オープニングイベント -インターバル-
「あ、っぶね~。あの槍女マジ怖いわ…」
俺は呟きながら戦闘状態を解除し、デッキをリロードする。こうすることで使用した手札を再び使用することができるようになるのだ。ただし、周りに敵がいる状態だったり、戦闘中には使えないことが難点なのだが。
「これだからVRチルドレンはやっかいなんだよ。何が仮想現実に適応し、超人的な身体能力を発揮する人間だ。こちとらドットの世代からゲームをプレイしているピコピコ派の人間だぜ。…まあ今はもうコントローラ型のやつは骨董品だがな。はあ、中年のおっさんが相手する相手じゃないよなあれは」
グッタリしながら、メニューをオープンする。その中からいつものゲーム仲間のアドレスにフレンド通信を掛けた。
「おっす。ライル。そっちはどう?」
「ん?お前か。今俺はレアカード手に入れるために魔物狩りしてるところ。なかなかユニークモンスターは出ないな。お前もこっちに来て一緒に魔物狩りするか?」
「いや、俺は遠慮しとくわ。さっきVRチルドレンに突然襲われてさ。何とか逃げ帰ってきたところなのよ」
「ははは、そっちにも出てきたのか。この間こっちにも出たぞ。まあ俺はあっさり負けちゃったけどな。あいつらまじで変態起動過ぎるからなどうやって動いてんだよってたまに思うわ」
「わかるわかる…って負けたのかよ」
「まあ、負けたよ。自分の強さを証明するんだ~っていきなり襲われてね。そっちのやつと同じ奴かな?」
「またそれかVRチルドレンはどいつもこいつも…」
「まあそういうなって。俺たちだって昔は自分の強さを証明するために作ったばっかりのデッキを持ってショップをうろうろとしたもんだろう。誰だって自分を最強だと証明したいそんなもんさ」
「そんなもんかな~」
確かにそういった時もあっただがそうやってショップをうろうろした時だってカードゲームはネタデッキやファンデッキなどユーモアあふれるデッキを持った人などもいてみんなで楽しみながらプレイすることができた。彼らがそれを求めているとも思えない。
(ふむ、面白い戦いか。そういった楽しみ方を教えるのも先人の役割なのかね~)
「あ、ユニーク出たわ。ちょっと忙しくなる通信切るよ」
「了解」
俺は通信を切り立ち上がる。
「さてっと。久しぶりに海でも見に行くか」
そうして海へと向かっていった。
☆☆☆
海へ向かう途中。渓谷で戦闘音が聞こえてきた。
「お、誰かが戦っているのか?」
俺は誰かがここで戦っていると判断し様子を伺う。誰かがデュエルしていればそれを除き見て戦法やコンボ、場の展開を確認してあーだこーだ行ってしまう。これはデュエリストの宿命ともいえるものだ。決して覗き観ではない。あくまで研究なのだ!
「モンスターと人だけか?」
覗き込んだ先には一人の青年がモンスターと戦っていた。てっきりデュエルしているのかと思ったらただのカード集めの魔物狩りだったのかもしれない。そう思ってみていると青年の魔法によってモンスターが貫かれ消えた。そしてそれと同時に新たなモンスターが召喚された
「…ソリティア野郎かよ…」
俺は呆れた目線で召喚されたモンスターを見ていた。…ソリティア野郎…通称ずっと俺のターン呼ばれる行為のことだ。自身はカゲに身を隠し、ひたすら召喚と演唱を繰り返して戦う戦い方のことだ。魔法を使った同様の行為。芋スナと共にプレイヤーに毛嫌いされる行為のことだ。
(確かに相手に行動させないで一気に攻めるっていうのはカードゲームの一つの攻略方法の一つだけどあれはないよな~)
そう思いながら見てると突然バイクの駆動音が聞こえてきたそして崖の上からバイクに乗った青年が飛び出してくる。
「あ、あれはまさか!!」
俺が期待のまなざしで見ているとその人はその言葉を叫びながらソリティア野郎がいると思われるところに向かっていく。
「っひゃっはー!!ソリティア野郎とは卑怯なやつめ俺が成敗してくれるわ~!!」
「ヒャッハーさん!!」
その人物はバイクと共に風になりながらアイテムを振り回しあっという間にソリティア野郎を倒してしまった。
「いや~さすがヒャッハーさん。あの人もカードゲームしてないけどそれでも見ていて楽しめるな~」
ヒャッハーさんはスピードが出過ぎて壁に激突する。それを見ながらふと俺は思った。
(俺はカードゲームをしっかりとしない相手にきつく当たりすぎていたのではないか?カードを使うといってもさっきのソリティア野郎のようなやり方を面白い戦いとは言えない。それなのに使わない人だけを毛嫌いしてはなから否定し、まともに戦わないというのは…結局同じなのではないだろうかあの人たちと。本当にカードゲームが好きならば否定の視線に嫌気を指して逃げるのではなく、一緒にやろうぜ。と誘って面白さをみんなで分かち合うべきなのではないか)
俺はそんなことを考えながら海へと向かっていった。
☆☆☆
「う~ん。絶景絶景」
VRMMOが進歩して一番よかったことと言ったらやはりこの風景だろう。見ているだけで心が洗われるような風景がすぐに見ることができるようになったのだ。
俺が風景を見ていると後ろから声をかけられた。
「やっと見つけた…」
そこには煤だらけで少し汚れたユーリがいた。
「勝負は預けられていたここで使わせてもらう」
そう言うユーリに俺は…
「いいぜ、ユーリ」
「ユーリじゃない…あれ?」
不思議な顔をして戸惑ったあと。ユーリは真顔になってこちらに向かう。
「逃げるかと思ったどういうつもり?」
俺は彼女に向き直り言う。
「ちょっと気が変わってな。ユーリは使わない人だけどそれを嫌って逃げるのは違うと思ったんだ。やっぱりデュエリストならしっかりと戦って面白さを広げないとな!!ユーリ!!お前は使わない人だがこの戦いで俺はお前にカードを使わせる。そしてカードゲームの面白さを教えてやるぜ!!それが俺の戦いだ!!」
「…上等…受けて立つ…」
そして俺たちはあの森へと場所を移した…。