クエスト -「いや、そりゃそうだろう」-
「うぐ…うぐぐ…」
現実に戻った私は泣いていた。あの後、勇気を出した私はカラオケに参加した。そして好きな曲を歌ってドン引かれたのだ。歌ったことに後悔はない。ただみんなの目が冷たくてドライアイになって涙が出てしまっただけだ。
そんな感じで歩いていると目の前に中学生くらいの制服を着た少女が現れた。素材はよさそうなのに髪は手入れされておらずボサボサで左右違う種類の靴下を履いている、服自体も所々着崩れているが一応清潔さには気を付けているか汚れは少なく嫌な臭いはしない少女だ。彼女はそれまで話していた集団から離れるとこちらに向かってきた。
「…これ。どうぞ」
「え?」
私は思わずそれを受け取ってしまう。そこにはどこかのマンションの一室への生き方が書いてあった。
「…行ってみればいいと思うよ?私のために」
「あ、あなたのためなんですか…というか初対面ですよね?」
なんだか電波なことを言っている少女に思わず顔が引きつる。ポケーとしているが私より年上なのにこれで大丈夫なのだろうか?
「…そこに炎皇がいる、…あなたは選ぶ」
「え、それって…?」
私が返事をするより速く、彼女はふらっとどこかへ消えた。私は結局その少女が言った通りそこに行くことを選ぶことにした。
☆☆☆
ピンポーン、ピンポーン。
ボタンを何度か押して返事を待つ。がしゃっとドアが開く音がした。
「優理だから鍵は渡して…って誰だ?あ、いやどちら様ですか?優理か瀬那の友達?ていうかデパートでみた…」
現れたオジサンを見て、驚く。炎皇の中身は大人だったのか…通りでしっかりとしているはずだ。
「し、師匠ですか?」
一応私は確認を取る。その言葉にオジサンは一言師匠?と考えた後にまさかと驚いた顔をした。
「まさか…ミストか!!」
「そうです。師匠の弟子ミストこと霧です!!うえぇーん師匠~!!」
私は感極まって泣き出してしまう。師匠はそのことに慌て始めた。
「ちょ、ま!!不味いってけ、警察が…!!」
青い顔をしながら言う師匠、何かトラウマでもあるのだろうか?
「くっそ!!とりあえずなんで泣いているんだよ!!それがわからなければどうしようもねーよ!!」
「うぐ…実は私、本当の自分をさらけ出してみたんです。そしたら友達にドン引かれてしまって…」
「いや、そりゃそうだろう」
「ぶええええええん!!」
師匠の容赦ない一言が私の心を抉る。そんなハッキリと言わなくてもいいじゃないか。さすがに不味いと思ったのか師匠はフォローの言葉を入れてきた。
「まあ、いいじゃねーか?その友達との付き合いは恐らく長い人生の中で一瞬だ。俺だって小学校の友達とはもう何十年とあってないからな。それに比べて自分自身と向き合うってのは一生だ。悲しいが後悔はしてないんだろう?」
「うぐ…うん…」
「ならいい。今後悔していないならそのうちいつかはその話を誇れるようになるさ。世の中そんなもんだよ」
「そうですか?」
「そうだ」
「う、…でも悲しいですうえーん!!」
ちょっどうすればいいんだ!!と再び慌てる師匠。その時誰かが外の方へやってきた。
「おじさん。何女の子泣かしているの?まさか…」
「おい!!何変な勘違いしているんだ!!やめろ!!…ん?そうだ!!霧。新しくこの二人が友達になってくれるってさ!!ホラお前らも遊んでこい」
そういって師匠は新しく現れた女の子たちと私を無理やり外に追い出した。
「わ、私は遊びに…!!」
「その子が遊んでくれるってさ!!」
嬉々とした表情で厄介ごとを放り出した師匠は去っていった。後にはふくれっ面の少女と苦笑いをしている少女の二人が残っている。
「まあまあ優理。いいじゃないか。僕は瀬那、そしてこっちは優理。君は?」
「私は霧です…」
こうして私は初めて二人と知り合った。この二人がお互いに全てを打ち明けられる生涯の友達になっていくことをこの時の私はまだ知らない。だが世の中そんなものだ。本当の自分を受け入れられくれるものは、たった一つの変化は案外周りの身近にあるモノなんだだろう。
今にして私はそう強く思うのだ。
おしまい。




