オープニングイベント -第二ラウンド-
ユーリはバハムートが現れてもさほど動揺していなかった。何よりただのモンスターだと思ったし、あれぐらいのモンスターなら他のVRMMOで倒している。最強を目指す自分があれにやられるとは思えなかった。それよりもユーリはバハムート召喚のために手札全てを捨てた彼に少し失望していた。
(手札はもうない後一発当てれば私の勝ち)
どんな手が来るかと所詮この程度かと。期待を裏切られたような気持ちになりながら彼へと向かう。
木々を盾に咆哮を受け止め。草の中に隠れるようにバハムートへと近づいていく。
「バハムート空に向かってアルカナフレア!!」
(空に向かって攻撃?)
ユーリが不思議に思っていると。バハムートは命令通り空に向かって太陽のように光り輝く火球を放った。
爆風で辺りが吹き飛ばされる。
その爆風によって草が強制的に地へと叩きつけられ、ユーリはその姿をバハムートの前にさらすこととなった。
ユーリは火球の明るさでやられた目を庇いながらバハムートから距離を取る。
そしてユーリがもと居た位置をバハムートの拳が抉った。
(思ったより速い!!)
それを見てユーリはバハムートへの警戒心を上げた。
大きく弧を描くようにしてバハムートへと近づく。
バハムートは巨体故に体の細かい移動に苦戦しながらもユーリへと視線を向ける。
ユーリは木の枝に飛び乗り反発を利用して勢いよくバハムートへと飛び掛かる。そして拳を槍を使って強引にかわしバハムートの上へと飛び乗った。そしてバハムートの背に乗っている男に向かって進んでいく。
…そうはなからユーリはバハムートと戦うつもりはなかったのだ。
(あいつを倒せばそれで終わり!!)
こちら側に来ることを予想してなかったのか彼は慌てた様子で逃げそびねた。ユーリはつまらないような顔をしながら槍で彼を突き刺す
(所詮こんなもんか)
「これで終わりだね」
ユーリのその言葉に…
「それはどうかな?」
後ろから彼の声がした。
「なっ!!」
ユーリは振り返るが…
剣を躱すことが出来ず。二枚目の手札が散った。
彼女の目の前には五枚の手札を持った男が存在し、こちらを見下ろしていた…。
☆☆☆
(やっと二枚目か…)
俺は心の中で悪態をついた。ここまで布石を引いてやっと二枚。どれだけ強いんだと呆れそうになった。
俺の目の前でユーリはあほらしいほど口をポカンと開け何が起きているのか全く理解できないような顔をしていた。
…それもそうだろうここまでのすべてはエースモンスターすら利用した俺のコンボ。…そもそもカードゲームに置いてエースモンスターは出せば終わるといったカードではない。それを利用してどのように勝ち筋に道を繋げるかっといったことが重要なカードなのだ。
俺は彼女を見下ろす。
「な、なんで…」
俺の完全復活した手札を恐れいているのか、まんまとはめられた恥ずかしさかプルプルと震えながら彼女は口にする。
「理由は単純。お前は俺の手の中で踊っていただけだって話だ。デュエリストの頭脳なめんなよ」
「…」
よほどショックなのかいつもの掛け合いすらしない彼女。俺はゆっくりと煽るように出来事を告げる。
「ふ、エースモンスターだして直接戦闘?後はお任せ?俺がそんなことするはずないだろう?全てはドラグーンを呼び出した時から始まってたのさ」
俺はドラグーンを呼び出したあの時同時にモンタージュミストを俺の姿を模倣して呼び出した。ユーリは空を飛ぶドラグーンと飛び乗る俺に気を取られ気づかなかったがミストはそのままこっそりと森の中で隠れたのだ。…もちろんこれは誰にでも使える手ではない。彼女がしっかりとカードを使っていれば発見できただろう。だが彼女はまだカードを使わなかった。その為気付けなかった。
その為、ドラグーンが消え地に落ちたときの俺の手札の数が三枚ではなく二枚になっていたのだ。
その後、俺は手札を全て消費することであえて自分の手はもうないと思わせた。そう、エースモンスターを出すために手札を消費したのではなく、手札を消費するためにエースモンスターを出したのだ。そして手札を消費することにはもう一つ意味があったそれはモンタージュミストは手札まで再現できないためあっさりと見分けが付くのを防ぐためだ。
俺はバハムートに空へとアルカナフレアを放つ用命令し、爆風の光の中でモンタージュミストと入れ替わった。正直ばれるかひやひやしていたが自身を見つけるためだと誤解したユーリは幸いにも俺に気付かなかった。
その後は隠れながら、手札を全て回復させ。思い通りに動くユーリを見ながら最高のタイミングで姿を現したってわけだ。
すべての事情を説明した後、ユーリは下を向いたまま押し黙ってしまった。
大丈夫かなっと覗き見るように見ると。彼女は何かを吹っ切ったように顔を上げた。
「して…やられた」
「どうだこれがカードの効果を熟知したデュエリストの力だ」
「…そうだね、カードってのがどれだけ大切か理解したよ…勝負は私の負けだ…」
「ん??」
「だけど、戦いには負けない!!」
そう言ってユーリは光の板を…カードを手に持つ。
「さっきのあなたのように言うなら…これからが第三ラウンドの始まり!」
使わない人のユーリがカードを使った初めての瞬間だった…。