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イベント -地と炎-

 地勇の手の中に一つのスタンプが現れる。そしてそれをこちらに向けてきた。


 (演唱する時間はくれないってか!)


 そしてそれを振ると同時に俺は飛び退いた。飛び退いた場所が何かに押しつぶされたような形になるのを確認する。


 (スタンプ…?効果は何だ?碌なものじゃなさそうだがな…当たらなければ問題は無いか?)


 フレイムタンに指令を出し共に地勇に向かう。スタンプによる攻撃は発動範囲こそ広い物の攻撃範囲は小さく、そして速度も遅いため難なく躱して進んでいく。その中で俺は違和感を抱き始めた。


 (地勇…トウドウは守勢に秀でたプレイヤーだ、もちろんデッキもその構成のはず…それにしては守りが緩い?何か企んでるのか?それとも手札が事故っているのか…)


 俺は少し攻撃の手を緩めた、地勇の行動から罠があるのではないかと自然と慎重になってしまっていたのだ。…それは自身の持つ強力な攻撃の特徴を削ってしまうというミスでもあった。


 慎重になる余り、カードを使わなかった俺は、念のためにフレイムタンに先制攻撃をさせる、そして俺は一歩離れた場所で警戒しながら自身も攻撃に参加する準備をする。


 フレイムタンの手刀はそれを防ごうとした、地勇の大型の斧をバターのように容易く切り裂いた。


 「!?」


 フレイムタンの実体がないと言っても明らかに切れ味が良さすぎる。俺がそれに気づいた時には既に遅く、自身が攻め込んでいないためにそれに対応できなかった。


 地勇の一部が泥となりフレイムタンを捕える、とらえられたフレイムタンは泥によって雁字搦めにされた。


 「っち!」


 俺は自身の打つ手が一枚減ったことを確信する。捕えられたフレイムタンはスタンプによってさらに地面に縫い付けられた。そして泥の中から地勇が二体現れる。


 (本物は泥の中に隠れて、フレイムタンを処理して人形と共に出てきたのか!)


 「カカカ!さてどちらが本物かのう?」


 (ミスった。多少強引にでも攻めるべきだった。罠を警戒するばかりに手段を一体失ってしまった…)


 二体の地勇がこちらに向かって突撃してくる。俺はそのどちらに対応するかを悩んだ。


 (二体とも見分けがつかない…さっきの様子を見ると地形効果で強化された人形は一撃ではよほどじゃない限り倒せないし、捕まったら詰む…カードを使うか?)


 カードを使えば流れを変えることができる…だがそれではこの状況は変えられないという気持ちがある。


 (デッキを作る以上、無駄なカード何て存在しない。一見、無関係でばらばらに引いたカードでも見えない繋がりで…戦略で結びついている。地勇の戦略は守りに秀でている。ここで焦ってカードを使うのは相手の目論見通りかもしれない…)


 今、発動しているカードは恐らく相手を地面に縫い付ける効果を持ったスタンプと泥人形のモンスター。泥の人形はフレイムタンをスタンプで縫い付けたからこちらに向けてきたのだろう。


 二枚のカードを使い、全てを吹き飛ばせば恐らく流れを変えられる。だけど相手に防がれる可能性もあるし、相手に手も残されている。手段を失えば地勇の防御を突破するのは難しくなる…。


 (しっかりとしたデッキほどその場しのぎのカードでは覆しにくいんだよな~リカバリーもしやすいし防ぎやすい。何をドローしても自身の戦略の中で戦えるからバランスも取れてる…本当に厄介だぜ…どちらにしてもこの段階でのカードの発動はなしだ。効果時間はわからないがせめて人形が終わるまでは耐え忍ばないと!!)


 「んじゃ!右で!!」


 俺はそう言い右の地勇に飛び掛かった。俺の双剣槍(ダブルセイバー)が地勇に切りかかる、そしてそれはしっかりと大斧に防がれた。


 「あたりだな!」

 「よし!」

 「あたりだが…はずれだった!」

 「!?」


 その瞬間、体が縫い付けられる気配がした、驚いて振り向くと外れのはずの人形がスタンプを持っている。


 「自らを囮に…だけど無駄死には!」


 俺は瞬時に魔王剣を槍形態に変更させる。どちらにしろこれを処理しなければカードが使えない。俺は魔王剣を人形に向かって投げた。魔王剣は一撃でスタンプを破壊し、自身の効果が生んだ二撃目が人形を破壊した。


 「運がいいな。だがそれもこれで終わりだ!!」


 地勇の大斧から強力な空気の波と同時に斧が振られる。手札を一枚失うと共に俺はそれによって吹き飛ばされ、さらに空気の波によってさらに吹き飛ばされることとなった。


 (まっず…!!)


 勢いよく吹き飛ばされ、受け身を取りながら地面にぶつかる、だが泥で滑り水切りの要領で吹き飛ばされ続ける俺は咄嗟に地面に手を突いた、いくらダメージ補正があるといえ、自身の体重すら吹き飛ばす勢いを片手の指で押さえることは酷い痛みを伴う。


 「いで!ででで!!」


 それでも手を離さず手でブレーキをかけ続け、場外に出されるもののなんとか俺は崖に捕まる。もう落ちれば負ける状況だ。


 「ぐぁあ…手が…。どうしてくれるんだ明日からカード引けなくなったら!!」

 「カカカ!今、心配することはそれか?」


 そう言いながらもやってきた地勇は斧を俺に向かって向け俺を見下ろす。


 「詰み…だな。カカカ!今回は自分の勝ちだ!」

 「はあ、詰みだって?冗談いうなよ。こんな状況、キャンディ舐めながら打破できる。まだ終わってないだろうが!こっから逆転すんだよ!!」


 このまま負けるわけにはいかない。そんな俺の言葉に地勇は憐れみを持った目を向けてきた。


 「ふむ…ブレイブカードに関することと聞いただけで具体的にお前たちが何を巡って争っているのかは知らん。ただ面白そうだから参加しただけだしな。…でもいいんじゃないか?まだ試合はある。失敗は成功の母。失敗しても次、頑張ればいい。よくそう言うだろ。ここでもう大人しく負ければいいじゃないか。そこまで意地を張るのは無様だぞ?」


 地勇の心からの一言だった。…確かにそうだろう。勝負にこだわってほぼ負けなこの状態になっても吠え続ける…まるで無様な負け犬だ。


 …だがそれでも…


 「それでもな、俺は負けるわけにはいかねーんだよ!失敗は成功の母?失敗しても次頑張ればいい?…ふざけんじゃねーよ!それは失敗してもいい立場の人間へ向けた言葉だ!!」

 「ん?」


 そうさ、現実には失敗できないことだって沢山ある。失敗しても大丈夫なんて言い張れるのはその環境があるからだ。そしてそれが何のためにあるか…


 「失敗して学ぶ…それは子供の特権さ!まだ若いから可能性があるからこそ俺達(大人達)はそれに期待を希望を持って場を用意するんだろうが!!それを自分のために使うなんてそんなことできるか!!」


 今回の戦いにユーリ達を巻き込んだのは俺と店長だ。こんな戦いで失敗による深い傷をつけさせる必要はない。だからこそ彼女たちが負けてもいいようにバトルロワイアルを取り、こうして戦っているのだ。


 「だからこそ俺は負けられない!例え地べたを這いつくばっててでも勝利を使む!!…あいつ等にその場を用意させるためにな!!」

 「そうか…。なら是非もなしってやつだな!!」


 そう言って地勇は大斧を振り下ろした。だがそれが当たるより速く俺は崖に捕まっていた手を離す。


 「な!?」


 それに驚いたのは地勇だ。それもそうだろう。負けるわけにはいかないと言っていた男が自ら手を離したのだから。だが俺は負けるつもりはない。


 「年末落下にはまだ早いが…」


 特別な力があるわけじゃない。空を飛ぶバイクが助けに来ているわけでもない。相棒として空を飛べるロボットが居るわけでもない。どこにでもいる凡人だ、凡骨だ。


 だけど俺にはこれが…


 「カードがある!!来い破滅的な爆発よ!我が希望を繋げ!!スーパーノバ・エクスプロージョン!!!!」


 下向きに放った魔法が膨大な爆発を起こす、発動者自身すらを巻き込む特性を持って俺は爆風によって高く飛ばされた。


 「ほう!」

 「決める!!」


 空へと高く舞った俺は一回転し、切り付けるように落ちる。そして放たれた斬撃は…


 泥の壁に止められた。


 「くっ!!」

 「カカカ、甘いわ。少年よ、これが絶望だ!ターンエンドってな!!」


 双剣槍(ダブルセイバー)は泥に深く刺さり抜けられなくなっていた。恐らく爆発に紛れてトラップをセットしていたのだろう。トラップは魔法と違い、効果終了後すぐに消えずその場に残る性質のあるものが多い。攻撃手段の無くなった状況。まさにターンエンドな状況だ、だが


 「俺はまだ戦える。戦い続ける限り絶望はしない!!」

 「戯言は!これで終わりだ!!」


 地勇の大斧が俺を殴りつける。吹き飛ばされるほどの強力な一撃、だが俺は吹き飛ばされずそこに留まった。


 「なぜだ!!」


 ありえない事態に地勇が思わず叫ぶ。俺はにやりと笑って武器を握っていない方の腕を見せた。


 「泥んこ遊びは卒業したはずだったんだけどな~まだだったみたいだわ」

 「…!!わざと手を…泥の壁に突っ込んだというのか!?」


 そう俺の手は泥の壁に突き刺さっていた。この泥の壁は双剣槍(ダブルセイバー)を抜けないように押しとどめた。ならば人の体でもそれが可能なのではないかと考えたのだ。


 そして事態に気付いた地勇が笑う。


 「カカカ!ようやるわい。だがそれをすることの意味はわかっているのだろうな?」

 「へっ?」

 「破壊はできない…だがダメージは受けてもらうぞ!!」


 そして地勇は再び大斧を振りかざす。そしてそれが意味することは一つだった。


 「ちょ、っちょっとまって!!」


 逃げようとするが手が嵌り抜け出せない。


 「ふん!!」

 「うぎゃ!」


 そして衝撃がまた俺を襲う。ダメージ補正がかかるとはいえ、大斧を至近距離でジャストミートさせられているのだ並外れた痛みではない。


 「ふん!ふん!ふん!!ふん!!!ふーん!!!!!」


 (うそ!?まだ!?ちょ!?ぐ!?…)


 地勇の容赦ない攻撃が降り注ぐ、絶え間ない攻撃に意識が落ちそうだ。


 (ぐ…だけどここで見誤るわけにはいかない。無意味に殴り続けているように見えるが地勇には目的があることが明白だ。地勇はタイミングを持っている。俺を飛ばすタイミングを!!)


 この泥の壁は地勇が出現させた壁だ。だからいつのタイミングでも消せる。なぜそれをしないのか、俺を殴るためかと言われればそれは違う。地勇はタイミングを狙っているのだ。俺が意識を緩めるタイミングを。ここで壁を消せば、動けるようになった俺は確実に斧を避け逃げる。だからこそ俺がこの攻撃に耐え兼ね、油断したその瞬間に壁をとき、確実に吹き飛ばし倒す算段なのだろう。


 (だが地勇、それは俺にとってチャンスでもある。目的を持った一撃は読みやすい…吹き飛ばす方向が崖の方向に限られる以上、その攻撃をした瞬間が俺の逃走のタイミングだ!)


 ついにしびれを切らした地勇が崖に向かって振り払う方向で斧を振った。


 (ここだ!!)


 俺は壁が解かれた瞬間、足元に滑り込み、泥の滑りを利用して仰向けに斧の増したを滑り抜けた。そして逃げるついでと双剣槍(ダブルセイバー)を使い泥を救い上げ、地勇の目を潰す。


 「っち!」


 『大いなる魔の力よ。我が名においてそれを解放せよ。俺のターンドロー!!』


 そして時間を手に入れた俺は演唱を行った。


 <M-黒炎付与…手に持った武器。召喚したモンスターに黒炎属性を付与する魔法。黒炎は発動者が指示するか、指定時間経つまで消えない。フィールドに燃え移った黒炎に触れれば発動者もダメージを受ける。中二が出たぞ!!捕まえろ!!>


 出現したカードを見て思わず心の中で舌打ちをする。だがそれでもそれを発動させ、走り出した。双剣槍(ダブルセイバー)に黒い炎が宿る俺はそれを地面の方へと向けながら走り、振り上げるようにして地勇に切りかかった。


 目についた泥を拭った地勇がこちらの動きに気付き、大斧を振り下ろす。そして俺の双剣槍(ダブルセイバー)と激しくぶつかった。そしてぶつかり合った大斧を伝い地勇に黒炎が移る。


 「くぅ…熱い!!だが土壇場で引いたこのカードどうやらはずれのようだな!!今の状況では何の意味も無いない!!」

 「そんなことぐらいわかってんだよ!!」


 黒炎の付与はダメージを与えることに適している。だが地勇の手札は既にない。そんな状況ではただの付与で吹き飛ばす力のないカードは何の意味も持たないということは当然わかっている。だが…無駄ではないのだ。


 大斧の勢いを殺し切れず、双剣槍(ダブルセイバー)を押し切られる。だが俺はその勢いを利用し回転をするように上から再び切り付ける。


 「もう一発!!」

 「いくらやったところで…ふん!!」


 地勇は大斧を無理やり引き換えし、双剣槍(ダブルセイバー)にぶつける。その状態でお互いにつばぜり合いになる。


 「「おおおお!!」」


 上方向からの圧力に押され、泥によって地勇は足を少し滑らせる。斜め前の方向に着陸した俺は振り返りざま、その隙を狙う。地勇は自身の腕でそれを受ける。


 「だから無駄だと…く!?」


 俺はすぐさま双剣槍(ダブルセイバー)を引き、ステップしながら地勇の後ろに回り込みその勢いで双剣槍(ダブルセイバー)を振るう。翻弄される地勇。そしてその動きに地勇は違和感を覚えた。


 「なぜ泥の上でそこまで機敏に動ける…?」


 地勇は初めて自身の周りの泥を見た。そして気付く。地面には黒炎が所々に燃え移り、泥をその炎によって水分を飛ばし固めていたのだ。…すでにフィールドは泥ではなくなっていた。


 「先ほどまで動き回ったのは!剣を下に向けて走ったのは!これが目的か!!」


 武器同士の戦いで地勇が優勢だったのはフィールドが泥で埋め尽くされていたからだ、動けば動くほど囚われる泥は俺のような動き回るタイプの攻撃を抑制し、そして地勇のように重くどっしり構えるものに力を与える…俺はそれを崩したのだ。


 「悪いな!お前にとってははずれでも俺は考え抜いて意味を見出す!!」


 そして地勇の正面…地勇が崖を背にする場所に立ち思いっきり双剣槍(ダブルセイバー)を突き出す。足場を取られた地勇は防ぐことができず、その攻撃は地勇の腹を抉った。


 「ぐぅうう!!」


 だが地勇もただではやられなかった。吹き飛ばされながらも大斧を振り回すことで遠心力を付け、勢いを殺した。そしてそのまま俺に向かって斧を投げる


 「なに!?…がぁあ!」


 その攻撃を全力の突撃を終えた直後の俺は防ぐことができなかった。大斧が当たり共に吹き飛ばされる。地面に何度も体を打ち付けながら斧を振り払い起き上がった俺が見たのは崖際ギリギリで仁王立ちする地勇の姿だった。


 (何度だって!!這いつくばってでも勝利は掴む!!)


 『時空を越え極めし一撃!その力解き放ち!群がる敵を撃て!!俺のターンドロー!!』

 『策謀巡らし!喜劇を作る!!アヤカシの力!!今こそ、この場に見せよ!!ドロー!!』


 <A-エボルボムシュート…手に勢いを増す爆発する炎球を出現させる。貯めれば貯めるほど威力を増すが、ためすぎると自爆する。ボム投げはタイミングが命!!>


 演唱し、そしてカードを発動しながら俺は走る、地勇までの距離はあとわずか、俺の右手には光り輝く炎球が存在感を増しながら輝いていた。


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結城中学ロボ部!!
学園×スポーツ×ロボット×VRMMO! 仮想現実の世界で巻き起こる少年達の熱き戦い!

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『ハーレムなんて絶対いやだ!』や『プロ・ゲーマー ノリ』などがあります
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