…だけど背後を見せるなんてね!!」
驚いた俺は一瞬茫然としてしまう。だがすぐに意識を取り戻し背を向けたならと後ろから攻撃を仕掛けた。
「終わりだ!!」
そして振るわれた剣玉は…後ろを見ることも無く出されたセナ君のダガーに防がれた。
「な…に…?」
(見えているはずはない!どうやって攻撃を…)
思考している間に三角の範囲から抜け出したセナ君はその顔を俺に見せた、そしてその顔を見た俺は理解する。
「目の焦点が合っていない…そうか!そういうことか!!君がライムが言っていたタクティカルコントローラー使いの子か!!鷹の目視点を使っているんだな!!!」
その俺の質問にセナ君は答える。
「そうだ!こんな機能を使うのは卑怯かもしれない…でも僕は負けるわけにはいかない!!そこに手があるのなら僕は使う!!これが僕の秘策!!完全空間支配を打ち崩す、僕の完全空間支配だ!!レイサンダー!!ここは僕の領域だ!!」
その言葉に俺は思わず笑った。
「ははは、まさかそんな方法で俺の完全空間支配が突破されるなんてな!ワクワクしてきたぜ!卑怯何て言うものか。それはVRに入れない君の正当なる力だよ。そしてその力を使い、全力で挑んでくる君に敬意を表して俺も俺の秘策を見せてよう!!」
「何を…?」
疑問の声をあげるセナ君の前で俺は手札一枚をコストに送る。
「俺は手札一枚をコストに払い召喚を行う!囁き合う妖精たちの王!今ここに現れその支配者たる王声を聞かせよ!!究極召喚!!囁き合う妖精王ルル!!」
そして神々しい妖精の女王が出現する。
「さあ、本当の本番はこれからだよセナ君!」




