番外編 久しぶりのショップへ
.番外編 久しぶりのショップへ
「た、助けて…」
そんなことを呟きながら優理は玄関で力尽きた。玄関まで来てそれを確認した俺は
「ま、いっか」
と無視してゲームをするために戻ろうとした、その足を優理は掴む、本来ありえないはずだがVRチルドレンとして強化された彼女の握力によって虚弱なヒッキーの俺の足は悲鳴をあげ動かせなくなっていた。
「痛い痛い!!お前ら自分の力を考えろよ!!こっちとら根っからのインドア派なんだからな!!」
「じゃあ、助けてよ!」
「どうせまた霧の件だろ!!友達なんだからそれぐらい自分たちで何とかしろ!!」
「む!それはそうだけど…どうしたらいいのかわからない」
「そんなこと言われてもなぁ…しょうがないちょっとだけ確認してやる」
「助かる」
完結にそう言った優理に促され俺は隣の家へと移動する。そして玄関から中に入る。
「こうしてみるとお前らの家に入るのは初めてだな…大体の場合こっちに来るだけだからな」
「そうだね」
一通り室内を見渡す。意外と中は質素で子供が良く欲しがるアニメの商品や女の子女の子したアクセサリーなども少ない部屋だ。感想を言うと
「疲れたOLの部屋みたいだな」
「むう!!」
その俺の一言に自覚があるのか優理がふくれっ面になる。
「もうちょっと子供らしく色々買ったらどうだ?そんぐらいのお金は稼いでるんだろう?」
「何を買えばいいかわからない…」
「…そりゃ難儀なこって」
唐突に重い話になり返答に困る。VRの出現により人が速くに完成する社会になったが、VRチルドレンが発生したことから、VRにおいて感情面の操作はしないことが運営企業であるPrimordial Tree Company通称PTの方針により決まっている。
理由は単純明快、アバターでの動きを自身の動きと脳が誤認識をしてVRチルドレンが生まれるなら、それは単純な体や知能の上昇だけではなく、感情面にも適応される危険性があるといった判断からだ。
もっとも洗脳や扇動と言ったことは不可能らしい、なぜならそういった思想と言うのは人間の元来の物ではなく後から教え込まされるものだからだ。VR利用して強化、または変化するのは人間の基本的な部分。それこそゲームのキャラ設定画面で表せるような性格やステータスと言ったものだけだ。感情を変化させ性格を変貌させることはできるがそこまでだ、例えば物事を信じ込ませやすい正確にしたり、冷酷な性格にしたところで別の組織に引き抜かれる…諭される可能性がないとは限らない、むしろそういった特徴づけをしたほうが懐柔工作の影響を受ける可能性もある。また冷酷な性格のものは単純に犯罪者におち犯罪者の増加などにもつながる恐れがある。PT創始者である幻堂 迅はそういったVRが現実世界に影響を及ぼす可能性のある要素は徹底的に排除を行い。技術が悪用されないように政府組織と取引をし、独占禁止法を特例として無効にすることでVRの技術を管理しているが多くの企業や組織は上記の理由から禁止された部分の旨みを諦めVRチルドレンの改良に精を出す方針に変え、PTに関する攻撃を止め、平和的にやっているらしい。単純に言えばVRの技術を使うためには全てPTの許可と審査を受ければならないわけだ。もっとも市場自由化のために根幹技術以外というより制限された状態での製作は自由にできるし、そこまでの審査もいらないわけだが…。
ただ現在ではPT社は過剰になりすぎだ。危険性はないと訴える学者や企業も存在する。そういった者たちは大抵莫大なVR技術産業への乗り込みが目的であり。本当に危険性がないのか?と疑問の声も上がるが民衆はそういったプロパガンダに意外と弱い。独占禁止法すら無視して君臨するPT社に様々な反感を持つものも存在する。ただ現状の生活を支えているのはそのPT社の技術であり、表だって反感は出さないし、反感を抱くものも少ない。それに実際、PTが禁止しているVR技術の中で悪影響が出ると確定しているものもある、それは時間加速だ。いわゆるVRの時間を加速させて一日を二日にしたりなどする技術…よくよく考えれば当たり前のことだ。時間加速をしている時、その人、本体の脳はどうなっているのかといった話なのだ。時間を加速するということは本来二秒で処理するはずの情報を無理やり一秒で処理をするなど脳に相当な負担がかかる。いくら体はVRにいるといった感じでも実際に動かしたり演算をするのは人の脳なのだ。限界を超えた酷使を迎えた先にあるのは廃人化か、意識の喪失か…あるいは…。まあ、そんな理由があるからPTの禁止項目の正当性がでるわけだがそれでも言いがかりはあるもので…今は世界最大手のEvolution Swallow Company…通称スワローといった企業が確か技術の開示を要求してことPTに喧嘩を売ってるって話だったか。
そこで俺は脇道にそれた思考を戻す。こういった理由から感情面の操作はされていない、だから頭は良いが子供っぽさが抜けない政輝や優理、美雪のようなアンバランスな子供たちが生まれて問題になっているのだ。急激な身体能力の成長と、それにともなわない感情の成長、それにより起こる自己の不安定化…そういったことから自分は大人として振る舞うべきなのかどう子供として振る舞えばいいかわからなくなる者も多いと聞く。
単純に説明すれば、感情では子供のようなことをしたいと思っても完成された思考能力から生み出される理性がそれを止めどっちつかずになるといった所だ。
毎回だが、こういった実例がすぐ近くにいると考えさせられる。あの人はいつもこんな気持ちを味わっているのだろうかとふと思う。
(ま、俺には関係ないことだな俺にとってVRは現実じゃなく、あの人の理想通り楽しいゲーム(遊び)だ。今更それを変えることもないだろうし、つもりもない。そんな俺がVR関係のごたごたに口を出すなんて筋違いもいいところだしな)
「ま、なら今度俺が色々と教えてやるよ。何ならなんか買ってきてもいい。カードゲームが基本だが、その他の遊びも俺は王者だからな!!」
「…その年で私たち向けのを買ったらまたあのおまわりさんにつかまるよ?」
「う…。それを言うなよ…。大きなお友達が子供向け商品買っても見逃してくれよ…」
そんなことを言いながら俺は扉を少し開ける。そして中を覗き込んだ。
「…」
「…」
「…で、これはどういう状況だ?」
俺は目の前の状況に一瞬唖然とした後、呟く。俺の目の前には先ほどまでの殺風景な部屋とは違い、数々のファンタジーな服装が乱雑に所せましと空間を埋めていた。
俺の言葉を聞いた優理は目を逸らしながら答える。
「見ての通り。霧が家に置けないからってここを倉庫代わりにしてる」
「なるほど~これ全部コスプレの衣装か…で当の本人たちはどこにいるんだ?」
「あそこ、ファッションショーしてる。…瀬那と」
俺は優理が指差した方に目を向ける。そこには二人の少女が居た。俺はそれを目にし…頭に手を当てて苦虫をかみつぶしたような表情をする。
「…ごめん。やっぱり無理だったわ」
「そんなこと言わずにどうか!!どうか!!」
俺が見たもの…それは「いいですよ~いい!!本当にいいですよ~デュフフ」と言いながら涎を垂らしカメラを激写しまくる霧と「え~そうですか~え!?そんなポーズも!!…ちょっとだけですよ?」と言いながら様々なコスプレ衣装に着替えポーズを取りまくる瀬那といった。カオスな空間だった。
「霧の奴、デパートで見たときは地味系オドオド少女だったのに…変われば変わるもんだな…今じゃ立派な変態だな(褒め言葉)」
「ニュアンスが可笑しかったんだけど!!」
「まあ、それは良いとして…お前はこれをどうしたいんだよ?霧にコスプレを排除させればいいのか?」
俺は疑問の声をあげる。優理はこの状況をどうしたいのか、今一番重要なのはそれだ。優理は何ともいえない表情をした後、ポツリポツリと答え始める。
「コスプレをやること自体には問題はない。部屋を倉庫代わりに使うのもいい。ただあの空間に参加することができない…。あそこまで人間捨てられない…」
「酷い言い口だな!!まあさすがにあれは上級者過ぎるからな…」
再び目を向けるとそこではタイマーモードにしたカメラに向かい二人でポーズを取る霧と瀬那の姿が…。
俺は再び目線を優理に戻し話しかける。
「美雪はどうした?あれもお前と同じであの空間には合わないだろ?」
「美雪は浅見さんの稽古があるから今日は来ないみたい。一緒に住んでるわけじゃないし、頼る相手にはならない」
「俺もお前と一緒に住んでいるわけじゃないんだが…。まあいい。コスプレ自体嫌ってないならそのうち慣れるさ、まあ今日明日とはいかないだろうがそれで居場所がないなら久しぶりショップにでも行くか?」
「いいの?」
「まあ、久しぶりに二人っきりで遊びに出かけるってのもいいだろう?」
優理が期待に満ちた目で俺を見てくる。最近はすっかり二人っきりで出かけることも少なくなった。以前は何回かショップに出かけたりしたがすっかりとご無沙汰なのだ。
こうして俺達はショップに向かうことになったのだった。
☆☆☆
「ん」
ショップへ向かう道すがら優理が俺に対し手を指し出してきた。俺はやれやれとその手を握りつなぐ。
「まったく…子供かよ」
俺がぶっきらぼうにそういうと優理はこちらと反対の方を向きながら
「子供だし」
と答えた。その後も手を繋ぎながら歩き、ショップの前までやってきた。
するとショップに繋がるエレベータから少しずつ黒服の集団が飛び出してくる。
「なんだ…?」
俺は立ち止まりその様子を見続けた。何度か黒服が出てきた後、一人の少女が降りてきた。現実世界では珍しい銀髪をした、少し勝気そうな中学生くらいのそれこそゲームに居そうなくらい美しい少女だ。
「社長、今後の予定ですが…」
その少女に黒服の中で一番偉そうなグラサンが声を掛ける。その少女はふん、と鼻を鳴らした後、言葉を続ける。
「あの老害め…素直に技術を渡せばいいのに、ちっ、あの技術がなければこれからの商談がまとまらん!横崎!!車を手配しろ!!」
「はっ!!」
そう言ってその者達は用意した車で何処かへ去っていった。その時、車に貼ってあるエンブレムが少し見えた。
(あれは…スワロー社のエンブレム?まさか…)
俺はそのまま一歩後ずさりする。それを見た優理が小首をかしげた。
「おじさん?」
「な、なあ優理…今日はやっぱりショップに行くのはやめないか?」
「なんで!?ここまで来たのに!?」
優理が驚きと共に怒りを露わにする。
「なーんかな。俺のデュエリストとしてのフラグ察知能力がここで行ったらやばいってなんか巻き込まれるって言ってんだよ。デュエリストの勘は良く当たるんだぜ?ということで帰ろう!」
「だーめ。行くの遊ぶの!!」
「ちょ、やめ!!引っ張るな!!また今度来るから!!まじやばいからこれ振りじゃないから!!あああ!!やめて~!!」
こうして俺はショップへと行くことになった。予想通り困った時代に巻き込まれることをこの時の俺と優理は知らなかった。
番外編 久しぶりのショップへ 終わり
っと言うわけでイベント編始めます。いやーすごく長くて前編だけで12万行っちゃいました。今までの分とほぼ同じくらいです。
このままだと、いつものように全部書いてから出すってやり方じゃ、それこそ半年後スタートとかになりそうなんで前編だけでも始めたいと思います。来週の月曜日からスタートです




