レギオン -選ブ-
「ぐあ、はあはあ…」
目の前にアーサーが立っている…何とか二枚にまで手札を減らさせたがそれだけだった。今やこちらの手札はゼロとなっている。
「くそ…!!」
「ここまでのようだな」
そう言ってアーサーが近づいてくる。
(俺は負けるのか?)
そう思った時、森の方から言葉が聞こえてきた。
「そうだなここまで見たいだ…よっと」
「お、おめぇは!!」
俺とアーサーの間に立ちふさがった男…それは炎皇だった。
「ま、何とか間に合ってよかった。じゃあそろそろ反撃開始と行こうぜ」
「くるか少年!!」
俺の目の前で一進一退の戦いを繰り返す炎皇。俺は心なしかそれに勇気づけられた。
(そうだ、まだ負けちゃいね~ここからでも逆転してやる)
俺はそう考え演唱を行う。
『光り輝く魔道の煌めき。今、カードとなって敵を撃て!!来いカード!!』
「こ、これは!?」
俺は引いたカードを見て驚いた…それは俺が入れたはずもないカードだったからだ。
<M-ライドシャイニング…攻撃魔法の攻撃範囲を上げ、ダメージを+1する。皆の力、オラに的な?>
「な、なんでこのカードがどうして…は!?そうかあの時か!?」
『「人の心配をするより自分の心配をしろよ。相手はお前狙いで来るんだぞ?デッキはしっかりと作ってきたか?俺がちょっと確認してやるよ」
「当たり前だろう?昨日作ってきたデッキだ。渾身の作だぜ見てみろよ」』
あの時の会話を思い出してどこで入れられたのかを理解する。きっとあの時デッキを確認するふりをして混ぜ込んだのだろう。だがなぜそんなことをしたのか俺は理解できなかった。
(いや…あのためか?)
その時もう一つの会話を思い出す。
『「…あんたは俺に今まで通りで居ろって言うのか?」
「いや、そうじゃない。どう生きるかそれを決めるのはお前だ。…ただ自身の気持ちを偽って生きることや何も知らず安易に選ぶことはは許さない」
「自身の気持ちを偽る何も知らずに選ぶ…」
「自身の気持ちを偽り孤高を続けてもそれはお前の本当にしたい生き方ではない。そしてこのままアイツの計画に乗せられて友達が出来たとしてもそれは何も知らない幻想の友達だ…いつか絶対後悔する。こんなはずじゃなかったってな。どちらを選んでも同じだそれはお前が本当の意味でそれを選んでないからだ。正しく生きるには進んでいくにはお前自身の意思が大切になる。それがなければ何かを選んだところで意味はない。だからこそ自分で選べ。それが答えだ。チャンスは俺が作ってやるよ」
「チャンスを貰ってももともとそんなに簡単に選べればこんなにも悩んでないさ」
「物事には必ず終わりが来る。…悩んでいることにもどんな形にせよ終わりは来る。そのチャンスが来れば意外と選択できるものさ」』
(俺に選べっていうのか!今ここで…これがお前が用意したチャンスだっていうのか!?
俺はライドシャイニングを見つめる。そして考えた。
(この場でライドシャイニングを使えば今、炎皇が使っている魔法を強化してアーサーの手札を一気にゼロにできる…そうすれば簡単にアーサーを倒せるだろう…だけどこの場でライドシャイニングを使わなくてもこれをただのシールドとして運用して他のカードをドローして戦えばそれでもアーサーを倒すことはできる。炎皇との戦いで疲弊したアーサーを倒せばいいだけだ。一見どちらを選んでも意味の無い選択肢だが今の俺が選ぶことに意味があるってことか…)
孤高の道か協力の道か、いささか唐突過ぎる決断の場だが、今までグダグダと悩んで決断できなかった俺にはちょうどいいだろう。
…俺は決心をした。
(俺の負けだよ炎皇…そうさ俺だって仲間とわいわいやりたいさ。これが意地張ってた俺に与えられたチャンスってならそれを掴んでやる!!)
「発動!!ライドシャイニング!!」
その言葉と共に炎皇が出した炎の魔法の威力が上がる。アーサーはそれに一瞬、驚いた後、満足した顔で炎に包まれた。
「やれ!!ミユ!!」
「おう!!」
そして手札の無くなったアーサーに殴り掛かり…俺は、いや俺たちは勝利した。
☆☆☆
バトルが終わり皆で仲良く勝利の余韻を分かち合うユーリとセナとミユを眺めながら俺はアーサーに近づいていった。
「少年か。君の思い通りに負けてしまったな」
「何言ってるんだか~。わざとそうなるように仕向けたくせに」
俺の追及の目線をアーサーは何食わぬ顔で流す。
「はて?何のことかな?」
「とぼけるなよ…俺はあそこにたどり着くまでマサキ、レンと二人と戦っていた。…正直いって俺がアーサーとミユの戦いに間に合うはずがないんだ。…アーサーがわざと戦いを引き延ばさない限りな」
「…我が嫌がらせで戦いを伸ばそうとしたとは考えないのか?」
「そんなガラじゃないだろう?アーサーは」
その言葉を聞いてアーサーはやれやれと首を振った。
「まったく適わないな少年には」
「そりゃど~も。ところでなんで心変わりしたんだ?マサキの計画に賛成してたんだろう?」
その質問にアーサーはにやりとして答える
「単純な話だ。挫折して必要とするより、乗り越えて必要としたほうが良い…そうだろう?」
アーサーのその言葉に俺は少し笑って
「違いない」
と答えた。
「少年もそろそろあの中に言ったほうが良い」
「そうだな、そろそろ行くか」
アーサーの言葉に従い俺はミユの元によった。
「よ~し。じゃあ早速。勝利の報酬の話しようぜ!!最後まで残ったのは俺とミユだけど今回の報酬は最後まで諦めなかったミユに譲るよ。レギオン名好きなのにしていいぜ?」
その言葉にそこにいた者たちはハッとなった。
「そういえばそんな賭けをしてたっけ」
「ミユさんいいのお願いしますよ?」
「ん」
全員の機体の視線が集まる。そしてミユが答えた。
「じゃあ、愚蓮場途瑠で」
「却下だ」
「却下ですね」
「却下」
周りから全否定されたミユは声を荒げる。
「お、お前ら好きなのにしていいって言っただろう!!」
「ものには限度があるわ!!この面子にその名前が似合うのかよ」
「そうです」
「同意」
疲れた顔をして俺は言った。
「もっとまともなのにしてくれ…」
「わ、わかったよ。じゃあレギオン名は――――」
☆☆☆
「ふう」
いつものように俺は家でアプリを作っていた。一作業終えて息を吐く。
「なんだかんだ最近ゲームして仕事してなかったからな…たまったの片付けないと」
そう思いながら再び作業をしようとするとチャイムのなる音がした。
「ん?宅急便か?」
反応し動こうとすると今度はバコンと何かを吹き飛ばすような大きな音がした。
「な、なんだ!?強盗か!?」
俺は反射的にハエ叩きを取り、構えながら音の元に忍び寄ろうとする。だがその前に俺の部屋の扉が開かれた。
「優理と瀬那はいるか!?」
そう叫んで入ってきたのは美雪だった。
「美雪なんでここに!?」
「炎皇、優理たちは?リアルで遊びに来たんだけど?」
「隣の家だよ。というかビックリするからあんな開け方するな!」
「なんだ、間違えちまったか…あ、そうだこれ受け取れよ」
「お前、話を聞いて…ん?これは?」
俺は美雪から投げられたリヤンショワと書かれたそのお菓子の箱を受け取る。そしてその意味に気付いた。
「お前これ、レギオン名と同じ…」
「偶然見つけたんだよ!これは礼だ!!じゃあな!!」
そう言って美雪は隣の家へと向かった。
リヤンショワ…これは絆の選択と言う意味だ。レギオン名を付けるとき昔見た単語を繋ぎ合わせてこの意味を作ったらしい。様々なことを自分自身で選択し、絆を育んでいく彼女たちにふさわしいと考え俺はこの名前に納得した。
「偶然見つけたって…そんな嘘バレバレだぜ。…まったくよ」
隣から楽しそうな声が聞こえてくる。俺はそれを聞いて笑みをこぼしながらも手元のお菓子を手に取り食べた。
「…甘いな…」
その味は青春のような甘酸っぱい味ではなく、心温まるようなほのかな甘い味がした。
おしまい




