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利用

 「っち、いいところで乱入者かよ」

 「アクア、あんた。こっち止めてそっち付くことにしたの?」

 「っは!今更、そんなどうでもいいことのために俺が此奴の味方をするわけ無いだろう。お前達のような無名の雑魚に、此奴がやられたら、俺の名声まで落ちる。だから不甲斐ない同輩の此奴を手伝ってやることにしたのさ、それにどうせやられるなら…」


 そう言ってアクアはチャクラムを振りかぶる。


 「俺の手で、消えろ!」


 その言葉と共にアクアは俺に向かってチャクラムを投げた。俺は驚きながら後ろに飛び退く。


 「って、おい!味方してくるっていったよね!!」

 「馬鹿が、お前が此奴らにやられなければ、別にそれでいいんだよ。お前が俺の手で消えるか、それとも俺を利用してお前が此奴らを倒すか、その二つに一つというだけだ!」


 アクアのチャクラムは、俺がまるで後ろに飛び退くのを予想していたように、回避した地点目がけてやってくる。だが、スピードは速くない。わざとそう投げたということは、俺には分かった。


 「っふ、そうかよ。じゃあ、お前を利用させて貰うぜ!!」


 俺はそう言って、チャクラムの円の中に双剣槍を突き刺す、チャクラムの回転の勢いを殺さないようにしながら、さらに双剣槍で勢いを付けてマサキに向かって投げつけた。


 「な!?」

 「っち、ガンマ!!」


 炎皇に当たると思った攻撃がこちらにやってきた、それも勢いを強めて、予想外の展開に襲われたマサキは一瞬対応が遅れる。それを見た、レンがガンマを移動させ、チャクラムによる攻撃を防ぐ。

 その瞬間、アクアは走り出した。そして俺も走り出す。二人の中間地点にはレンが居る。マサキはわざとガンマが防げるようにチャクラムを投げたことで、壁となってしまったガンマに邪魔されて事態を把握出来ていない。まさにレンを倒す絶好の機会だ。


 「合わせてくれよ、アクア!」

 「合わせてやるよ、炎皇!」


 挟まれたレン、攻撃が来るかと思ったその瞬間、ガンマが横にそれ、マサキの視界が戻った。状況を理解したマサキは直ぐにレンをその場から逃がす。


 「ナンバーズ001」


 二人の間からレンの姿が消える。だが、二人は攻撃を止めなかった。にやりと笑った二人は目の前に立つお互いに向けて、手を伸ばし、全力でカードの効果を発動させる。


 「灼熱演舞!」

 「アンチノミースパイラルウォーター!」


 水と炎。渦巻く二つの力が二人の手の間で激しくぶつかる。そしてそこから大量の水蒸気を爆発的に生み出した。二人はその衝撃から身を守りながら後方へ飛ぶ。水蒸気はさらに広がり、周辺一帯の視界を奪った。


☆☆☆


 「くそ、視界を奪うつもりだったのか!」


 俺はあの二人の目的に気づき、そう言う。マサキのカード、ナンバーズは数値を弄る能力を持ったカードだ。故に細かい調整を必要とするため、完全に視界を塞がれてしまえば、援護を期待することは出来なくなる。


 幸い、マサキは近くに居るはずだ。直前にカードの効果で側まで移動して貰っていなかったら、一気に勝負が付いてしまっていたかも知れない。


 それにしても…


 (相手の動きが読めない。あの二人はまるで協力し合っているように見えない。さっきだってお互いにつぶし合うのか、と直前まで思っていた。…明確な協力の仕方を見せず、個人個人が勝手に行動する、だからあの二人が協力して何かをするようには見えないんだ。それでいて何故かお互いに目的を共有して、しっかりと協力した結果を出しているのだから、たちが悪い)


 「うぁああああ!!」


 そのとき、誰かの声が聞こえた。この状況で襲われるならマサキしかいない。俺はそう考え、マサキを援護するためにその場に向かう。走って行くと人影が見えた。俺がそれに近づいていくとその人物は振り返る。


 「残念、俺でした~」

 「なっ!?」


 そこに居たのは炎皇だった。すると水の針が俺を襲う。


 「くっ…アクアか!」


 俺は盾で針を防ぐとカードの効果を発動させる。このままでは炎皇とアクアに挟撃されて俺がやられてしまう。だからこそ針を放った人影に向かって攻撃を仕掛けた。


 「カレント!」


 手から放たれた電流が、人影に吸い込まれた。命中したことで人影がうめき声を上げる。


 「っく、アクアか!」


 俺はその言葉を聞いて疑問に思った。アクアか?何でそんな言葉が出る。俺が攻撃したのはアクアのはず…


 「まさか!」


 その瞬間、俺の横に何かが見えた。そしてその手に持ったチャクラムが振り下ろされた。


 手札ゼロでダメージを受け、俺は少しずつ消えることになる。そこで俺は理解した。俺を中心として三角形を描くように三人の人物が配置されていたのだ。いや、俺が中心となるように炎皇が一芝居打った。この圧倒的に敵が有利な状況。攻撃力の無いマサキ。その状況を考えれば悲鳴を上げるのはマサキしか居ないと俺に思わせて、俺をおびき寄せた。そして、わざと自分では無く、アクアに攻撃させた。この時点ではアクアはマサキの近くに居たんだろう。だが、攻撃と同時に移動した。結果、残された人影を俺はアクアと誤解した。先にマサキだと思った人影が炎皇だったことで人影に対する警戒心が無意識に上がっていたのだ。だからこそ、俺は間違えてマサキを攻撃し、そしてその隙を突かれてアクアに倒された。


 「くっそ~!!」


 マサキの声が聞こえる。ナンバーズという攻撃力の無い状態では、二人の攻撃を止めきることは出来なかったということだ。


 …つまり、俺たちは負けた。


 敗北の理由は何か、単純に言えば、アクアの乱入だろう。だが、これはバトルロワイアル形式、そしてデュエルだ。そんな予想外な事態いくらでも起こりえた。それを乗り越えても勝たなければならなかったはずだ。人数は同じ、そしてこっちは連携を極めてきた…いや、それがいけなかったのか、当てはめすぎたんだ、俺たちは、一人では勝てないと思い、二人合わせて最強の一人になろうとした。だが、それには精密な連携が必要となる。そして戦法や動きは限られる。そこを突かれた。

 あの二人は連携していないのにも関わらず、連携していた。ただ、お互いに作戦通りに動くのでは無い。そもそも作戦を伝え合っていたのかも分からない。あの二人がやったことは単純だ。ただ、お互いがお互いで、今の状況から相手のしそうなことを予測して、それに、お互いが合わせ合った。まるで即興のセッションのように、連携したそれは、連携の内容を誰に気づかせることも無く、だが、それでいて相手を崩すための最善手になっていたのだ。


 歴戦のデュエリストだからこそ出来る、そしてお互いの腕を信頼し合っているからこそできる、連携。俺はまだ勝てそうに無いことを実感しつつデュエル会場から消えた。


☆☆☆


 「アクア助かったぜ。もっともあのままでも一人でなんとか出来たけどな」


 俺のその言葉にアクアはふっと笑った。


 「抜かせ、あれだけ追い詰められてよく言ったものだ。…それにしても呆気ない幕引きだった。興ざめだ。こんな奴らを倒したところで、俺の名声には結びつかない。弱ったお前を倒したところで俺の名を汚すだけだしな、俺は他の名の知れた相手を倒しに行くとしよう」


 そう言ってここから立ち去っていく。そして振り返ることも無く俺に言った。


 「あの女をわざと戻して、何が目的かは知らんが、俺のために負けは許さん。せいぜい無い頭を使って上手くやってこい」


 そう言って、アクアは去っていた。


 「ふ、相変わらずだな~。さてと、突入前に他の様子を確認しておくか」


 俺は端末を操作し、現在の状況を確認する。するとセナが既にリタイアしていることに気づいた。

 「約束通り場所は用意した…ってことはやったのは店長か、えげつないな~あの人も、ユーリは戦闘中、ミユも戦闘…お、今終わったか。ちょっと連絡を取るかな」


 そう言って俺は、端末を操作し、ミユに回線をつなげる。少ししてミユが応答した。


 「ミユ、本陣の様子はどうだ」

 「はぁ、はぁ。ああ、あのヨコザキって奴が襲ってきたがミストと協力してなんとか倒した」


 ヨコザキの奴は直接本陣を狙ったのか、というかヨコザキはこっちに来ていたんだな。まあ、途中でわざとリタイアするっててもあるから、フィルがそっちを選んだとはまだ確定はしてないが…。


 「…で状況を聞くために連絡してきたのか?」

 「いや、違う、ちょっと頼みたいことがあるんだ」


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過去作紹介

結城中学ロボ部!!
学園×スポーツ×ロボット×VRMMO! 仮想現実の世界で巻き起こる少年達の熱き戦い!

おすすめ短編集
『ハーレムなんて絶対いやだ!』や『プロ・ゲーマー ノリ』などがあります
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