イベント -レギオン-
「まだ早いかと思ってましたが、結構人がいますね」
「そうだな、それだけ待ち遠しいってとこだろう」
申請を終えた俺たちは開会式場に来ていた。まだ早い時間だが既に何人もの人がここで開会式を待っていた。俺はちょうどいいと俺たちの目下敵となるレギオンについて教えることにした。
「ちょうどいい。今のうちに攻略ギルドの中でも特に注意しなくちゃいけないレギオンを教えておこう。まずはあそこ…あの獣人の一団だな」
俺はそのレギオンの方角を指さす。先頭にいるのは大柄な獅子の獣人…そして猫耳の少女と狼の青年が後に続いている。
「アイツらはレギオンビーストロア。現在このサーバーで最強と言われている武闘派レギオンだ。特にレギオンリーダーであるあの獅子…獅子王グラウガは戦闘能力ではブレイブカード最強の呼び声も高い。俺も戦って勝てるかわからん相手だな。」
「師匠でも勝てないんですか…」
「ああ、VRチルドレンの中でも最強の身体能力…まあユーリと同レベルとさらにカードを活かす頭もある…まっとうに戦ったらかてん」
そこまでいった所でミストが何かに気付く。
「あれ?VRチルドレンってことは子供ですよね…あのいかついオッサンみたいな威圧感なのに中身子供なんですか?」
そのミストの純真な疑問が聞こえてしまったのかグラウガがキョロキョロと挙動不審になる。
(あ…すまんグラウガ…口が滑った…)
「おほん!!おほ、おほん!!…であっちにいる特徴的な衣装の集団」
誤魔化すように俺は次のレギオンを指さす。先頭にいるのは金髪の皮鎧の少年…単純に言えば勇者のような男で、その後ろにいるのは踊り子のような恰好をした女性とザ・魔法使いと言った感じの老人だ。
「あれはレギオンクリア・バーテックス…それぞれを極めたものが集う特定の分野の廃人たちの集団だ。総合的な能力が高いわけではないが特定の分野では他の追随を許さない力を持つ…ちなみにあの先頭にいるのが純粋勇者エイト…前回バトルロワイアルで俺と相打ちになった強者だ。アイツと戦うときは目に頼るなすぐに消されるぞ」
「へ~」
俺と相打ちになったという部分に興味を持ったのかミユとユーリがそちらを見つめる。
「で、次にあの忍者っぽい奴ら…あいつ等はレギオン星屑の雨、バーテックスと違い個々の能力は突出しているわけではないが全体的なメンバーの錬度が高い…手堅く取ってくるから注意な」
俺は戦闘の完全な忍び装束に口当てをした青年とその後に続く金髪のなんか間違った認識でコーディネートされた女忍者、風来坊のような感じの青年を指さしながら答えた。
「そして」
俺はそこで指の向きを変えて、別の集団を指さす。先頭を歩く人物は白い騎士のような装束に目以外の部分の顔全てを覆うマスクを付けている。女性か男性か、若者か老人かもわからない不思議な人物だ。そしてその後ろには大柄な機械の体の男、そして細身の従者のような見た目の騎士が歩く。
「あれがレギオン未来結社。あっちの星屑の雨と仲が悪い。こっちも全体的な錬度が高いチームで注意が必要だな」
「あ、あれって大丈夫なんですか…?」
元ネタを知っているからだろうセナが顔を引き攣らせながら言葉を発する。俺はそれを聞いて冷や汗を流しながら答える。
「リスペクトだから…真似しているだけで別人だから…大丈夫だろう…たぶん…」
…大丈夫だよね?
「…あ、あとはユーリ達も知っていると思うが…」
そこまでいった所でこちらに二つの集団が近づいてきた。レギオンマキシマムエックスと一、二、サンダ―だ。
「よ、炎皇!」
「やはり少年のレギオンもイベントに参加するのか」
「お、丁度良いところに来たな、攻略組じゃないがファンレギオンの中では上位に当たるレギオンだ、ミスト以外は知っていると思うがあっちのチャラそうな優男の居る方がレギオン一、二、サンダ―、そしてこっちのマッチョが居る方がレギオンマキシマムエックスだな」
「あ、初めまして私は、いや我は深い森の奥、霧の支配者にして魔を統べる魔女!!ミスト・シュナイダー!!…っです!!」
そのミストのあいさつにライムは目を丸くする。
「ほほう…こりゃまた濃い子が入ったね~」
「ふむ…魔女を名乗るには筋肉がついてないな?どうだ我らと一緒にブートキャンプでも…」
「え、魔女って筋肉必要なんですか!?」
「いや、いらないから!!だまされるなミスト!!」
「いや、あるにこしたことはないんじゃないか?」
あっさりと騙されるミストに突っ込む俺、そして細かいところを気にするライムが続く。すると奥から一人の青年がやってきた。
「おーい、ライム。一応俺がレギオンリーダーなんだからな?先にあいさつさせてくれよ」
「ああ、悪い悪いレイサンダー」
「ちょっと、今から名乗ろうと思ってたのに先に言わないでよ!」
やってきた彼こそ一、二、サンダ―。レギオンリーダーのレイサンダーことレイさんだ。彼はいつも通り、袖口に醤油でもついてそうな黒いコートを着た姿で現れた。
そして、そこでアーサーが何かを思い出したように手を叩く。
「そうだ。少年に話しておかなければいけないことがあったんだった」
「アーサーもか?実は俺達もそのようがあったからわざわざここに来たんだよな」
「?なにかあったのか?」
「ああ…それが…実はな誘いを受けたのだ。一応断りはしたが少年には伝えておいたほうが良いと思ってな」
「それって…」
「確か…スワローズネストって名前のレギオンだったかな?詳しい話は聞いてないけどなんでも今後のこのゲームのことを掛けてゲームで炎皇たちと勝負するとかなんとか。俺の調べた情報だと手当たり次第にトッププレイヤーに取引を持ちかけてるみたいだね。だいたい断れているみたいだけど…」
やっぱりか、相手のレギオン名は事前に聞いてたから間違いない…スワローズネスト…やっぱり勝負に勝つために他のトッププレイヤーに手を出していたのか、だが戦いの背景は詳しくは教えてないみたいだな。ま、確かに禁則事項をなくすための戦いっと聞いて進んで参加したくなるかといったら疑問の余地が入るからな。そこらへんはブレイブカードの運営権を掛けた戦いだとかなんとか言って上手くぼやかしてるんだろう。
わざわざ大っぴらにする必要もないし、こっちもその体で話を進めればいいか。
「なるほどそうか助かったよ伝えてくれて、相手がどこまで手を出しているかわかればこっちも準備できるからな」
「どうせ風賢からの無茶振りだと思うけど、いくらブレイブカードの今後が掛かってるって言っても戦うことになったら手加減はしないからな?」
「それは我らも同じだ。不利益がない状況なら手助けもできるが基本的には敵同士となる悪く思わないでくれ」
俺は二人のそんな当たり前なことに対する返答をした。
「わかってるって、お互い久しぶりのイベントだからな、全力で戦おうぜ!」
へーいとお互いにハイタッチをする。その時、何者かから声を掛けられた。
「美しい友情だね。でも勝負とは非常なものだよ?炎皇くん?」
こちらに向かって一人の少女を先頭に右にグラサンを付けた大男が控え、そして反対側に三人のロープの人物、そして彼女たちの後ろにも同じく三人のロープ姿の人物たちが歩く、計8人のグループがこちらに向かってきていた。
(…あの銀髪…スワローズネストか!!)
「誰?」
ユーリが突然やってきたその少女に対してそう言う。相手のレギオンの名は知っているが直接会ったことはないのでわからないのだ、俺は銀髪で判断したがこの世界では割と多い髪でもある。あの時、ショップから出てきた少女と目の前の少女をユーリは=で結べないようだった。
「これは失礼。挨拶がまだだったね。私は今回のゲームの君たちの対戦相手…レギオンスワローズネストのレギオンリーダーフィルだ。そして横にいるのが私のレギオンのレギオン員たち、後ろにいるのが私の協力者たちだ」
「これは丁寧にどうも、こっちは同じく対戦相手、レギオンリヤンショワ、レギオン員の俺と愉快な仲間たちだ」
「その他扱いかよ!!」
ミユが大きく声をあげる。なぜかローブの一人が同じように怒りを露わにし、もう一人に戒められていた。
「はいはい、わかってますって。右から、ユーリ、セナ、ミスト。計三名がうちのレギオンのレギオン員、レギオンリーダーはこのミユだ」
「雑なのは変わってないし…」
ユーリの言葉にフィルはクククと笑い声を漏らす。
「なに?」
不機嫌になったユーリがそれを詰問した。するとフィルは更におかしくて仕方ないといったふうに笑い声を大きくし、そして顔を上げてすまなそうな顔をする。
「いやいや、これは失礼。雑草が自分は雑草じゃないと言っているのが滑稽でね」
「あ!?」
ミユがその言葉に怒りを露わにする。少し、体を動かしたところでミユとフィルの間に突如グラサンが割って入り、壁となって立ちふさがった。
「な、なんだ?やるってのか?」
「…」
「やめろヨコザキ、今は必要ない」
「は!!」
その言葉と共にグラサンは元の位置に戻った。そしてフィルは言葉を続ける。
「ふう、全く気が早くて行けない、もっとスマートにいけないものかね。それでさっきの話だが言っていることは事実だろう?君のレギオンは炎皇以外、無名ばかりじゃないか、それなのに一著前に一員として肩を並べたつもりでいるとは笑えると思ってね。ふふ、まるで一厘で咲き誇る花の近くに集まってこれが一つの花壇ですと誇ってる雑草のようだと思っただけだよ」
その言葉にユーリ達が絶句し、怒りを露わにする前に遮るようにフィルの仲間のローブが再び怒りを露わにした。
「おっといけない。こちらのレギオン員が怒ってしまったようだ。これ以上はやめておくか仕合前に問題を起こされたら困るしね」
「そっちのローブたちは紹介しないのか?人の仲間を侮辱してくれたんだからさぞビックネームなんだろ?」
俺は挑発気味にフィルに言葉を発する、既に仕合は始まっている。これは言葉だけで戦う前哨戦だ。
「ふむ、そうだな紹介しておこう。君たちローブを取ると言い」
その言葉に従い、横にいた三人と後ろにいた三人がローブを投げ飛ばす。
「…な!!」
「っち!」
「あれ?」
「えーと…」
「む」
それを見た俺たちはそれぞれ驚きを露わす、それもそのはず、六人の中の五人…それは俺の知り合いだった。
「久しぶりだな炎皇、いつかの雪辱を晴らしに来たぞ!!」
「右に同じく」
そう言ってこちらに闘志をむき出しにするのは以前レギオン戦を行い戦った。マサキとレンだ。
「ふむふむ、因縁の対決って感じ?素敵じゃーん!アタシも早くお互い切って切られる因縁の相手と知り合いたいものだよ~」
そして見知らぬ和装と洋装を3:1で混ぜたような軽装の紫の髪の少女が刀を握りながら答える。
「マサキ、お前…!!それよりもだ…お前たちは何をやっているんだ!!」
「あらら…」
アーサーが怒りを露わにし、マサキとそして後ろの者たちに声を掛ける。ライムはやっちまったーと言った様子で短く声を漏らした。
そしてその言葉を受けたフィルが得意げに後ろに手を広げて宣言した。
「さて、後ろの彼らが今回のスペシャルゲストだ、炎皇…君と同じ担い手の仲間…水精、地勇、闇妃だよ」
…そう、後ろに居たのはかつてバハムート百匹マラソンで俺達と共に戦った…かつての仲間だった。




