番外編 皆でお買物
様々な商品が並ぶ店内。県内にある数少ないデパートの一つで俺は大量の荷物を背負いながら前を歩く優理たちを追い歩いていた。
「瀬那。あっち」
「あ、そうですねこの商品はあそこですか」
「おいお前ら観ろよ!!これおもしれーぞ!!」
三者三様の反応を見せながら商品を物色し、駆けていく三人。俺はそれを見ながら声をかけた。
「おーい。あんま走んな。迷子になるし転ぶぞ~」
俺がこうやって買い物をすることになった理由…時は数時間前に遡る…。
☆☆☆
「レギオン結成祝いとしてレギオンメンバーで旅行に行きたい?」
「うん」
突然、家に訪ねてきて開口一番に優理たちが言い放った。
「どうしてまた?だいたいどこに行く気なんだよ?」
「親睦を深めようと思いまして…リアルで軽井沢に向かいます」
「リアル!?なんでまた!?わざわざ本物じゃなくてもVRでできた仮想観光地のコピーアースの軽井沢行けばいいじゃないか?わざわざ移動とかリアルは大変だぞ?虫とかいっぱいいるし」
「何事も経験だろ?何でもかんでもVR、VRってちゃんと本物を知らなければ良さがわからないだろうが」
美雪の言葉に優理と瀬那はうんうんと頭を縦に振る。どうやらまだ若い彼女たちは作り物ではなく実際の軽井沢の姿が見たいらしい。
まあ、気持ちはわかる。俺はわざわざ移動がメンドクサイからボタン一つで日本からブラジルまで…のうたい文句で知られる現実世界の観光地をそのままコピー(虫などの要素は排除)されたコピーアースに頼りたくなるがこんな荒んだ大人と違って子供たちは元気なのだろう。
年取ったな~俺にもあんな時代があったのかと思いつつ言葉を放つ。
「いや、それでもダメだ。さすがに幼女三人におっさん一人で旅行はまずい…ただでさえあの警察官に目を付けられて最近監視されているような気がするのにそんなことしたらまじで逮捕されちまう。保護者なしで旅行なんて認められるわけないしさすがにだめだ」
可能な限り本人の意思に任せるのが俺のスタンスだが、さすがに犯罪に巻き込まれる危険があるところに子供だけで放り出すほど薄情ではない。
俺の言葉を聞いた、ユーリ達は待ってましたと言いたいようなドヤ顔した。
「それなら問題ない。浅見さんに頼んだ」
「ババアはああ見えても武術の達人だから一緒にいれば危険に巻き込まれることはないだろ?」
「ああ、浅見さんに頼んだのか…それなら、まあ」
ちなみになぜ優理が浅見さんを知っているのかというと少し前にリアルで知り合ったからだ。
アーサーこと浅見さんと俺、美雪が知り合いだと知った優理と瀬那は浅見さんに会いたがった。せっかくなので雷門も読んで俺のリアルでの知り合いを合わせたわけだ。
…今回ゲームに関連するということで二人にしただけで決して友達が少ないわけではないということはここでもう一度言っておこう。
まあ、それはさておき、リアルで浅見さんと雷門に合った二人…いや雷門のことを含めると三人か。は大層驚いた。なんせゲームでムキムキマッチョメンのアーサーはリアルでは凛々しい系の女騎士だし、ゲームでチャラ男風のライムはリアルではインテリメガネのエリートサラリーマンだ。いくらアバターとリアルは違うと言えここまで違えば驚くだろう。
そんなこんなで三人は現在も浅見さんや雷門との交流は続けているらしい。俺の気づかないところでアイツらと思いながらもしょうがないことなので流し会話を続ける。
「浅見さんは『ふ、私がいる限り彼女たちに不埒なものは指一本触れさせないと約束しよう』って言ってましたよ」
「相変わらず本当に女騎士みたいな人だな!!まあ理由は分かったが俺にわざわざ話す必要はないんじゃないか?話が済んでるなら勝手にいけばよかっただろう?」
「兄さんもレギオンメンバーなんだし旅行に行かなくても手伝ってもらいます!!」
そう言って瀬那は一枚の紙を俺に向かって突き出す。
「これは?」
「雷門さんに算出してもらった旅行で必要なものです。これを買いに出かけますよ!!」
☆☆☆
まあ、そんなこんなでこうやって買い物にデパートに来たわけだ。…正直これもVRの中で買えよっと心の中で思ったが。理由はわからんがリアルでの購入を押し切られた。
こうしてついて来て観てわかったがどうやら子供はお出かけしていろいろ見て回るのが好きらしい。
(大人になると効率厨になりすぎていけねーな)
と心の中で思いつつ進む。既に当初予定した時間の二倍となり、手に持った荷物の量も着々と増え続けている。
(女性と子供の買物は長いってよく言われるがその二つが交わってまさに無敵に見えるな…一体いつ終わるんだこの買物?)
動いては商品を手に取り、動いては商品を手に取り、もはや本題と関係ない買い物でもわいわいきゃぴきゃぴやっている三人を見て俺はため息を付く。全国の娘を持っている荷物持ちのお父さんの気持ちはこんな気持ちなのかもしれないなと一人っ子で男の俺は考えつつあるく。
…正直、荷物持ちなんて初めての経験だし、重いし、退屈で退屈で仕方なかった。
そんな俺の気持ちを察したのか三人が声をかけてくる。
「兄さん!この服とこの服どっちがいいと思いますか?」
「え?ああ、そっちが良いじゃない?」
「え~そっちかよ~」
(どないせいっていうねん!!)
心の中で憤りを感じつつ俺達は買い物を続けた。
☆☆☆
ボーとしながら三人の買い物を待っているといつの間にか三人がいなくなっていた。俺は慌てて辺りを見回すが近くに姿は見えない。
(あいつらはしゃぎ過ぎて俺から離れていったな!!…)
「…はあ」
ため息を一つ吐く。迷子探しまで加わるなんてつくづく買物は大変だ。
動き出そうとした俺は近くあった商品を見て足を止めた。
「これ…」
俺はその商品に手を向ける。そこはコスプレショップだった。…いやなんでデパートにコスプレショップ?と思うかもしれないがこれはデパート側の切実な事情が関係している。
VRによる通信販売が主流になった現代。生き残った小売店は二つの道のどちらかを歩むこととなった。それはコンビニのような即時性を求める形態と人を集めるために普段入れていない商品を仕入れる多様性を極めた形態の二つだ。
…VRが発展して小売りが衰退することと共に一つの問題が浮かび上がった。それは倉庫の問題だ。
いくらVRで購入しようとも商品が届かなければ意味がない。またあらゆるものを変えるというVRの特性を生かすためには各地方にそれぞれ拠点となる倉庫が必要となるが場所は現代日本だ。そんな場所すぐに集められるわけじゃないし、ただの倉庫にしておくには料金も高い。悩んだ流通業界が目を付けたのは衰退した小売業界…特にいえばスーパーや大型デパートだ。
これらは元々大きな倉庫を自前で持っていることに加え、今だ取引のない商品を店頭に出すことで品物が溜まる…というリスクを回避することができる。流通業界からのこの申し出にもはや希望の道はない小売達群がり取引は成立した。
そしてその交流の中であるシステムが生まれる…POSシステムは知っているだろうか?
POSシステムとはコンビニなどで使われている売り上げなどを集計し、どの商品が売れているか調べるシステムのことだ。小売と完全に提携した流通は他の流通企業とも提携、国規模の大規模集計システムを作り上げた。それによりVRで購入した商品の傾向などによってその地域の特色に合わせたものが倉庫…デパートに配備される。
時の経営学者の一人が「デパートを見ればその地域のすべてがわかる」といった言葉を残すほどこの時代のデパートはその地域の特色を表すのだ。
(ってことはつまりこの地域のコスプレイヤー率が尋常じゃないって証明なんだよな~デパートにあるってことは。…なんだかな~いや場所によってはもっとアレなものが大量にあるところもあるっていうしまだまともなのか?なんかもうカオスだな)
物珍しさで商品に手を伸ばそうとした俺の手が誰かの手にぶつかる
「おっと」
「あっ」
その方向に視線を向けると茶色に近い髪質でメガネをかけた小さな背の地味そうな容姿の幼女がそこにいた。
「え、あっ、あ。すみません!!失礼します!!」
俺の目に気付くと幼女は逃げるように走り去っていた。
俺は彼女が手に取ろうとしていた魔法少女系のコスプレに目を向ける。
(あれ?物珍しさから手に取ろうとしたけど…俺もしかして危ない人と誤認された?)
「え~」
俺ってそんなにやばいかな。一応気を付けてるつもりなのに…。自分の社会的な評価に悩んでいるとそのコスプレの近くに合った商品が目につく。
「ん?アクセサリーかコスプレショップでもこういうのがあるんだな」
俺はそれを手に取り、見回した。うん、悪くないそこまでコスプレぽいってわけでもないし普通でも使える品物だろう。
俺はそう考えその商品達を購入する。ちょうどそこに優理がやってきた。
「もうどこ行ってるの?勝手に迷子にならないで」
「な、お前らが勝手に進んでったんだろう!?むしろ迷子はお前らじゃないか!!」
「いいから来て!また荷物増えたから!!」
「まだ増えるのかよ~ホントいい加減にしてくれ…」
項垂れるように言った俺は優理に引きずられていく
その後も数時間、俺は重たい荷物と格闘した…。
☆☆☆
帰り道、大量の荷物を運ぶは無理だと判断した俺は素直にタクシーを呼んだ。
現代のタクシーはVRによる移動回数の減少により、個人での車持ちが少なくなったため、その役割を埋めるために重宝され。移動。そして積載量に優れている。
重たい荷物を全部そこに押し込め乗り込む前に俺は三人を呼び止めた。
「三人ともこれあげるよ。俺からの結成祝いってところだ」
「これは?」
三人は受け取ったアクセサリーを手に取ってみる。
「あの~なんか腕に付けるやつだ。良くあるだろうお揃いで色違いのそういうの皆で買うって。偶然そういうの見つけたからな買ったんだよ」
「へえ…」
三人が嬉しそうに腕に付けるやつを付ける。色はそれぞれのアバターの髪の色に合わせて買った。優理が青で瀬那が緑、美雪が金で俺が黒だ。
「ま、買い物はこうやって必要なものを正しく買わないとな」
「全部必要なものだし」
ふくれっ面になる優理たちを連れて俺は帰路に着いた
番外編 皆でお買物おわり




