クエスト -「デュエル…?なぜデュエルになるのだ?」-
リアルに戻ってきた俺は、まずお腹を満たすためカップラーメンを取り出した。栄養が偏るとか言われるかもしれないが手軽だから仕方ない。
見る人がいなくなれば家事をサボりまくる…それが一人貴族が長かった人間の当たり前の姿ってやつだ。
ずるずるとラーメンを啜っていると俺の携帯に着信があった。食事中だからとあっさり無視をすると携帯は何度も何度もなり続けた。煩さに我慢できなくなった俺は勢いよくそれを手に取る。
「うるせーよ!!」
「早く出ろ!!」
二人同時にお互いに罵声を浴びせる。あまりにもお互いに一気に言ったため逆にお互い冷静になった。
「あれ、優理か?」
「ん。夜中に報告の電話するって言った」
「ん~そんなこと言ってたっけな~」
「…」
優理から電話越しに無言の非難が聞こえてくるが覚えてないものは仕方ない。優理たちのことは浅見さんに丸投げしてしっかりと(ここ重要)しっかりと預けたからすっかり忘れてた。
あまり行儀のいいことでないが、電話相手が知り合いだったため、麺が伸びないようにずるずると吸い食べながら電話を続ける。
「んで…ズルズル…なんか報告あるのか、んぐんぐ」
「沢山ある。…それよりもカップラーメン食べてるの?」
「うん」
俺は何のやましい気持ちもなくあっさりと言葉を返す。
「栄養偏る。しっかりして。一人でいるときの食生活がそれじゃ困る」
「いや困るって別にお前には関係ないだろう。俺の食事だ!俺が決める!」
「ダメ」
「なんでだよ」
「ダメなものはダメ」
食事まで制限されたらたまったもんじゃねーぞ、好きな物食べて何が悪い!!と言い切ってやりたいがさすがに幼女相手に大人気ないし、何かこのまま話し続けたら押し切られそうだ。俺は自然に話題を変えることにした。
「まったく今日は忙しかったんだよ…」
「忙しい?」
「そう聞いて驚くな…俺はついに弟子を取ったのだ!!これで俺も立派な師匠…師匠…いい響きだよな…」
「弟子!?」
「そう弟子だ、これがなかなか見込みのある女の子でな…実は…あれ、電話切れてる…」
話題を逸らすどころか、ぶち切られたことに疑問を感じつつも。俺はま、いっかと流しカップラーメンを食べ終えた。明日も休日。おそらくクエストの続きをやることになるだろう。弟子の修行の終わらせ方を考えながらその日は寝た。
☆☆☆
再びゲーム内。次の日、広場に集まった俺達はイベント現場に向かい…門番と喧嘩をしていた。
「通してくれよ。急用なんだ」
「だめだ。今日は仮装パーティが開かれることになっている。そんな通常の服の人を通すわけにはいかぬ」
「良いから通せよ。…仕方ない、おいデュエルしろよ」
「デュエル…?なぜデュエルになるのだ?」
「新訳カードゲーム語が効かない!!こりゃマジでダメなパターンだ!!」
「そこで判断ですか!!」
ミストの驚きのツッコミを受け、俺はしぶしぶその場を後にする。そしてミストとミライがいる場所に戻った。
「ありゃダメだ。どうやら他にイベントフラグがあるみたいだな。ミライはわからないか?」
「…随分まえだから覚えてない」
「…嘘ついているんじゃないだろうな?」
ミライは先のダブルクエストでの出来事もある、俺が警戒して見ると。
「…こんなつまらないことで準備はしない!」
と胸を張って威張るミライ。俺はため息を付く。その時、ミストが声を掛けてきた。
「仮装パーティが開かれるって言ってましたし、服を買えばいいんじゃないんですかね?」
「そうかもしれないな…この辺で服屋となると…イベントだからマップに載るか?…あ、あったここか」
俺は目的地を発見する。
「ふふふ、私の封印されたファッションセンスを見せるときが来たみだいですね!ううう、右腕が疼きます。」
「…なら私は左目が疼く…」
「対抗意識燃やすなよ!!というか右腕の疼きってポピュラーすぎ、中二目指すならもっと人が思いつかないワードを探せよ!!」
「は!私の中二論が論破された!!ええいならお尻が疼き…」
「ただの変態だからな!それ!!」
今日もボケ倒す二人に突っ込みながら俺たちは服やへと向かった。
☆☆☆
「師匠!師匠~!!どうですかこれ!!」
いつもの魔法少女ルックの服装を巫女のような服に着替えたミストが声を掛けてくる。
俺は仮面を手に取りながらもそれを見ていった。
「まあ、いいんじゃないか?」
「反応薄いですね!?」
「いや~封印されたとか言ってたからハードル上がっちゃったわー」
「無意識の中二潰し!?自分だって中二の癖に!!」
「俺は中二じゃない、自分に正直に、カッコいいと思ったことをしているだけだ!!」
「…炎皇が中二なら妄想力で地球滅ぼしてる。そう、これで卒業しているのだ…」
「毎回思うけど。その過剰な俺への信頼感なんなの?俺、そんなにアレな感じ?妄想が現実に影響を及ぼすなんてそんなこと…いや?カード物的にはありなのか…」
「…は嘘ばっかり」
「あれは素晴らしくカードアニメらしい物語でした…(白目)」
「二人とも何言ってるんですか!!それ以上は無しですよ!!…まったくもう…師匠はどんな服を選んだんです?」
弟子のその質問に俺は良く聞いた!と大げさにマントを広げ姿を現す。奇抜なガラのシルクハット、白いスーツ、棚引くマント。…そして口から上の顔を覆うマスク…どこからどう見ても…
「…変態ですね」
「マジシャンだよ!!」
俺の思考を先読みしたかのように言う、ミライの一言に俺は突っ込む。どこをどう見たら変態になるのだ…。ミライには一回こっち方面の知識を教育したほうが良いかもしれない。
俺はそう考え、弟子であるミストを見る。そうミストならわかってくれるはずだこのカッコよさを、世界を救うために暗躍する謎の怪盗紳士…それが今の俺なのだから。そう思い、見た先でミストは
「お、おう…」
と実に困る反応をしていた。
「反応薄くない!?」
「師匠が言えることなんですかそれ!!っというかそれ恥ずかしくないんですか?」
弟子が真顔で質問をしてくる。俺はそれに当たり前だろっと言った形で答えを返す
「恥ずかしいか?そりゃ少し恥ずかしいさ」
「恥ずかしいってわかってて、そんな恰好するんですか!!」
「そうだ!そりゃ恥ずかしいって気持ちもあるさ、今の社会ではこんな恰好をした奴は変態だってみられるだろうしな」
「…自覚はあるんだ」
ミライの言葉が心を抉る。俺はそのダメージを立て直しながらも言葉を続けた。
「ウォホン!ゴホン!…でもさ、それで恥ずかしいからって何かを諦めるなんてそんなの可笑しいだろう?だって俺は好きなんだこういう恰好が!!カッコいいと思っているだよ!!好きだと認めておいてそれを偽って生活するなんて自己の否定だ。人様に迷惑をかけるものでもないのに何でそんな窮屈な思いをしなくちゃいけない?」
俺は拳を握りしめる。思い返すのは中学、高校とカードゲームをやってきた俺に対する主に女子たちの目線…うわ~アイツオタクだよ~とかカードゲームなんてやってると笑われた記憶がよみがえる。だがだからこそ俺は言う。カードゲームやって何が悪い!俺は好きだからやっているんだ!!お前たちがキャーキャー騒いでるサッカーをやる少年と何が違うのかと!何も変わりはしない、好きになったものが違っただけで何かに打ち込む姿勢に変わり何てないんだ!!
「だからこそ俺は!!恥ずかしいとは思ってもそれを認めない!!だからこそ俺は!!この恰好をするんだ!!俺は周りのために生きているんじゃない、人それぞれの周りの価値観に合わせるつもりもない!だたその時その時、自分がすべきだと思ったことを!心から正直に行動するだけだ…わかったか弟子よ!!」
俺はポーズを付けて弟子を見る。我ながらなかなかにいい名言だった。きっと弟子も感動にむせび泣いているだろう…そう思って見ると、弟子は唖然とした表情で口を開けて固まっていた。
「あれ?なんか思ってた反応と違う…」
「…わー、キャー。カッコいい炎皇ーそこに痺れる憧れるー(棒読み)」
「せめて感情を込めてくれよ!!」
代わりに反応してくれたものの棒読みで返してきたミライに思わず言葉を叫ぶ。閉まらないなとため息をした後、俺は弟子の頭の上に手を載せた、そして即座にミライに弾き飛ばされた。どうやらラノベの主人公のようなナデポは俺のようなオジサンには一生無理な芸当のようだ。
「ま、何をそんなに唖然としてるかは知らないが、自分で良く考えるこったな」
「そ、そうですね…」
そして再起動した弟子と共に俺たちはパーティ会場へと入っていった。




