イベント -刀剣解放-
「あ~もう何やってるんだよ!?わざわざ敵に向かっていくなんて馬鹿じゃないのかアイツ!!」
「うーん。気持ちはわかるからな~。もともと利害の一致で居るだけだし多少はしょうがないんじゃないか?」
観戦用の個室で俺はマサキと会話をする。ここはレギオンスワローズネストとそれに関連するレギオンが休憩場に使えるようにとフィルが用意した部屋だ。
現在、この部屋にはマサキ、レン、水精の三人が居る。他のものたちは外の観戦エリアで見ているか、それとも仕合に出ているか、或いは用事があるらしい。
ちなみにフィルとヨコザキは「まだ私が出るべき時ではない」っと言って別の商談に行ってしまった。勝っておけ、なんて言われたがなんかもうチームしてはむちゃくちゃだ。
「そうは言うけどさレン。…はぁ。まあいっか結局勝てばいいんだ。楓も奥の手切ったみたいだし」
俺は手元の端末で楓の手札を表示させる。楓のデッキ[一刀両断村雨]は多くのアビリティとそして刀と言われるアイテムカードが入っているデッキだ。
<I-妖刀風切…風を切ったと言われる妖刀、刀で切った位置に少しだけ相手を引き寄せる。刀剣解放すると引き寄せる力が上がる。刀剣解放時、召喚時間は2倍のスピードで減る。これでお掃除楽々!>
<I-真打流星…隕鉄を用い打った刀。打ち合った相手を吹き飛ばす効果を持つ。刀剣解放をすると吹き飛ばす威力が上がる。刀剣解放時、召喚時間は2倍のスピードで減る。ローグゲームでありそうなやつです。>
<A-岩砕き…勢いよく振りおろし岩を砕くかのように敵を粉砕する技。敵の防御を貫通する効果を持つ。固い相手ならこれ一本!!>
「楓の持つ刀には特殊な効果がある。それは刀剣解放という効果だ。それを使うことで召喚時間を犠牲に能力を向上させることができる…」
端末を見ていた俺に解説をするためか、それまで壁にもたれ掛り、腕を組んで目をつむっていた水精は重々しく言葉を発する。それを見てマサキは何も考えていない顔で言った。
「いや、知ってるし」
…とりあえず俺はマサキの頭を無言で叩いた。マサキが非難の目線を向けてくるがそれを無視する。そして水精の方を見ると水精はこちらに顔を見せないようにしながら
「なら…いい」
そう言って部屋から出ていった。俺は手を頭に当て相棒の空気の読めなさを嘆いた。
☆☆☆
「くっ!!」
私は咄嗟に後ろに飛び退いた。十分な距離を保つために後ろへとのがれる。だがそれはこの多人数が戦う戦場においては悪手だった。
「この瞬間を待っていたで!!」
そう言いながら手裏剣を構えたねこねこが現れる。彼女は手裏剣を飛ばすと刀へと当て、刀を吹き飛ばした。
「火塵が!?」
そして棒を楓へと向ける。
「もらったぁああああ!!」
「甘い妖刀風切、刀剣解放!!」
楓はねこねこと自分の間の空間を切る。そして後ろに下がった。すると楓に切られたことによって現れた傷によって私とねこねこは引きよさられた。
「しもうた!?」
「こっちも!?」
「二人いっぺんに!」
そして三本目の刀を出すとそれも刀剣解放して構えた。
「流星…!!」
「ち、ライオピア―!!チェンジリンク!!王の…」
「やるしかない…フリーズ…」
「「「バースト!!(牙!!)(岩砕き!!)」」」
近くに寄せられた三人、決着をつけるためにそれぞれがそれぞれの最強の攻撃を畳み込む。
三角形を描くようにぶつかる互いの武器が大きな音を立ててぶつかる。牙から発せられる衝撃波が、流星のように全てを吹き飛ばす岩をも砕く一撃が、氷の刃が互いにぶつかりその衝撃が衝撃波を発生させる。
「くぅ…」
「うわ!?」
「む…」
そして三人が同時に吹き飛ばされ、同時にダメージを受ける。
「フラッグが!?」
誰が行ったのだろうか、もしかしたら無意識に私が言ったのかもしれない。衝撃波によって打ち上げられたフラッグは三人の中心…ぶつかり合った位置に舞い上がっていた。
私は吹き飛ばされた勢いを殺さず利用して、近くの通路の壁に着地する。そして体をバネのようにして飛び上がる。
楓は風切で空間を切ることによって自身を吹き飛ばす力を相殺し、カードに向かった。
…そしてねこねこは…
「…残ったのはスネープか…残念やったな~ウチしっかりと利益は回収するたちやねん」
そう言った彼女の手に鞭が握られる。
「やからこれは貰っていくで!!」
そう言ってフラッグをその鞭で掴み、自身の手に取った。私と楓二人が見つめる前でねこねこは消えていく。…そうカウントがゼロとなり、勝者としてフィールドから出されようとしているのだ。
「そんな…」
「しまった…」
「今回はウチの勝ちやじゃあな!!」
そうしてねこねこは消えた。
「…あっちゃー、負けちゃったか。でも、まあいいや、さあ速く続きを始めようか。まだまだ斬り足りないよ!…あれ?」
そう言った楓は自身が薄くなっていっていることに気付いたようだ。そして私も自身が薄くなっていることに気付く。そしてアナウンスが流れた。
『どうも実況のニールです!!現在全てのフラッグがフィールドから消失しました。これにてフラッグデュエル第三回戦を終了いたします!!』
そうか、負けてしまったのか。自分の目じりが少し熱くなっているのを私は感じた。
「あれ?終わり?消えていく!ゲーム終了!?そんなー!?」
そして私たちもフィールドから姿を消した。
☆☆☆
「負けちゃったか、まあいい勝負だったぞ?」
俺は帰ってきたユーリにそう言う。素っ気ない言葉だがこういう時こそシンプルな言葉のほうが良い。飾り立てた言葉とは時折薄っぺらく感じるものだ。
「でも…」
「それが言えれば充分さ」
「え?」
俺の言葉にユーリが意味が分からないという顔をするが言葉を続ける。
「悔しいって思い続けられるならまだ健全だ。まだ可能性があるからこそ人は悔しいって感じるんだからな。だから次は…勝てるとは言わない、だが今よりももっと強くなれるさ。何度だって負けたって悔しいと思い自分を変え続ければいつかは勝てる。カードゲームだってそういう物だろう?…勝負のことは気にするな。負けた分なんかすぐに取り返せる…俺がいるからな!」
そう言って俺は笑い。会場を後にしようとする。
「次の次の仕合だから準備室に行かないといかん。次の第四試合。敵情視察は任せるぜ」
俺はそう言いながら後ろに手を振り、会場を後にした。




