イベント -決戦前夜-
「な、なんでそんなこと勝手に決めちゃんですか~!!」
部屋に霧の悲鳴が響く、美雪はふーんと興味なさげにし、瀬那はあまりの出来事と店長の正体に絶句していた。
今、俺達は俺の家へと集合していた。店長の依頼を受けることとなり、その為の情報共有を図るためだ。
「まあまあ、悪かったと思ってるよ。黙って決めたことは。でもどうせイベントのランキング戦には参加する予定だったし、倒さなきゃいけない相手が一つ増えただけじゃないか大した問題じゃないよ」
「大した問題ですよ!!」
俺の言葉に瀬那が反応した。彼女はわなわなとふるえながら言葉を口にする。
「兄さんは店長の正体を知っていたんですか…?そもそも店長は…だからあの時あんなことを…」
瀬那は俯きながら言葉を口にする。彼女のショックは計り知れない。それもそうだ、VR開発会社の社長ということは言わば自分たち電脳アレルギーを生み出した…それを排斥する社会を作った元凶のような存在だ。自身を助け…そのために慕っていた恩人がまさかそんな人物であったなんて受け入れられるだろうか。
俺は少し考え口にする。
「まあ、知ってはいたな。だけどそれを伝えるのも聞くのも瀬那…君と店長の役目だと思ってた。まあお互いに話さないままで来たからこんなことになってしまったが…店長も悪気があったわけじゃないんだ。自分たちが生み出したVR技術によって世界が変わり多くの被害者を生み出したことに深い後悔し、過去に未だに囚われている…。納得しろとは言わん。ただそれを理解だけはしてほしい。今回のことも第二の電脳アレルギーのようなことを起こさないための禁則事項を守るための戦いなんだ」
「…納得はまだしてませんけど…理解はしました。ことの重要性も理解しています。…ただすべてが終わったら店長と直接話す場を作ってもらいたいと思います」
振り絞るように呟いた瀬那を見て、俺は大丈夫だろうと理解する。瀬那はもうしっかりと向き合う強さを手に入れた。後の詳しいことは直接、店長と合わせ二人で解決したほうが良いだろう。
「ああ、それは俺が用意すると約束しよう」
俺はそう言い美雪を見る。
「美雪は興味なさそうだが問題はないか?」
「あ?まあ強い敵が増えるっていうならいいじゃねーの?どいつもこいつも倒すから問題ないし」
「相変わらず突っ張ってるな~」
「うるせ!!」
美雪が投げたものを俺は華麗に躱す、ふ、俺も日々進化しているのだよ。これ位はできる…。
「でもでも相手って企業なんですよね?それってやばいんじゃ…。良くあるじゃないですか!!こういう場合、お金で強力な装備整えたり、攻略組とか強いのを買収して仲間にしたりとか!!」
そんな俺に霧が大慌てで質問してくる。俺は軽く流しながらそれに答えた。
「ああ、それなら心配ないよ」
「軽!!反応軽!!危機感持ってくださいよ~!!」
涙目になりながら霧が言う。普段の行動はあれだが基本小心者で常識人の霧にはこの展開は重すぎたようだ。
「大丈夫大丈夫。強力な装備…っていうかカードは抜け穴を使えば金で何とかできるかもしれないが攻略組の奴らが金で靡くってことはないから」
「なんでそんなこと言えるの?」
俺のその回答に優理が疑問を投げかける。
「何、簡単なことさ。そもそも攻略組はなんでレギオンを作ってまで攻略組なのかってところだな…つまるところそれはイベント戦やクエスト、ダンジョン攻略のためだ。その為にそれぞれの時間を使い、時にはお金を使ってまでこのゲームをプレイしているわけだ。いわばこのイベント…ランキング戦はその成果を見せる場だ。そこに横からやってきて金はやるから俺を勝たせるために協力しろと言われてできるかって話だ。できるわけない、もし仮に一部が条件を受けることを承諾したとしたら、そのレギオンは他のメンバーからの信頼を失い崩壊する。…まあ以上のことから攻略ギルドあとは上位ファンギルドがスワローの味方になることはないと言える…」
そこで一旦話を切って俺は再度言葉を紡ぐ。
「それに…なにより俺たち、デュエリストのプライドが許さない。俺たちはこのカードの世界に魅せられてここにいるんだ。それを投げ捨ててまで金に靡くような神経はしてないよ。もしスワローの手下になるとしたらそれはそこに金以外の価値を見つけたときだけだ」
「そうか…それなら安心ですね」
霧がようやく安心したといった形でほっと息を付く。
俺はそれを見た後言った。
「とりあえず、相手がどう出るかなんて考えてもわからない問題だ。折角のイベント戦…ただ楽しんで勝つことだけを考えよう。以上!解散!!」
こうして俺たちは別れたそして決戦のイベントの日、再び俺たちは集結することになる…




