イベント -属性変換獣-
(先手必勝!!)
私は通路の一部に転送されるや否や、飛ぶ鳥を落とすような勢いで走り始めた。あたりは複雑に入り組んでいるがあくまで通路のため建物などはなく、視認性は高い。他の者より速く動けばそれだけ速くフラッグを見つけられるはずだ。
通路を走り、或いは飛び越え、私は探索していく。そしてその間に現在の手札を確認した。
<M-氷魔反転鏡…攻撃を反射する鏡を作り出す魔法。身だしなみチェックにも使えるぞ>
<I-氷冷の太刀…氷でできた太刀…切れば凍る叩いても凍る>
<T-アイスフィールド…氷で地面を覆う。即席スケートリンク!!>
<C-ウルフ…群れで敵を狩る草原の支配者。かっこいいこと書いてあるけど基本冒険序盤のかませ役>
<I-ヒドゥンミスト…自身の姿を隠すと同時に一定時間攻撃をすり抜ける(ただしこちらからも攻撃できない)。透明化…だとこれを使えば…(文章がここで途切れている)>
やや補助系に偏っているがこういう試合なら逆に使いやすい。走りぬいた私はついに目的の物を発見する。
(あった!!)
私は地面に落ちたカードを拾った、それと同時に新しく6枚目の手札が自身の周りを回る。
カウントがスタートし、頭の中に残り100というカウントが見える。
(これがなくなるまで逃げ回ればいい…)
私はその場から離れようとした時、何かが迫る気配を感じとり咄嗟に飛び退いた。するとそこを鳥のような形をしたエネルギー体が通り過ぎていく。
「…っ!!」
間一髪その一撃を避けた私は攻撃が飛んできた方向を見渡した。だが視認性が高いフィールドにも関わらず敵の姿が見えない。
(敵がいない…じゃあどこから攻撃が?)
どこから攻撃が来てもいいように油断なく構える。するとどこかから声が聞こえてきた。
「あーあ、それ目え付けてたのうちなのに…取られちゃったやん」
「誰!?」
その私の質問に声の主が答える。
「あーにゃあは…って女性にあざとさアピールは意味ないし素で行くか…うちはねこねこ。ビーストロア所属のねこねこや!あんたのことは知っているで~、MMO殺しのユーリさん。ずいぶんとその身体能力活かして他のゲームでやんちゃしてたみたいやん」
(ビーストロア!!…それに私のことも知っている…)
「ま、そんなこと今は気にせんけどね~悪いけどそのフラッグいただくわ」
そう言って上から大きな有機的な…まるで動物そのものを張り付けたかのような鳥を模した弓を持ったねこねこが飛び降りてくる。私は咄嗟にそちらの方へと意識を向けてしまった。
「ほいっと。いっちょあがりやな」
その言葉と共に背中に衝撃を感じる。そして後ろを見た私はその正体に気付いた。
「さっきのエネルギー体!操作性がある弾か!」
「正解や!!うちの弓、イーグットはある程度、軌道を決められるからな隙つかせてもらったねん」
そう言ってねこねこは私のダメージにより飛び散ったフラッグを手に取る。
「いただきや。これは代わりのプレゼントやね」
そう言ってねこねこはこちらに通路に向けて矢を放った。その矢は通路を破壊し、そして彼女の手に持った弓は姿を変え、棒状の武器になる。
「しま…!!」
足場を破壊された私はすぐに近くの足場へと飛び移る。しかし既にねこねこは逃走を始めていた。
「逃がさない…!!アイスフィールド!!」
「んな!!」
走り出していたねこねこは突然氷に変わった足場に足を取られ滑って転がった。
「うっにゃぁ!!
そして思いっきり地面に頭をぶつけ、フラッグが飛び出す。
「返してもらう!!」
通路の壁を利用し三角跳びの要領で移動した私は再びフラッグを手に取った。
そして頭を摩りながら立ち上がったねこねこを警戒しながら距離を取る。ねこねこは頭を摩るのを止めると怒りを露わにし、棒状の武器を前に構えた。
「あたた…。地味に嫌な手を使ってくるな~。だけどもう許さへん!!うち痛かったんやからな~!!ちゃんと利子つきで返してもらうで!!…召喚!!属性変換獣ゾード!!」
その言葉と共に鼻の先が剣となった小柄な象がねこねこの隣に召喚される。ねこねこはその象に自身の持つ武器である棒を重ねた。
「知ってる?金は天下のまわり物。商売の基本は物々交換や、物が物へと変わり、金へと変わる…そして!!モンスターはアイテムに変わる!!チェンジリンク!!伸縮魔剣ゾード!!」
その言葉と共にねこねこの持つ武器に象のモンスター、ゾードが吸収されていく、そして棒と一体化したその時、棒の武器は姿を変え、有機的な大剣へと変化した。
「ほな、始めるとしよか?」
ねこねこは大剣を肩に担ぎそう言った…。
☆☆☆
「来たみたいだね、ねこねこのデッキ[等価交換]の真価が」
「師匠!!象さんが武器に吸収されちゃいましたよ!!」
「そうだな」
俺はライムの呟きとミストの呟きの双方に同時に答える。そして解説して欲しそうにしているセナと何が起こっているのかと疑問の顔を浮かべているミユのために手元に端末を出現させ、ねこねこの手札を表示させた。
<C-属性変換獣ウルガー…短剣のような棘が多数付いた狼、武器へと変化、または融合することができる。融合した場合、短剣の射出を行うアイテムとなる、射出は10回行える。なでるな危険、刺さります。>
<C-属性変換獣サイランス…角が槍のように尖ったサイ。武器へと変化、または融合することができる。融合した場合、全てを貫く槍となる。変化時、召喚時間を二倍のスピードで減らす。サイって動物園でも見ないイメージあるよね?>
<C-属性変換獣スネープ…体が鞭のようにしなる蛇。武器へと変化、または融合することができる。融合した場合、伸縮自在の鞭となる。変化時、切断系の攻撃を受けると消滅する。…え?もともと鞭みたいなもんじゃない蛇って?>
「ねこねこの扱うモンスター…属性変換獣は特別な効果を持つモンスターの一種だ。その効果というのはモンスターでありながらアイテムに変化する能力のことを指す。単純に言えば武器に変化することができる獣たちだ」
そして俺は全員が会場で見ている大型画面や、会場ではなく、端末を操作し、個別の表示画面を出してねこねこの武器をアップした。
「こうやって武器と融合させるわけだな。初期武器を棒にしているのは融合の扱いやすさを考えてってところか。…融合したまたは武器化した属性変換獣は元々のモンスターの特徴に合わせて特殊な効果を持った武器となる。とはいえメリットだけと言うわけじゃない。アイテムの状態で特定の使用回数や条件を満たすと消滅し、モンスターに戻ることなく消える」
「さっきのイーグットがいい例だよね。あれは確か弾数三発が使用回数だったはずだ」
俺の説明を聞きながらライムは補足を行う。俺はそれに頷きながら話を進めた。
「とはいえ、アイテムにしてしまえば完全にモンスターに戻れないというわけじゃない。使った使用回数や受けた条件によって召喚時間が減らされるが再びモンスターに戻すことは可能だ。モンスターとアイテム。その二つを変化させながら戦い続ける…[等価交換]はそれに優れたデッキだな」
「へえ~」
(ねこねこの巧みな攻撃を凌ぐためには的確に相手のカードの効果を見極める必要があるぞ…)
俺は再び二人の戦いを目にし始めた。




