チュートリアル -初心者教育開始-
「むう。なんで始まりの町に戻るの?」
ユーリはむすっとした顔で俺に質問してくる。俺たちは今、このゲームを初めて始めた人がゲームのやり方を学ぶために使う始まりの町に向かっていった。
「なんでってお前…。まずまともにカードゲームしてなかったじゃないか…。この間は戦いのノリで何とかなっていたがまだ甘い。俺が1から初心者教育してやるから大人しくそれを受けるんだ」
「え~」
「え~。じゃありません~」
そうやって言葉を交わしながら歩いていると突然優理が止まる。
「?どうした??」
「誰かが戦ってる」
俺はユーリが指差した方に視線を向ける。そこでは緑の髪を首辺りで切りそろえた少年?少女?とにかく中性的な見た目をした人がダガーでゴブリンと戦っているところだった。
「なんか動きが変だな?初心者か?」
その子はゴブリンの攻撃を上手く躱しながら戦っているがどうも違和感がある。なぜか動きがカクカクしている感じがするのだ。俺たちが見守る中、その子はピンチに陥っていた。
「おっと、やられちゃいそうだな。初心者っぽいし助太刀するか。パパッと片付けてくるからユーリはここで待ってろ」
「ん、わかったおじさん」
「こっちではおじさんいうな。せめてお兄ちゃんにしてくれ」
俺はそういって飛び出す。同時にデッキを展開した。
「デッキオープン…とこれを使うか」
五枚の手札から一枚を選び発動する。
「炎弾!ファイアーボール!!」
飛び出した炎球がその子を後ろから攻撃しようとしていたゴブリンの顔面を焼く。
「ゴブ!!」
「倒し切れないか、時間経過でそれなりに強化されているな。だが…」
剣を抜き切りかかろうかと考えたがその必要もなさそうだ。その子がカードを使い発生させたカマイタチがその子の周りを回るように敵を切りつける。2体のゴブリンが倒された後、そこには2枚のカードが残されていた。
カードを拾ったその子がこちらを向く。俺はその子が言葉を発するより早く話しかけた
「助太刀に入ったがどうやらいらなかったみたいだな。前後を囲まれている時に全周囲攻撃型のマジックカードを使ったプレイングはなかなかだった」
「いえ、後ろのゴブリンに気付いていなかったので助かりました」
ぺこりと頭を下げるその子の名前を俺は確認した。セナさん?くん、か?通常表示は名前だけだから性別までは確認できないな…。ここでそれを聞くのは直結中に間違われるかもしれないし…とりあえずさんでいっか。
俺がそうやって確認をしてる間にユーリもこちらに歩いて来ていた。
「気づいて無くても手札三枚残っていたし、対処は可能だったはず」
「それは…でもエアカッターが攻撃を受けて消えていた可能性もありますから…」
「ま、消えててもキミなら何とかしてそうだったけどね。動きが変だから初心者かと思ったけど経験者だったのかな?」
俺のその質問にセナさんは手をぶんぶん振り否定の意思を表す。
「いえ、経験者じゃありません。初めてのVRで舞い上がってしまったんです」
俺はその言葉に反応する。
「ほう、初めてのVRでブレイブカードを選ぶとはなかなか…もしかしてカードゲーム好きなのかな?」
そうであるならばうれしい。何せカードゲーム好きは減少傾向にあるのだVR初心者なら相当な老人か子供かのどちらかだろう。見た感じ老人には見えないし、まだ見ぬ今だ若い子供がカードゲームに興味を持ってくれるならカードゲーム業界の再びの繁栄を願い普及を行っている俺としてもうれしいことだ。
にこにこしながら俺がセナさんを見ているとセナさんは恥ずかしそうにしながらも答えた。
「あ、はい…。始めたのはつい最近でまだ好きって言えるほど打ち込めてないんですけど最近熱中していることではあります…有機皇のアニメ三期目まで見たところですね…」
「ほうほう、アニメを見たのかそれはそれは。カードゲームは大抵アニメ化しているからねアニメのカードがカードゲーム化することも多い、何より純粋に楽しみやすいからカードゲームを始める前にはアニメを見ておさらいするのはいいことだ特に有機皇と言えば二期のあの主人公が闇落ちしたところとか…」
「あそこですかそうですね。僕はそれよりも三期の飛行機と人間が合体したところのほうが…」
「四期になるとド外道が出てくるんだけど突き抜けてて良いんだよな~普通主人公になびくところをなびかないみたいな?」
「ちょっとネタバレはやめてくださいよ!!」
二人で仲良く盛り上がって話していると突如強烈な痛みが脇腹を襲った。振り向いてそこを見てみるとユーリが思いっきり脇腹をつねっていた。
「初心者教育…してくれるんじゃなかったの?」
相変わらずの無表情に近い顔で平坦に言いあげたユーリ。きっとほっとかれたことが寂しかったのだろう。俺はああそうだったなと反応を示した。
「初心者教育?」
「ん?ああそう。ユーリはブレイブカードの基礎が出来てないからこれから始まりの町に言って色々説明しようと思っていたんだ。…もしよかったらセナさんも来るかこのゲーム初めてなんだろう?」
俺がそういうとセナさんは驚いた顔をした後今度は恥ずかしそうに手をブンブン降り始めた。
「え、でも悪いですよ…」
「いやいい。一人が二人になったところでそう変わらん。それに優秀なカードゲーム好きにやり方がわからなくてこのゲームを嫌いになって欲しくないからな」
「そ、そうですか…じゃあお言葉に甘えさせてもらいます…」
「むう、むぅう」
こうして俺たちにセナさんを加えた一向は始まりの町へと向かうこととなった。