イベント -戦うべき敵-
私がねこねこに追い付いた時、既にねこねこは誰かと戦闘していた。私はその戦闘に参加するタイミングを伺いながら様子を見る。
(ねこねこのフラッグがない…!!あっちのにやられた?あれは確かスワローズネストの…楓!!)
ねこねこと戦っているのは敵である楓だった。このまま楓にフラッグを渡し続け、勝たせるわけにはいかない。
私は通路を蹴り勢いよく飛び出す。そして楓に向かって槍を突き出す。楓は直前まで気付いていなかったのだろうが、ねこねこの目線の動きを追い、こちらの動きに気付き、横にそれるようにして槍を躱す。そしてその勢いを利用し蹴りを放ってくる。私はそれを槍の持ち手の部分で防御した。しかし勢いは殺し切れずにねこねこの方へと飛ばされる。
「こっちくる!?」
驚いたねこねこは攻撃態勢を取りやめ即座に回避行動に移る。ねこねこが飛びのいた場所に私は着地した。
そして立ち上がる。ちょうど私たちは三角形を描くようにそれぞれがそれぞれに対応できる立ち位置に立っていた。
「お、なんか増えたねーどっかで見た顔かな?」
「また面倒くさいのが増えたな~ウチもうこりごりやであんたと戦うの」
「どっちも倒さなきゃいけない相手…葬る!!」
お互いにらみ合いそれぞれの出方を伺う。その中でねこねこは時間をかけることの無意味さを思ったのだろう静寂を破り、楓に向かって飛び出した。その手には一枚の手裏剣が握られている。
「このままじゃ埒が明かん。後のことを考えるのは後になってからや!!」
「来たね!!だけどそれじゃあアタシは斬れないよ!!」
ねこねこは楓に向かって手裏剣を投げる。楓は軌道を呼んでそれを躱した。だが…
「戻れ!!」
その言葉と共にねこねこの手元に手裏剣が戻る。そして再び手裏剣を投げた。
「も、もう戻ってるの!?」
驚いた顔を見せる楓だが、彼女の周りを巡る六枚の光の板を一つ減らし、アビリティを発動させた。
「なら叩っ切る!発動居合一閃!!」
楓は刀に手を当て深く構えると勢いよく刀を引き抜いた。刀から放たれた斬撃が手裏剣へと向かう。それを見たねこねこはにやりと笑った。
「この瞬間を待ってたでー!!戻れイタケン!!」
その言葉と共に手裏剣が消え、再びねこねこの元に戻る。目的対象を失った斬撃は空しく散った。
ねこねこは再び振りかぶり、手裏剣を投げようとする。だがそれより速く動くものが居た…そう私だ。
私は二人の戦いが始まった直後、見つからないように動きながら楓が居る通路の上へと移動していた。楓を上から奇襲するためだ。
私は突撃をする前に自身の手札を確認する。
<M-フリーズバースト…武器の先端から氷の槍を出現させ相手を攻撃する魔法。躱したと思ってもあら不思議!なんか刺さってます>
<M-アイスストーム…氷でできた竜巻。回る回る回る…>
<A-氷刃…武器で切り裂くと氷でできた斬撃を飛ばすアビリティ。氷も尖ると危ないよね。つららとか>
<C-アイスロックタートル…固い氷を背負った亀。甲羅に何かを置くとくっ付きます>
<T-アイスウォール…指定のタイミングで飛び出す氷の壁を設置する。鏡代わりに最適!!>
そしてこの手札で打ている手を考えながら楓に飛び掛かった。
(今度こそもらった!!)
前方の攻撃に気を取られている。今なら確実に当てられる…その筈だった。だがそのもくろみは崩れることになる。
「おい!!後ろ狙われとるで!!」
「おっと、と!!」
その言葉によって軽く後ろを見た楓は私の存在に気づき、再び距離を取る。気付けばねこねこはイタケンの射出を止めていた。
私はねこねこを強く睨み付け詰問する。
「…どういうつもり?」
その言葉にねこねこはやれやれと言った表情を作った。
「どういうつもりって何アホなこと言うとるんや?ウチ等は敵同士やろ?邪魔して当然や」
「でも、今フラッグを持っているのは楓、なら協力してもいいはず」
私は素直に思ったことを話す、最初の時はともかく今回は明確に邪魔された…敵の敵は味方と言うならフラッグを楓から取り返すために協力し合えるはずだ。
…だが、ねこねこは表情に呆れの色を強くさせる。
「あんな…それが間違ってるんやって。今、フラッグを持って困るのはむしろあんたやねん。楓はさっき奪ったばかりでカウントはそれほど行ってない。それとは違ってあんたはもうあと数カウントやろ?取られたら負けでこのフラッグ消えてしまうかもしれん…そういうことや、やからあんたに取ってもウチは完全な敵や」
私はその言葉にハッと気づかされた。確かにそうだ。私は純粋にフラッグを持っているものを敵として見ていたが実際はそうじゃない。カウントが経っているなら…いや、プレイヤー全てが例えフラッグを持っていなくても敵なのだ。そんな当たり前のことをフラッグに注力しすぎて忘れてしまった。
「あんた、ホンマ動きだけで抜けてるな~」
ねこねこがジト目でこちらを見てくる。
楓は言っていることがわからない様子でキョロキョロしていたが突如ポンと手のひらにグー手を合わせる。
「なるほどなるほど…要は全員斬ればいいってことだよね。うん、わかりやすい!!」
「過激やな…だが間違ってへん」
「…」
再びお互いが武器を取り、こう着状態に陥る。そんな中で私は動き出した。カウントの面から考えるならアクシデントでカードを手に取り、そのままクリアされてしまう可能性を減らすためにまず、ねこねこを排除する…。
「そうなるわな!!」
対してねこねこもそれを想定していたのだろう。ドラゴンのようなモンスターを召喚し、マントに変化させ装備させる。そしてそのマントから糸のような攻撃が飛び出してくる。
「獣よ氷河の冬に凍えろ!!アイスストーム!!」
私は対応策としてアイスストームを発動する。ねこねこはマントを盾替わりに使った。凍える嵐は糸ごとねこねこのマントを凍らせた。
「っち!やられた!!」
「私だって!!学んでる!!」
凍ったマントは砕けさり、ねこねこの武器は手裏剣と棒だけとなる。私は槍を構え勢いそのままに突き刺そうとするとマントをやられることを想定していたねこねこは棒を突きだしそれを防ぐ。
私は勢いを利用してねこねこを突き飛ばした。倒さなくてもいい。ここはねこねこを突き放す!!
「くっ!!」
「セット!!アイスウォール!!発動!!」
ねこねことこちらの間の通路に大きな氷の壁を作る。壁は高さもあり、こちらへとくるには別の通路に飛び移り遠回りするしかない状態だ。
「これで…」
「アタシだけ無視とか酷いじゃん!!ちゃんと混ぜてよ!!」
「…!!」
ねこねこを引き離し、楓の方へと向かおうと思っていた私を襲ったのはこちらに迫ってきた楓本人だった。
「なんで!?…逃げればいいのに!!」
「逃げる?なんで?折角こうやって楽しめてるのに逃げるわけないじゃん!」
私は自分の作戦が失敗したことを悟る。ねこねこを切り離したあと、逃げ出した楓を追って決着をつけるつもりだったが。楓がこちらに来てしまったことでねこねことの距離は縮み、再び乱戦へと戻ってしまう状況になっていた。
「ははは~!!作戦立てるなら状況だけじゃなくて相手の考えもしっかりと考えないとアカンな~!!」
氷の向こう側からねこねこの声が聞こえる。言っていることは至極もっともだ。
自身の考えのなさに唇を噛みしめながら。私はそれでもより速く楓を撃破するために動く。
楓の刀撃を槍を横にして受け止め、蹴りを叩き込もうとする。楓はそれを予期して、刀を始点に回転するように飛び上がり、私の後方へと移る。私はステップして真後ろからの攻撃を躱しつつ、後ろに向き直る。楓の攻撃を寸前のところで切り払い。再び距離を取った。
「いいね~いいね~ゾクゾクするよ!」
ほ、ほ、ほと刀をぶらぶらと揺らしながら喜びを露わにする楓。私はなかなか手ごわい相手に少し苛立っていた。
(まずい…時間を掛けられないのに…!!)
焦りが判断を鈍らせる。戦えば戦うほど相手は落ち葉のようにするりと抜けていく。
「…ふう…」
私は一度、深呼吸をした。そして低く武器を構え突撃の姿勢を作る。
(次の立ち合いで決着をつける!)
「ふ…!!」
「ほうほう!」
一気に加速し、楓の腹目掛け槍を打ち出す、楓はそれを刀で切り払い勢いを削がせると刀を持たない左手で構えを取る。
(何か来る!)
私は咄嗟にアイスロックタートルを出現させ、楓の左手の構えの前に置いた。楓の左手には新たな刀が現れそれがこちらを切り裂こうとする。
「妖刀火塵!!」
だが、その刀はアイスロックタートル防がれ、その刀はアイスロックタートルの氷によってくっ付く。
「おおっと!これは驚いた!でもこれじゃ~!!」
「なに!?」
アイスロックタートルにくっ付きもう使えなくなったと思った刀。そこから突然火が湧きだし、氷を溶かしていく。
「むむ、倒し切れない…なら火力を上げる!!刀剣解放!!燃え散らせ火塵!!」
その言葉と共に楓の持つ刀の一つが朱色に怪しく輝き、その刀が発する火の勢いを強くする。氷で相殺することで何とか持っていたアイスロックタートルはその火になすすべなく燃やされ、塵と化す。
「これは…!!」
驚く私の元にも巨大な火の勢いは襲い掛かってきていた。




