イベント -ゲーム-
「おや、君たちは…」
優理に引きずられて店の中までやってきた俺達を奥の部屋から出てきた店長が見てそう言葉を発した。そして何かに納得するかのように言葉を呟く。
「なるほどなるほど…確かにこうなりましたか…」
「…」
「なんですか?」
「ああ、いやなんでもありませんよ。ちょうどいい時に来てくださいました、本当にちょうどいい…実はですね…」
そう店長が切り出した時、俺は思った。ほれ見たものか厄介ごとがやってきてしまったと。
☆☆☆
「…というわけなんです」
店長から先ほどの出来事の説明が終わった、店長の衝撃の事実に優理の開いた口がふさがらない。俺は何となく飴を取り出しその開いた口に放り込んだ。
むしゃむしゃと飴をなめ始めた優理を見ながら話を進める。
「そうか、優理には言ってなかったか~店長の前職業は世界にその名を轟かせるPrimordial Tree Company…通称PT社の社長なんだ。今は引退してこうやってカードショップ経営しているみたいだけどな。まあ、タクティカルコントローラの試作品とか手に入れられたり、まだPT社にコネがあるんだろう。そこを頼りに来られたってとこか」
俺は可能な限り、簡潔に店長の事情と今回の件を説明する。もちろんいくらかの知らなくてもいい説明は省いているが。そんな俺の説明を聞きながら明らかに店長は俺達を巻き込もうという笑顔を見せる。
「いや~それでですね。君たちにちょっとしたお願いがあるのですが…」
「ほら、見たものか!!言っただろうがフラグ立ってるってあの状況は進んじゃ駄目だったんだって敵のライフポイント100って状況だったんだよ!!鉄壁だったんだ!!」
「ごめんなさい…」
自分の非を察したのかしおらしく優理が謝る。そのしぐさは楽しみにしていた遊園地を自身のけがで中止にしてしまった子供のような弱弱しさだ。
「いや、そんな反応されると困るじゃん…俺も言い過ぎたよ…」
「ははは、相変わらず仲がよろしいですな~」
「てかこの状況あんたのせいだからな!!」
俺は俺たちの様子を微笑ましく見守る店長にツッコミを入れる。そして店長に話の続きを促した。
「…それで…どうするつもりなんだ店長は?もちろん技術を渡すつもりじゃないんだよな?」
「ええ、もちろんそれを阻止する方向で動きたいと考えていますが…少々相手がやっかいでしてね、あちらもこちらと同じように世界すべてに展開をし、そしてかなりの影響力を持つ企業Evolutionホールディングスの創始者のご子息が運営する直営企業の一つなんです。まともにやり合うとなればEvolution社と我がPT社の全面戦争に突入しお互いに大きな被害を出すことになるでしょう…それに守り切れるとも限りません」
「守り切れるとは限らない?良く言うぜ」
「…そこで一つのゲームを提案しようと思っていたのです。あなた方にはそのゲームで私側のプレイヤーになっていただきたい」
そう言って店長は一つのパンフレットを渡してきた。それを俺は受け取る。その時、優理が質問をしてきた。
「えっと…なんでゲーム?」
俺はその言葉に少し考える。そして例を挙げて説明することにした。
「ん、ああそれはな…そうだななんて説明すればいいか…そうだなちょっと一つの例を挙げよう。例えばある国にAという貴族とBという貴族の二人が居たとするな?」
「うん」
「その貴族AはBの土地を狙っていたんだ。対外的には二つの領地は同じ規模でそれまで平和だったからお互いの詳しい国力差もわからない。周りの貴族たちもどっちに付くか悩むわけだ。そんな状況で普通に戦争を始めれば、お互いの方にそれぞれの貴族たちも付き、戦力が拮抗して泥沼の戦いになる。最後に残るのは荒れ果てたお互いの土地と一人の勝者だけだ…ここまではわかるな?」
「うんうん」
「そうなるとお互いの貴族は困るわけだ。守り切っても荒れ果てたらBは困るし、攻めきっても荒れ果てたらAにはうまみがない。そこでそのまま戦うのではなくワンクッション別の戦いを用意するんだな、単純に言えば今回のゲームはこれに当たる、例で言うなら御前試合を組むなど…だな。この御前試合でもし、どちらかが圧勝した場合。それはその後の戦争の状況を変える。例えばBが圧倒的な力で買った場合。Aに付こうとしていた貴族たちはAと共に戦っても勝てないと判断してBに付く。そうすればAの戦力が極端に減ることになり…結果Aは攻めることなく敗北することになる。これはもちろん逆でも起こる。お互いにいたずらに消費するぐらいならこうやって少ないコストで決着を決めたいと考えるから多少変でもゲームに乗らざる負えないってわけだな。乗らないなら乗らないで負けたとみられるわけだし」
俺がそこまで説明したところで店長がそれを引き継いだ。
「そういうことです。ああいう輩は一度何かの形で負かさないとどんな手段を取るかわかりません。それだけの力もあるわけですしね。だからこそ今回のようなまったく違ったゲームの形を用意することも大切なのです」
「いわば丁度良く隔離するためのエサであり、お互いの力を見極めるための前哨戦っていった所であり、決戦の舞台というわけだ、そしてそのプレイヤーを俺達にしたい理由はこれだろう」
俺はそう言って優理にパンフレットを見せた。
「ブレイブカード大型イベント…ランキングイベント戦。レギオンやソロが参加してランキングを競う競技…まさにおあつらえ向きってやつだ」
「なるほど…」
そういってパンフレットを受け取り、それを見ていく優理。一通り見終わった後、俺に聞いてきた。
「それで…おじさんはこの依頼受けるの?」
「そりゃ受けるだろうだって…」
俺は一端、そこで言葉を切った。正直この依頼、俺達には拒否する権利はないと思う。あの時外に居た少女…。あれが店長の言った通りの人間ならおそらくいざと言うときの手段は択ばないだろう。店長も先ほどから勝負しなければ何をするかわからないと何度も口にしている。そんな彼女に一瞬とはいえ、このショップへ俺達が向かっていることを見られてしまった。…それに最初に来た時の店長のあの反応あれは…、もしそうなら今は踊らされたほうが良い何より今までの経験がそう言っている。
まあ、そういった面から断れないが…なにより…
「カードゲームで一つの世界の運命を決める決戦に参加するって憧れの展開だろ?せっかくチャンスを貰えたんだ楽しまなくちゃな!」
折角の機会だ。俺は今をしっかりと楽しみ、生きる。それからのことはその時考えればいい。




