クエスト -「この痛みこそ!!師匠の愛!!!」-
「…町に到着…」
「さてと…なになに『まずは裏街道に行こう!!イベントフラグを満たしているならそこに一人の少女が傷だらけで倒れているはずだ。彼女に話しかければフラグ成立。摩天楼広場へと向かい敵モンスターを倒そう!!敵モンスターは重量級のドラードと言われるモンスターで動かないが固いので摩天…』」
「何呼んでるんですか師匠?」
「ん?ああ、水精の攻略サイト。こういう時に便利だからな、相手が分かってれば戦い方もわかるし、まあ楽しみがなくなるからとりあえずミストはこのストーリー解説の部分だけ読めばいいと思うぞ?」
「はあ」
俺は表示したサイトのストーリーが載っているページを弟子に見せる。
「えーっと『古き時代。魔法がこの世界には存在した。だが機械の発展と共に魔法文明は廃れ今やごく一部の魔法使いのみがその技を受け継ぐだけとなっていた。人知れず魔法が受け継がれる世の中、何も起こらない日々、だがそんな平和な日々は突如崩されることとなる。一部の魔法使いたちが自分たちの欲望のために古の魔法を再現しようと暴れ始めたのだ。魔法という未知の物に対応することができない人々、だがそんな彼らの希望が立ち上がる魔法少女…そうあなただ!!』ってえええ!!私、魔法少女だったんですか~!!」
「そんななりして突っ込むところそこ!?…まあいい。とりあえず魔法少女ってことで問題は無いんだ。この世界のプレイヤーはコ○ミ君方式だからね、それこそ未来から来たロボットにもなるし、世界を滅ぼす闇の手下になったり、主人公たちと同じ力を持つ人間になったり、ただの学生になったりなんでもありだから。…男女兼用だからそれこそアーサーみたいなゴリゴリのマッチョでも魔法少女扱いだから…うん」
「…マッチョな魔法少女…ぷぷ」
想像をしてしまったのかミライはおなかを抑えながら笑いを堪える。
「ま、とりあえず自分が魔法少女だと思ってなりきればいいんだよ。このコ○ミ君システムの売りはそこだからな。実際俺も謎の乱入者として楽しんでたわけだし。楽しんだもの勝ちってやつだよ」
俺のその言葉に弟子は一旦考えるように視線を下げ、顔を再び上げる。
「そうですよね。楽しんだもの勝ちですよね!」
「そうだ、とりあえずちゃっちゃと倒れてる魔法少女の元に行って来い」
「はい!!」
弟子が裏路地へと走っていく。追いかけようとした俺をミライは止めた。
「なんだ?」
「…ちょっと用事があるから抜ける。すぐに戻ってくるから」
「わかった。こっちは任せておけ」
そう言って走り去るミライを見送ってから俺は路地裏の入り口に隠れ、弟子の行動を見守り始めた…
☆☆☆
「大丈夫ですか!?」
血まみれで倒れる紫の髪の少女に弟子は近づき話しかけた。彼女は少女の体を腕で支えるように上体を持ち上げる。
「あ、あなたはもしかして追加の魔法少女?」
倒れる少女のその一言にテンパった弟子は
「あ、はい」
と素っ気なく返した。
(ドンマイ弟子!!だが大丈夫!!ちょっとくらいのミスならロールに関係はないさ!!)
「そうなのね…私は…もうダメみたい…私を倒した相手が…摩天楼広場に向かった…。私の代わりに奴を…ドラードを倒して…」
そう言った後、彼女の体から力が抜け…倒れた。
「魔法少女さん!!魔法少女さん!!目を覚ましてください!!」
何度も少女を揺らし話しかける弟子。するとどうしたことか再び少女は力を取り戻し上体を持ち上げた。
「あ、よかった魔法「あ、あなたはもしかして追加の魔法少女?」え‘え‘え‘!!」
先ほどとまったく同じことを言う魔法少女に弟子が驚き声をあげる。だが弟子は律儀に答えを返した。
「そ、そうです!!」
「そうなのね…私は…もうダメみたい…私を倒した相手が…摩天楼広場に向かった…。私の代わりに奴を…ドラードを倒して…」
そう言った後、彼女の体から力が抜け…倒れた。
「はっ!!魔法少女さん!!魔法少女さん!!目を覚ましてください!!」
何度も少女を揺らし話しかける弟子。するとどうしたことか再び少女は力を取り戻し上体を持ち上げた。
「あ、あなたはもしかして追加の魔法少女?」
「え‘え‘え‘え‘え‘~!!そ、そうで…」
「何回繰り返すつもりだボケ~!!」
「プギャー!!」
俺の怒りの拳が弟子の頬を貫く、弟子は奇妙な叫び声をあげながら地面に落ちた。
「な、何するんですか師匠!!」
「お前こそ何回続けるつもりだ!!もう楽にしてあげようよ彼女を!!どっかのゲームのカブトムシみたいに潰されたのに何度も最後の気力を振り絞らされて永遠とヒントを言うキャラになってたぞ!!」
「そ、それは!!でもでも。あんなに同じこと繰り返すとは思わないじゃないですか!!」
「確かに技術が進歩して人間とほとんど変わらない応答を返してくれるNPCはいる…いるけどこういう場面じゃ使われないんだそれは!!」
「なんでですか!!むしろ使うべきところなんじゃないんですか!?」
弟子のもっともな質問に俺は苦い顔をして答える。俺自身アプリを制作する段階で自動返答NPCをキーイベントキャラにしようとしたこともあった。あったが!!
「いいか、よくよく考えてみろ…自由に行動をするキャラが誰が相手でも同じ場所にいて、同じ内容の台詞を言わなくちゃいけないキーイベントキャラに合うと思うか?」
そう、そこだ。根本的な問題なのだ。どんなにゲームが進化してゲームの中の世界に入れるようになったとしても、ゲームの根幹は変わらない。
ゲームがゲームとして成立するためには運営側のある程度の操作が必要となる。それこそクエストもNPCも自動生成なんてことをしたらすぐにゲームバランスが崩れ、この世界には誰もが一人しか持てない最強武器が大量に溢れるだろう。それだけではない、人に聞いて同じアイテムを得ようとしてもそのイベントが自分にもできるイベントなのかすらもわからないのだ。こんな理不尽は無いだろう。
「合わないよな?そんなことしたらクエスト自体そもそも発生しないって可能性がある。そもそもクエストなんてゲーム的要素リアルではないからな、あれはゲーム性を構築するためのもので自動生成によるリアルの追求とは対極にあるものなんだ。喋るNPCがいて自然にイベントが起こるのは漫画やアニメや小説の主人公オンリーのことを考えればいい世界の賜物だ、現実の大量のプレイヤーが遊ぶゲームにはそんな要素はいらないわけだ。そして…」
俺は一旦言葉を切り弟子が内容についていっていることを確認してから続ける。
「もし、仮にこの自動生成行動キャラ…まあ人間的なAIを持ったキャラにキーイベントキャラとしての役割を持たせるととんでもない事態が発生する…これを見ろ」
俺はそう言って、俺の作った黒歴史のゲームのことについて書かれたサイトを弟子に見せた。
「えーっと
『田中.COM:やべー、リーンちゃんが死んじゃった。ギースに殺されたよ!!クエストでギース討伐が出たわ。ユーラちゃんの依頼で!!』
『たぬぞう:は!?何言ってるんだよリーンちゃんならピンピンしてるぞ?むしろギースと仲良くやってる。あれ怒りがわいてきた誰か壁ない?壁』
『ヨコヨコ:お前たちこそ何言ってるんだよ!ギースが殺されたよ!しかもリーンちゃんとユーラちゃんの二人に、何か酒場の店長に依頼されたわっていうかいくらイベント発生したからって途中まで話していた相手置き去りにして突如語り出して通行途中なのに異空間からウーロン茶出すのはやめてください。笑ってしまいます、シリアスな内容なのに』」
『(/・・):へぇー皆そんな殺伐としてるんだ。今、俺の目の前の井戸の近くでは渦中の四人が仲よさそうに井戸端会議してるよ』
『蓮華:HAHAHA!!テラカオスwwww』
…なんですかこれ?」
俺は拳を握り涙をこらえながら弟子の疑問に答えた。
「それは若かった頃…自動生成こそ最強さ!!と思ってた頃の俺が作り出した黒歴史だ…クエスト自動生成をONにしてNPCのAIを上げた結果、キーイベントキャラの動作とクエストの統一性がなくなりカオス空間になってしまった俺のゲームの成れの果てさ。よくよく考えてみれば当たり前のことだったんだ。現在のゲームですら自動生成ダンジョンを制御しきれないゲームだって沢山存在するのにそんな中で挑むから…自動生成達が変な風に作用し合って、ドラゴンに刺さっている伝説の剣がなぜかリコーダーだったり、普通の好青年がイベント発生と同時に突如奇怪な声をあげ踊りだし、イベントが終わったら何事もなく元通りに話始めたり…、異空間からキーアイテムを取り出すことなんて朝飯前、ゲーム内の文明が崩壊して誰もいなくなった…なんてこともあった」
俺は遠い目をしながら話を続ける。様々な場所からプログラムを自動生成プログラム手に入れて作成したゲームはとんだゲームになってしまった。ただ一つの救いはネタゲームとしてそれなりに売れたことだけだろう。だが俺の制作者としてのプライドはメッタメタにされたのだ。
「いいか!!ミスト!!これが自動生成の恐ろしさだ!!迂闊なものが足を引き入れれば深淵に誘われる。とても恐ろしいものなのだ!!」
そう、それを理解しているからこそこのブレイブカードではクエストは人間の手で作り、イベントキャラは昔のゲームと同じように誰もが共通で同じことができるように同じ言葉を喋り、一定の場所に留まり同じ行動をするキャラが使われるのだ。
これで誰もが欲しいカードのクエストを調べられ、そして先ほどのようなおかしな解答こそあれ、それ以外は特に問題がない平和なゲーム環境が維持されているのだ。
「なるほど…わかりました。師匠はそれを私に理解させるために殴ったんですね…つまりこの痛みこそ!!師匠の愛!!!」
「変なユべ○ズムに目覚めてんじゃねー!!」
「ブヒャー!!」
再び俺の鉄拳制裁が弟子の頬を貫いた。心が痛むが弟子を子供タイムにヤンホモ、ヤンデレ発言を連発するようなものと同じ道に進めるわけにはいかない…この拳こそ俺の熱血指導!!の賜物だった。
その時、ミライが路地裏の入り口からやってきた。
「…あれ?まだここにいるの?」
「ああ、ちょっとAIループに入ってな、そっちの用事は終わったのか?」
「…問題なし。一回話を聞けば途中で終わらせても大丈夫なはず」
「そうか、じゃあさっさと広場に行くか…しかし広場か…どこかで見たような…」
俺がそう呟くと頬をさすりながら弟子がやってくる。
「攻略サイトでみたんじゃないんですか?それにしても慣れてくるとこの痛みも…うそですうそです!!だからその拳を下げてください!!」
俺はその言葉によって拳を下げ、考える。
「う~ん。そうかもな。まっ、いっか。じゃ広場に行こうぜ!!」
俺達は路地裏を抜け、広場へと向かっていった。
豆知識
実は演唱の最後にドローを付ける人と付けない人にはとある差が存在します。
それはドローを付ける人はカードゲームや、カードアニメからブレイブカードに入った人で、逆につけない人はブレイブカードからカードゲームに入ったもしくはカードゲーム自体やらない人です。
原因はカードゲームをやっていると何かを引くときに無性に俺のターンドロー!!と言いたくなるためです。特に仕事で集めた名刺の束をみて「ドロー」と言ってすぐに恥ずかしくなってやめたあなた。あなたは重症です。今すぐ○馬先生の元でカットビングを処方してもらいましょう…なんちゃって




