クエスト -「レディース&ジェントルメン!!」-
「最後のクエストはここだ。一人で行って来いって言われたんだけど…クエスト詳細に載ってないんだよねなんだろう?」
私は一人、大きな建物の前に居た。最後のクエストは一人でやりなさいと言われ、ミライさんと師匠の嫌な笑みに見送られながらここまでやってきたのだ。
(とりあえず、中に入ってみるか…)
私はそう考え中に入る、中はとても暗く、何かあるか見分けることができなかった。そうしてボーとしていると突然音楽が鳴りはじめ、そして同時に声が聞こえてきた。
「レディース&ジェントルメン!!今宵、開かれるはコンテストデュエルの宴。皆さまご観覧のほどをよろしくお願いいたしまーす!!」
そう言って高い台の上から飛び降りてくる男、その男はどこかで見たような仮面をつけていた。
「師匠?なぜ師匠がここに?自力でやれと言ったはずじゃ…」
私がそう呟くと突如横から現れた謎のマスクの女がいきなり腹パンを無言でしてきた。
「うっ!」
「…彼は師匠ではない…」
「じゃ、じゃあ一体…」
「そう私の正体…それは…僕だ!!ミスト!!」
そう言って男は仮面を外した。
「やっぱり師匠じゃないですか~!!」
私は師匠ではないといって殴られた腹パンを怒る。加減されていたためそこまでいたくなかったがそれでも腹パンは腹パンだ。
私の怒りを受けても恐らくミライさんと思われる人物と師匠は飄々としている。
「いや…だってな~」
「…ここまでがお約束」
「お約束ってなんですか痛かったんですよ!!」
「それは…すまん…」
「…ごめん」
シュンとしおらしくなった二人、私は正直この二人をうらやましく思う。二人には無理矢理感がない。自然体だ、いつもこうやって自分をさらけ出して生きていることが分かる。それに比べて私は…あの時の師匠の発言も思いだし、私は自分自身を否定し、それでいてなおこうやって輝く人たちの元に自身を偽って近づく自身を恥じた。
…私はどうしたいのだろう…。表の世界でも自身を正直に表しミストとして生きるのか、それとも表を真実としてこちらでも霧として生きるべきなのか…私は自身を変えたくなった。もう中途半端は嫌なのだ。顔色を窺ってビクビクしてもしの可能性を考え続けるのはばれるのではないかと怯えるのは。決めなければいけないと思う。息抜きに使うのではなく逃避で逃げている私はこのまま逃げ続けてはだめなのだと思う。一度決着を付けれなければこの世界の自分も嫌いになる。…そんな気がした。
私が考え事をしていると師匠が話しかけてきた。
「おーい。大丈夫か~?」
「あ、はい。大丈夫です!!」
「よし、大丈夫だな!!言質は取った。良かった許してくれるってよミライ!!」
「…炎皇マジ策士」
「ああ、それは…まあいいですよ…それで何のために呼んだんですか?クエストっていうのは嘘なんでしょ?」
辺りを見回しながら私はそういう。どうやらサーカス会場…いや、コンテスト会場のような場所のようだ。
「お前のためのクエストってのは嘘じゃないさ。俺がわざわざ用意したんだからな…そう。弟子の修行の最終局面ってのはな!師匠の一騎打ちで師匠越えをするって相場が決まってるんだ!というわけでミスト!いや我が弟子よ!!ここで俺とコンテストデュエルで勝負してもらう!!」
パチとゆびぱっちんをしようとして失敗した師匠がそれを隠すためにパチと口で言ったその直後、今でも暗かった奥の方が見えてきた。そこには所狭しと観客が並んでいる。
「人!なんですかこれ!!どういう状況ですか!?」
その疑問に横からミライさんが飛び出して答える。
「…説明しよう!コンテストデュエルとは技のコンボ、見せ方、タイミングの美しさを競い戦う種目のことである。簡単に言えばポ○○ンのあれだと考えてくれればそれでいい。そしてあそこにいるその他みなさんはその美しさを調べるためのNPCの観客である!!」
じゃじゃんと言った後、ミライさんは後ろへと下がりそのままどこかへ行った。そして話を師匠が引き継ぐ。
「解説ご苦労!まっというわけだ。ルールはわかっただろう?さっさと始めるぞ!」
ぐいぐいと進んでいく、師匠を私は呼び止めてしまう。
「ちょっと待ってください!!NPCとはいえこんな人がいるところで!!…」
「ん?やれないのか?」
「え!?」
私が驚いていると師匠は振り返りこちらに向かって歩いてくる。
「ここでは魅せるのがルールだ。現実とは違い、恥ずかしいとか感じる必要はないぞ?むしろ恥ずかしがるのが不自然な世界だ」
「そ、それは…」
「それでも恥ずかしいっていうならそれは中二とか外のルールとかそういったもの関係なしでお前の問題だぞ?どこに行って何をしても変わらないと思うが…」
「私の…?」
「まあ、変えてもいいけどどうする?通常デュエルじゃさすがに差がありすぎるからってこれにしただけだから…クイズデュエルとかにするか?」
私は師匠の言葉に衝撃を受けた。私の問題?そんなわけない。私は師匠が言ったように現実世界の常識に当てはめて恥ずかしいからそう言っているだけだ。この場でもそうやって割り切れないから言っているのだ。私自身は本当の自分を見せたいと思っている。師匠と同じように誇っているはずだ。ただ、この場所で見せる必要はないというだけで…でもこの仮想世界じゃなければ私はいつ見せればいいのだ?ここで見せることもできずにどこで見せるというのか。私は自身の弱さを見た気がした。それは師匠やミライさんにはない…私自身の弱さだった。
それでも私はそれを認めたくなかった。霧を好きなことを表せない偽物の自分だと感じて、ミストを恥ずかしい自分だと感じて否定して…じゃあ一体私は何なんだ?私は何になっているんだ?結局私は本当の自分の弱さを見たくなくて…霧とミストという代表的な役を演じることでそのどちらかを本当の自分だと思いたかっただけなのかもしれない。中二だ、カッコいい自分だ、そういってミストとして生きてきたことをひどく滑稽に感じる。でもそれを認めてはだめなのだ。私の中の大事な部分がそこだけは否定してはダメだと言っているのだ。
「いえ、このままでいいです」
気づけば私は師匠の言葉を否定していた。そしてふっと心が軽くなった。そうだ私は霧もミストも仮面としてきていた。逃げることしか考えない笑ってごまかす弱い人間だ。でも憧れていたのだミストのような自分にだからこそこうやってそこに近づこうと師匠の元に来ていたのだ。
変わるんじゃない…成るんだ
本当の自分を自覚したからこそ言える。変わるなんてちゃっちな物じゃない。私は霧もミスト、そして本当の自分も受け入れて目指すべき自分に成るのだ。
私は自身の一歩を踏み出した。
憧れていたけど誇っているわけではない。むしろ憧れているからこそそういう自分の役を演じている姿を誰にも見せたくない、本当の自分との差が見えて嫌だ…つまりはそういう心理。変わる変わる言ってたのはそれに近いものになっている。変わろうと思えれば変われるということを信じたい心理、自身のそういった部分を見つめることでようやく理想の自分に変わるのではなく、めざし、成る決意が付いた的な事




