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レギオン -知ル-


 翌朝、書置きを残し二人を起こさないようにこっそりと家を出た俺は浅見さんに指定された公園へと向かっていた。


 「待ち合わせ場所はこの噴水の前か…というとあそこで待っているのがアーサー…浅見さんなのか?」


 俺は噴水の前に立つ女性に目を向ける。引き締まったスレンダーな体は何かのスポーツをやっていることを意識させ、凛々しい目つきと肩口まで揃えたきれいな黒髪が見える。遠めだが年齢よりも若く見える顔も整っているように見える…端的に言うと


 (なんか女騎士って感じだな)


 と俺は思った。


 あんな奴高校のクラスに居たかな~っと思いながらも俺は手を挙げ合図を行う。向こうもこちらに気付いたのかこちらに向かって歩いてきた。


 「ふむ…君が炎皇でいいのかな?」

 「そうだ。そっちはアーサーみたいだな。わざわざ呼び出してなんの用なんだ?」

 「それについては少し待ってくれ。もう一人呼んでいる人物…というか私たちを呼び出した人物がまだ来ていない」

 「呼び出した人物?」


 もう一人来るのか…。となればそれは違和感を作り出した正体の可能性が高い。俺は少し身構え誰が来てもいいように準備を行う。そんな中、浅見さんは遠くを見つめ手を挙げた。


 「こっちだ!政輝!!」

 「あ、先生!すみません遅くなって!!」


 金の髪をしたユーリ達よりもさらに幼い少年がやってくる。とても事件の黒幕には見えない可愛らしい笑顔をしたあどけない少年だ。だが…


 (VRチルドレンである可能性がある以上、年齢はあまり関係ないか。…それよりも今気になるのは…)


 「先生?」


 浅見さんとこの少年の関係だ。それが今回のことに繋がっている可能性が高い。


 「ああ、君は知らなかったか。雷門は知っているんだがな。私は仕事で武術の師範をしているんだ。そもそもブレイブカードをやり始めた原因は安全に稽古ができるようにVRを取り込もうとしてVRの見学をする際、普段できる武術以外のVRをやってみようと思ったのが始まりだったからな。それで此奴は武術の生徒というわけだ。」

 「どうも炎皇さん。俺の名前は政輝って言います」


 にへらっと笑って挨拶を行う政輝、だがそこにはこちらを利用して蔑みあざ笑うような笑みが少しだけ隠されているのを俺は見た。


 だからこそ俺は直球で話をぶつける。


 「っで。ここに呼んだのが政輝だってことは。最近感じた違和感…レギオンを俺に…いや正確にはミユの参加するレギオンを作らせようとしたのはお前だってことか」


 その言葉に一瞬驚いた顔を政輝は見せただがすぐににやにやとした顔に戻る


 「へえ…気づいてたんだてっきりオジサンは何も知らずに乗せられているのかと思ったよ俺のシナリオにね」

 「そりゃ気づくだろうよ。あんなあからさまな使い捨てアバターに誰かに促されちょうど良く現れたミユ。大方、浅見さんに俺のことでも聞いていたんだろう?ちょうど俺たちは三人でチームを作っていた。だからそこに直結をぶつければ十中八九自分のレギオンを作ろうとするだろうと考えた。そしてレギオンの規定人数に足りないため誰かを誘う。そこにミユをぶつければそのままレギオンに入る…それを狙っていたんじゃないか?これぐらいしか考えられる可能性はないからな…まあ理由はわからんが」

 「そうか、そっから気付かれちゃったか~思ったよりバカじゃないみたいだね。少し油断しちゃったな~。まあ、炎皇のこと聞いたのは浅見さんからじゃないけどそこまで気付ければ充分合格点だと思うよ花丸を上げるよ」

 「なんか言い方むかつくな」

 「そうオジサン?」


 (オジサン強調スンナや!!意外と気にしているんだぞ!!つうかかなり上から目線だな。…これだから現代っ子は…)


 俺と政輝の間に険悪なムードが流れる。それを止めたのは浅見さんだった。


 「おい二人ともそれくらいにしておけ。政輝は礼儀が成ってないし、君は少し大人気ないぞ!」

 「は~い」

 「はあ、わかってるよ…。それで俺を呼んだのはわざわざネタ晴らしするために俺を呼んだんじゃないんだろう?目的はなんだ?」


 浅見さんの言葉に従い俺は話を本筋へと戻す。政輝はそれを聞いたあとジャジャジャーンと大きく自分で言ったあと勿体付けたように言葉を放つ。


 「実はね…今度行われるレギオン戦でミユを…姉ちゃんをわざと一人にして突撃させた後負けて欲しいんだ。それが炎皇を呼んだ俺の目的」

 「はあ!?なんだそれ!?」


 公園の中、俺の声が響いた。


☆☆☆


 「そうだよね~わからないよね~」


 なぜか得意げになる政輝を無視して俺は話を続ける。


 「八百長をしろって言うのはまだわかる。だがわざわざレギオンを作らせておいてあえてミユを孤立させる意味はなんだ?」


 ちらっと浅見さんに目を向けるが彼女は顔を横に軽く振って政輝をみるように促した。


 再び政輝に視線を戻し話を聞く。


 「意味?それはね…ずばり姉ちゃんに友達を作らせることが目的なのだ!!その為に姉ちゃんには一人で立ち向かうことの絶望を教え挫折させないといけないんだ。なんてったって姉ちゃんは意地っ張りだからね。そうでもしないと素直にならないもん」


 「はあ、何言っているんだ?コイツ?」


 俺は心の底からそう思った。ぐへへ、姉ちゃんは俺がいないとダメなんだからとかかわいい姉ちゃんに友達いないなんてダメだよねとか気持ちの悪い笑顔で笑っている政輝にドン引きする。これはあれなのか?俺はそう思って浅見さんに目を向けると彼女はもう手遅れだとも言わんばかりの顔をして首を振った。


 はあ、と一旦溜息を吐き会話を続ける。とりあえず此奴が変態なのは分かった。だがそれとこれとは話が別。絶望と挫折を無理やり与えて友達を作る以外の選択肢を与えないなんてそういうやり方はどうかと思う。何より俺の主義に合わん。


 俺が政輝の申し出を否定しようとするその前に一つの声がそれを遮った。


 「そういうことだったんだな…!!」


 怒りに満ちた声で叢から姿を現したその人物。俺はその姿に見覚えがあった。


 「あ~!!暴力幼女!!」

 「幼女じゃね~!!」

 「あべし!!」


 あの時のように殴られた俺は吹き飛ばされる。彼女はそんな俺を見下ろしていった。


 「まさかあの時のおっさんが炎皇だったとはな。俺は美雪。アバターミユの使い手でそこの変態の姉だ」


 そういって彼女はいまだに理想の姉象を浮かべてトリップしている政輝に目を向ける。ようやく現実に返ってきた政輝は涎をふき取ったあと驚きを露わにした。


 「ね、姉ちゃん!!なんでここに!!いつのまに!!」

 「さっきからずっといたわ!!」

 「まさかあんなに暴れているのに気付かないとはな…」


 俺抜きで冷静に会話が進んでいく。俺は色々な意味で涙目になりながら起き上った。


 「テメがそんな変態だなんて思わなかったぜ!!歯~喰いしばれよ!!」

 「ぐへ!!」


 今度は政輝が殴られる。だが武術の経験があるのだろう上手く受け流した政輝は俺より強く殴られたのにそこまでダメージは受けて無いだった。


 「う…痛い。まさか姉ちゃんにあの姿がばれるなんて…でもばれちゃったらもう我慢する必要ないよね。…この痛みも姉ちゃんの拳から起きたものだと思えば…」

 「キショイ!!」


 美雪の連打が政輝を襲う。政輝は致命傷を避けながらそれを受け続けた。


 「ぐへへ」

 「な、なんだよ。俺はお前なんかの思い通りにはならないからな!!」


 倒すのが面倒になったのか、それとも恐怖からか、美雪は攻撃を止め。そう捨て台詞を残すとこの公園から走り去っていった。


 「おい!!」


 俺の声に止まることなく彼女は走り去っていった。


 「はあ、なんだコントか?どういう状況なんだこれは浅見さん」

 「私に聞かないでくれ…」


 疲れた顔で浅見さんは元気なくそう言った。


 「ふう、話を戻すと変態は姉に友達ができないことを勝手に悩み無理やり友達ができる状態にしようとした。それがレギオンの作成とそこからくるレギオン戦。あえてレギオン戦で個人をぼこぼこにすることによっておそらく友達レギオンを必要とするようにするところから段階的に進めようとしたわけだ。…浅見さんいやここではアーサーと呼ぼう。アーサーはこれを知ってて変態に協力してたんだな?」


 俺がきつい口調で浅見さんをと言う詰めると彼女は申し訳なさそうな顔をして頷いた。


 「友達は居たほうが良い。それは常識だろう?意地を張って友達ができない生徒がいるなら手を尽くそうとするのが師範…教師としてやるべきことだと思ったんだ」


 迷いなく彼女はそう口にする。この議論は前にもあったこれは彼女の偽りざる本音なのだろうだからこそ俺はもう一度同じことを言う。


 「友達が居たほうが良いかいなくてもいいか…それを決めるのはその個人だ。人にはそれぞれ生き方がある。その生き方を選択するのは何者でもない己自身…周りは選択の機会は与えてもいいがそれを強制してはいけない…俺はそう思ってるよ」


 俺の強い目に浅見さんはふっ、と笑う


 「確かにそれをできるのが一番だろうな…だが君のやり方はいささか強引過ぎだ。誰もがその選択を決められるとは限らない。…だからこそ教師は大人は先導者はいるんだ。彼らに変わって選択肢を決めてあげるためにな」

 「それは俺たちの傲慢だよ。いつだって人は強いもんだ。俺は可能性を信じてるどんな子供だって自分の道を自分で決める…たったそれだけのことを決める意思は持っているさだからこそ、先導者は示すだけでいいんだ」


 意見の相違…師範…教師として、スポーツ選手として和を大切にして生きてきた彼女と個人のアプリの制作者として個を大切にしてきた俺とでは意見が真っ向から対決してしまった。生き方はそれぞれ様々だ…だからこそこのように自分を大切に生きる強さが見えるし、周りに流される、周りと助け合わことを前提とする弱さにも見える。

 だがどちらも正しくてどちらも間違えだ答え何てないんだから。意見を通すなら相手を自分の意見で納得させないといけない。


 「はいはい。大人がどうだとかの議論はやめて。そんなことより今は八百長の話でしょ?」


 話に水を差すように政輝が口をはさむ。


 「よろしくねオジサン?俺のシナリオ通りに動いてね?それじゃ俺姉ちゃん追わなくちゃいけないから」


 俺が返答を返す前に政輝は去っていった。


 「興がそがれたな。もとより生き方の違いなど埋められるものではないのかもしれない」

 「そうだな、理解し受け入れることはできても無理やり埋めるものじゃないさ」


 俺はそう言って歩き出す。


 「どこに行く気だ?」

 「幼女が一人じゃ危ないだろう?迷子探しに言ってくるんだよ」


 俺はそう言って公園を後にした…。


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過去作紹介

結城中学ロボ部!!
学園×スポーツ×ロボット×VRMMO! 仮想現実の世界で巻き起こる少年達の熱き戦い!

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『ハーレムなんて絶対いやだ!』や『プロ・ゲーマー ノリ』などがあります
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