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 ねこねこの持つ武器とライオピアーが融合した、大きな牙のついた槍が衝撃波と共に私に迫る。私はそれを体を反って回避すると、槍を使って払いのけた。


 「さすがにこれは躱すよな、MMO殺し!」

 「MMO殺しじゃないユーリ。…レッドオーシャンのことはうろ覚えだけど、今までのやり方は反省している」


 ねこねこはライオピアーの融合を解いて私の目の前にライオピアーを再召喚した、突然現れたライオピアーの爪による攻撃を私はとっさのところで躱す。その瞬間、横からねこねこが追撃を仕掛けてきた。ライオピアーの巨体で動きを隠していたのだ。だが、これも私は振り落とされたライオピアーの足を踏み台に飛ぶことで躱す。


 「反省してるやって!?何を反省してるっていうんや!」

 「ゲームそのものを楽しまなかったこと。あの時の私はただ腕試しをしたいだけでゲームを楽しんでいなかった」


 私は、槍を支点にして体をひねり上げ、さらに高く飛び上がり、回転して地面に着地する。


 「だから別に、ボスなんてただのパンチングマシーンの的だと思ってたし、ドロップアイテムも興味は無かったから捨てた。親切にしてくれたプレイヤーも、口うるさいNPCくらいにしか思ってなかった。その姿勢がねこねこを傷つつけたのなら謝る。でも私は変わったんだ」

 「はぁ~、変わった。口で言うのは簡単やな~でもな、人間そう簡単には変われないんや!属性変換獣ウルガー!!」


 ねこねこは召還したウルガーを武器に融合させた。飛び出した短剣が私を狙う。


 「アイスロックタートル!!」


 その短剣をアイスロックタートルの甲羅が凍り付けて貼り付けにする。


 「それでも、変わった。おじさんと出会って。デュエルして、カードゲームは、ゲームは楽しんでやるものだって学んだ!友達と一緒に挑戦したり、自分の知らないものを知ったり、お互いにお互いを尊敬し合って全力で戦うことの大切を学んだんだ!」


 それを聞いたねこねこはふっと笑う。


 「確かにあんたは変わったのかも知れないけどな、百歩譲って認めてやってもいい。せやけどな、言ったやろ!人間、そう簡単には変われないって。あんたが変わったからって、はいはいそうですか、って簡単に変われるほど、軽い思いを持ってないんや!どうしても認めて貰いたいなら!流儀に従って!デュエルでうちに勝って証明して見せろ!!」


 そう言うと、ウルガーを解除したねこねこは、再びライオピアー融合させ直した。そしてウルガーを短剣に変化させ、棒を持っていない手で持つ。そしてライオピアーの槍を突き出した。放たれた衝撃波はアイスロックタートルの氷を砕き、甲羅を抉る。


 「属性変換獣ドラゴント!!」


 マントを羽織った。ねこねこは私に接近してくると、自動防御によるドラゴントの攻撃とライオピアーの槍による連戟を行ってきた。


 「っく…」


 私は槍でそれを防ぐが、手数が違いすぎて徐々に後ろに後退させられる。ねこねこはそこで私の後ろ目がけて短剣を投げた。短剣からモンスターへと変身したウルガーが背後から私を狙う。前に戦った時も思ったがこれは…


 (もしかして、超接近戦用のデッキ!?まさか、私のような…VRチルドレンを倒すために!?)


 ウルガーに気を取られた私は、前方のマントの攻撃を躱しきれずにとっさに槍で防ぐ、不自然な姿勢で受け止めたため、槍が弾き飛ばされてしまった。武器を失った私は、ねこねこと距離を取ろうとした。だがねこねこは再び接近戦を仕掛けてこようとする。


 「どうや、うちのデッキの味は!このデッキはな、対VRチルドレン用のデッキや、この世界にもVRチルドレンは居る。大抵はお前んとこの炎皇のように中遠距離戦を主体にしたり、カードで牽制していれば身体能力に差があったとしても大抵なんとかなる。やけどな」


 ねこねこはドラゴントをモンスターに戻すとその上に飛び乗った。そしてライオピアーからウルガーに変え、逃亡する私を短剣で狙い続ける。


 「心の声が聞こえるんや、接近戦で勝てないから、遠距離戦に逃げたんやないかって。そう言う声が聞こえるんや、だからこそうちは!あえて接近戦でVRチルドレンを倒す。モンスターと自分自身による圧倒的手数と!武器へと変わる、変幻自在の攻撃で!超接近戦を仕掛け、その身体能力を活かすまもなく!圧殺する!!」


 その射撃から逃げ続けることが出来ないと考えた私は逆に攻撃を仕掛けて隙を作ることにした。


 「アイスニードル!」


 氷針が飛び出し、短剣をはじき飛ばしてドラゴントに命中する。消えるドラゴントから飛び降り、ねこねこは私の前に降り立った。短剣をすべて使い切ったのかウルガーも既に消えている。


 「そうやな、VRチルドレンはそうやって遠距離の対策はしとる。せやけど接近戦の対策はしていない。それはあんたらが傲っているからや。接近戦では負けるはずやないってな、やがな、この世界はそんなに甘くない、カードの使い方次第で、どんな格上にだって立ち向かえられる。あんたらはその傲慢に身を滅ぼされるんや!サイランス!!」


 ライオピアーの融合を解き、サイランスを再度融合させるねこねこ。追い詰められた私は逆転の目を探すため、手札を確認した。


 <M-アイスアーツ…手に持った武器。召喚したモンスターに氷属性を付与する魔法。これさえあれば冷凍庫がいらないね>

 <I-氷冷の太刀…氷でできた太刀…切れば凍る叩いても凍る>

 <M-氷魔反転鏡…攻撃を反射する鏡を作り出す魔法。身だしなみチェックにも使えるぞ>


 残された手札はあと三枚。だが、そのどれもがねこねこの戦術を越える。決定打にはなり得ない。氷冷の太刀があれば、飛ばされた槍の代わりは用意出来るが、それはあくまで槍が太刀に変わっただけ、ウルガーやドラゴントが居なくなったといってもねこねこの場には二体のモンスターが居るし、手札には後一枚のカードが残っている。押し切られてしまう可能性が高い。そしてこの場でアイスアーツは何の意味も無いし、サイランスが出ている以上、一度破られている氷魔反転鏡は論外だ。ねこねこが冷静に対処出来る今、確実に以前と同じように破壊される。


 「これで防御カードの発動も封じた。もうお前に残された手はない!」

 「っく…」


 確かにねこねこの言う通りだ。今の手札で逆転することは難しい。だけど、ここでそれを認めては駄目だ。それは結局、ただ、身体能力に頼っていたあの頃と変わっていないということを証明するだけになる。それは違う、あの日々の意味を証明するためにも私は負けるわけにはいかない!たがらこそ私は!


 「…それでも、それでも私は、あなたを倒す。カードを使って、あなたを倒す!」

 「抜かせ、力に頼り切っていたお前なんかに、そんなこと出来るわけないやろが!」


 使い方次第でどんな相手だって倒せる。それがカードなら、私がねこねこに勝つための道、それも確かに存在しているはずだ。考えるんだ、カードの使い方を、そしてカードを組み合わせた、その先を!…カードの組み合わせのその先?


 私はそこでもう一度手札を見直した。そして気づく。可能性に。

 そのとき、私はカードを組み合わせたその先にある、一つ筋の道を見つけたのだ。


 ねこねこが迫ってきている。決着を付けるつもりらしい。だからこそ私も見つけた道を可能性をひた走る!


 「氷冷の太刀!」

 「そのカードじゃ、とどか…」


 そう言って、ねこねこは笑った。相手は槍、こちらは太刀、獲物の長さの差でこのままでは明らかにねこねこには届かない…だが、それはこのままならの話しだ。

 手札にあるアイスアーツは武器に氷属性を付与できる。そして手札にはアイテムではあるが、氷属性を持った武器である氷冷の太刀がある。もし、この二つを掛け合わせることができれば…。


 「プラス、アイスアーツ!」

 「なんやて!?」

 「魔具!氷冷の斬馬刀!!」


 続けざまに発動させるもう一つのカード。二つのカードは混ざり合い、新たな可能性を生んだ。氷の太刀は氷の力を強化され、刀身を伸ばす。そしてそれは新しく生み出されたカードとなり、私の手元には氷冷の斬馬刀が握られる。


 これで距離のアドバンテージは無くなった。太刀だと思っていたものが、斬馬刀になったねこねこは予想より伸びた刀身を躱しきることが出来ずにダメージを受ける。そしてダメージを受けたことにねこねこは怒りと焦りを覚えたようだ。それは私がカードを使いこなしたことに対するものか、そのまま攻撃を食らってしまった自分自身の不甲斐なさに対するものかは分からないが、ねこねこは冷静さを欠いた、今の攻撃を無かったことにするように、直ぐに追撃を行うためにサイランスを解除してライオピアーを融合してしまう。


 「こんな…ことでぇええ!!」

 「その攻撃を待っていた!氷魔反転鏡!!」


 ライオスピアーから衝撃波が飛び出す。だが、これこそ私が待っていた攻撃だ。私は氷魔反転鏡を生み出し、攻撃をはじき返す。無理な体勢で攻撃したねこねこはそれを躱しきることが出来ず、自らの攻撃でダメージを受けた。


 自らの攻撃を受け、唖然とした表情で消えていくねこねこ。最後まで、どちらが勝つか分からない白熱したいい試合だった。だから、私は心からの気持ちを込めて言う。


 「ありがとう。いい戦いだった。楽しかった」


 それを聞いた、ねこねこは自らの攻撃によって出来た傷を見て、ふっと笑うと言った。


 「結局、自分で自分を苦しめてただけってわけや。…今回は、認めてやるわ、うちの…負けや…」


 その言葉だけを残し、ねこねこは陣取りデュエルから姿を消した。


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過去作紹介

結城中学ロボ部!!
学園×スポーツ×ロボット×VRMMO! 仮想現実の世界で巻き起こる少年達の熱き戦い!

おすすめ短編集
『ハーレムなんて絶対いやだ!』や『プロ・ゲーマー ノリ』などがあります
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