レギオン -考エル-
その日の夜…俺は昼間遊んだことでたまった仕事の処理を始めた。自営業だから時間の自由が効いていい。まあそれなら夜にゲームをやれって言われるかもしれないがアイツら子供だしなあんまし夜中にやるような状態にさせないほうが良いだろう。そういう方針でもっぱら最近は昼にブレイブカードをやった日は夜中に仕事を片付けるのが日課となっていた。
(今頃常勤組がゲームを始める頃か…。まあVRが出来てサービス業が減ってほとんどが生産、流通に回った今。定時に出て定時に帰る仕事の方が珍しいしな…対して人の数は変わらないか…おかげでゲームをプレイする人が増えていつの時間に言っても人がいるから楽しみやすいんだが昔とは全然変わったよな…)
なんとなく過去を思い出し哀愁に浸る。こんな時代にならなかったら今の俺はなかったかもしれない。VRによるアプリ革命があったからこそこんな感じでも自営業でそれなりに稼ぐことができたのだ。それを思えば良かったことなのだが、シャッター街や教育などの社会サービスの変化などを考えると少し自分が取り残されているような気持にもなってくる。
「ハードボイルドな気分だぜ…」
良くわからない言葉をつぶやきながらブドウジュースを飲んでいると突然玄関から物音がしてきた。
「??なんだ?」
俺は玄関に向かって歩いていた。そこには大きな布団を持ち玄関先で詰まってがたがたと動く優理と瀬那がいた。
「ちょっと優理。先に進んでください後ろに押されて痛いです!」
「待って、扉抑えるので動けない…」
「だから布団は後にしようと言ったじゃないですか!!欲張って一式持ってくるかそんなことになるんですよ!!」
「むうう」
「そんな言い方しても誤魔化されませんからね!!」
「何やってんだお前ら?」
純粋な疑問から俺はそう言った。それと同時に優理の持っている布団を代わりに持ってあげる。
「お泊りに来た」
「お邪魔しに来ました」
二人が同時に言った言葉に思わず俺は間抜けな声を出す。
「はあ!?」
そして勝手に中に入っていった優理を見て慌てて布団を持ちながら追いかけた。
「ちょ、ちょっと待って。死んじゃう。あなた達がここで寝たら俺が社会的に死んじゃう!!」
いくら仲が良く良く遊んでいるからと言っても夜中に入り込まれたらどんな噂話が立てられるかわからない。そもそも最近外に出ると幼女を家に招いている男としてひそひそささやかれるくらいなのだ。俺の輝かしい経歴に警察に厄介なんてものを作らないためにも俺は必至で止めようとする。俺はロリコンではないのだ。そんな俺に枕が飛んできた。それはかなりの勢いで顔に当たって落ちる。
「えい!」
「ぐお!!…てめーよくもやったな!!この俺に火をつけると危ないぜ!!」
それなりに痛かった俺は全力で怒り、小学校の授業でフェンスを乗り越えて暴投させた伝説の剛速球を投げる。だがそれはあっさりと優理にキャッチされた。
「なに!?」
「僕も…えい!!」
そして自分も参加したかったのか突如やってきた瀬那が俺に向かって思いっきり叩きつける。
せめて投げて…そんなことを思いながら俺は床に叩きつけられた。
「ぐ、お、お前らないい加減に…だいたいなんなんだ!?一体何の用だよ!!」
思わず憤った俺の前で優理と瀬那はもじもじと恥ずかしそうにしながら理由を語った。
「お化け怖いし」
「兄さんのせいですからね。昼間にあんな場所に行かせるから…責任とってもらいますよ?」
その言葉を聞いて俺は悟った。そうだ、昼間のあの俺の悪ふざけ二人はあれを本物だと思っているのだ。だからこそ幼女二人だけで寝るのが怖くなりここまで来たのだろう。ネタ晴らしすればすべて解決するだろうがここまで本気に思っているのを見ると正直に打ち明けた際の制裁が怖い。俺はとりあえず何も知らないふりをして二人には帰ってもらうことにした。
「はあ?そんなことでわざわざ…ぐぼ!」
帰らせようとした俺の口を超速球の枕が塞ぐ。
「やめろっての!!別にきにがぼ」
「ちょっふたげぼ!」
「え、なに?何個あるぶへ1」
「よじげゴホ!」
「ま、まっがへ!!」
その後も留まること知らない枕の連打…いったい何個あるんだ…その攻撃に俺は次第に埋もれていき意識を失った。
☆☆☆
降り積もった枕の中、一本の腕がその中から突き出す。そう俺の手だ。
「ひ、酷い目にあった…」
ボロボロになりながら枕の山からはい出した俺は辺りを見回す。何個枕あるんだこれ?
「複製術でも使えるのかよ…っとユーリ達は…?」
そこには投げ疲れたのか布団に入ることも無く倒れる二人の姿があった。俺は近寄り顔を覗き込む。そこには楽しそうな顔をして眠るユーリの顔があった。
「まったく…楽しそうに寝やがって…今日はこれで勘弁してやるよ」
俺はそう言って優理の頬っぺたを人差し指でグイッと押す。煩わしそうに顔を背ける優理を見た後、俺は布団を取り出し、二人に布団を掛け部屋を出る。これからどうしようかと考えたその時電話がなった。
「なんだこの番号…知らない相手だな…」
一瞬出るかどうか迷う。押し売りだったりしたら面倒だからだ。だがさすがにこの時間に押し売りは無いだろう。おれは結局電話に出ることにした。
「…はいもしもしーーです」
「む、少年か?」
「少年?おじさんですけど…どちら様ですか?」
「あ、すまないゲームのノリではいけないな。私は浅見…ゲームではアーサーと名乗っている」
「アーサー!?」
「そうだ」
凛々しい感じの女の人の声で聞こえてきたその電話の主はアーサーだった。まあリアルではおばさんだと言っていたから何の問題もないが、一番気になることはどうやって俺の電話番号を知ったかだ。
「あれ?アーサー…っと浅見さんなんで俺の電話番号知ってるんですか?言ってませんよね?」
「ああ、すまない了承を取るべきだとは思ったんだがライム…雷門に聞いた」
「雷門に!?アイツまてべらべらと…って浅見さんはなんで雷門のこと知ってるんですか?」
「高校の同級生だ。私も知らなかったことだが私と少年と雷門は同じ高校で同学年だったらしい。少年のことを聞いた時、雷門は逆に驚いていたよ」
「え、そうなんですか。全然覚えがないや」
正直、同級生と言われてもまったくわからん。アーサーの姿が強烈過ぎて中の人が想像できないからだ。まあそれを抜きにしても女性の影もなくパック買いに出ているかネットでデッキ構築を調べていた俺に同級生の女子の記憶なんて残っているわけがない。
雷門の奴はあの時から情報大好きだったからな~。色々と顔が広かったんだろう。その趣味を生かして難関文系に受かってそのままコンサルティング業種で悠々自適の生活を送ってるんだかなわん
俺のまったく記憶にない状態のフォローをするためか浅見さんも電話越しでもわかる苦笑の色をにじませながら語る。
「私も大会とかで忙しかったかな。こちらもそちらのことを全然覚えていないからきにする必要はない。…そろそろ本題に入ってもいいか?」
「ああ、はい。どうぞ」
「実はなちょっと話したいことがある。レギオン戦の前日にこの場所で会えないか?」
「レギオン戦の前日に?はあまあいいですけど暇ですし」
と言うかアプリ作る以外なんの予定もないからな
「そうか了承してくれて助かる。できれば誰にも言わず一人で来てくれ」
「はあ、わかりました」
こうして浅見さんとの電話が切れた。
「なんだったんだ?」
疑問に頭を悩ませる。
(このタイミングでなぜアーサーが電話をかけてくる?…よくよく考えてみればレギオン作成から…いやレギオン作成の前からあまりにも流れが自然過ぎた。突然現れたどこかおかしな直結中、それによりレギオンを作ろうとしたらちょうど良く現れたミユ…あの時ミユは「噂の通りここにいたか!!やっと見つけたぞ…炎皇!!」と言った。噂通りと言うことは誰かに聞いたということだ。だが俺達がギルドに居た時間はそれほど立っていないそれなのに噂になるか?それにアーサーも親切な奴とはいえレギオンができる前からレギオン戦を申し込むなんておかしい、何よりアイツは戦う方式について悩まなかった。初めからそう決められてたみたいに…)
「はあ、まあ考えても答えは出ないか。ただ誰かに良いように踊らされている気がするな…そんなことはないと思うが…もしそうならむなくそ悪いな…」
まあ、明日の浅見さんの話で何かわかるだろう。もやもやとした気持ちを抱えその日は終わった




