陣取りデュエル
『レディース&ジェントルメーン!!ついに最終デュエル、陣取りデュエルの時間がやってきたぞ~!!』
『みんなともうお別れなんてレーヴェ悲しい。でもしっかりと解説します!最後のデュエル、陣取りデュエルはチーム戦です!レギオンからそれぞれ五人の選手を選択して参加することになります!』 『レギオンに入ってないことで不安に思った方はいますか、大丈夫です!レギオンに参加していないソロの方は大会の方で自動的にチーム分けを行うので、そのデータを確認して所定の位置に移動してください!』
『陣取りデュエルでは、デュエル開始と同時に、フィールドがそれぞれのレギオン、チームごとに陣として分割されます。それぞれのレギオン、チームは自分の陣内の好きな場所に、それぞれのレギオン、チームを表した紋章入りの旗を設置して貰います。陣取りデュエルでは制限時間まで、この旗を奪い合うことになります!単純に言えば棒引きの棒の引っ張り合い、制限時間が終了したときに自分の陣地内にある旗の数でそれぞれのレギオンにポイントが加算されます!!』
『自分のレギオン、チームの旗なら5ポイント、敵の旗なら2ポイントがポイントとして加算されることになります!ポイントの高い自分の旗を守りながら、いかに効率良く敵の旗を集めていくかが大切になります!さらに補足しますと旗を奪われた時点では負けになりません。時間内であればいくらでも取り返すことが出来ますが、普通のデュエルと同じようにプレイヤーが手札ゼロの状態でダメージを負うとリタイアとなり、そのプレイヤーは陣取りデュエルを継続することが出来ません。強いプレイヤーを潰しておいて、後を楽にするのも立派な戦術になります。攻めるか、守るか、その選択が勝敗を決める!それが~』
『『陣取りデュエル!!』』
『詳細な情報や、現在の自軍の情報は陣取りデュエル中でもデータとして確認出来ますし、通信機能なども使うことができるので色々相談しながら楽しいチーム戦にしてください。ではそろそろ始めますよ~?』
「遅いなあいつ」
俺たちは今、試合会場となるステージに来ていた。既に試合開始まであと少しなのに、未だに炎皇は帰ってこない。
「このまま、陣取りデュエルは四人での参加になるのでしょうか…」
「それは無いぜ」
ミストの気弱な発言に言葉を返したのは、こちらに向かって歩いてきた炎皇だった。
「遅い、何やってたんだよ!!」
「まあ、色々とな。たぶんなんとかなるだろう」
「なんだそれ」
要領の得ない回答に思わずそう言ってしまう。すると炎皇は露骨に話しをそらしに来た。
「それより、転送される前に役割分担を決めないか?転送後にも旗設置のための時間があるけど、その時間を役割分担に使うと旗を設置する時間が少なくなるからな」
「確かにそうですね。せめて旗を取りに行くか、陣地で守りを行うか」
「私は攻める」
ユーリがそう発言する。もとよりそれ以外の選択肢は考えていなかったようだ。
「俺も行きたいところがあるから陣地を離れる。まあ、守りは任せて大丈夫だろ?」
続けて炎皇も攻めることを宣言する。
「私は…特に行きたい場所も無いですし、陣地で待ってます」
ミストは陣地に残ることを選択する。
残りは俺とセナだ。バランスから考えてどちらかが守りに入ればいい。もう一人は攻めでも守りでも好きな方を選択していいはずだ。
倒したい相手はいるが、それが陣地にいるとは限らない。何より自分のレギオンの旗くらいリーダーとして守りたいと思った俺は。
「俺も残る。セナは好きにしていいぞ」
と言った。
それを聞いたセナは
「じゃあ、ボクも攻めます」
と攻める姿勢を見せる。こうして攻めがユーリ、セナ、炎皇。守りが俺、ミストという配分が決定した。
☆☆☆
『では、デュエルスタートです!』
フィールドに転送され、陣地に旗をセットした俺たちは、その言葉と共に敵陣地を目指して走り出した。走りながら端末を操作すると現在いる場所が誰の陣地なのか表示されると共にどこからどこまでが、どのレギオンの陣地なのかが表示される。足下にあったエリア分けの線を跨ぐと別のレギオンの陣地に変更された。
(一応、線で区別されているみたいだけど、俺たちの陣地もそうだったが、城下町とか普通に砦みたいなわかりやすい陣地じゃないから、どこまでが範囲か把握しにくいな。しっかりと確認しないと、取ったつもりが他人の陣地に置いてたということもあるかもしれん)
そんなことを考えながら目指す先はスワローズネストの陣地だ。今のところ妨害は受けていないがフィルはいったいどういう選択をしたのだろうか。
「ま、つけば分かるか」
俺はそう一言だけ言うと脇目を振らずに目的地を目指した。
☆☆☆
ビーストロアの陣地にたどり着いたアタシは、遠くからビーストロアと別のレギオンとの戦いを眺めていた。
「あの中には、いないな…」
アタシの目的はただ一つ、フラッグデュエルで負けたねこねこにリベンジすることだ。だけど、陣地に残った防衛戦力の中にはねこねこはいないらしい。
「う~ん。この端末、使えないな~。陣地の場所と所属プレイヤーは表示されるけど、プレイヤー自身の居場所は表示されないんだよね~」
そう言いながらねこねこを探すために辺りを散策する。すると偶然にも隠されてた旗を見つけた。これを見てアタシは考える。
「むむむ、もしやこれは使えるのではなかろうか」
アタシは頭に浮かんだ名案を実行することにした。
☆☆☆
「まさか、貴様と同じチームになるとはな、迅」
「いやはや、私もこうなるとは思いませんでした。巡り合わせという奴ですかね」
私は今回は、最後まで大会に参加することにした。フィルとの取引の決着を見届けるためという意味もあるが、彼の言葉に思うことがあったのも事実だ。だが、特になにもすることも無く陣地で待っているとアクアは苦虫をかみつぶしたような顔をする。
「俺はお前が嫌いだ。お前は多くの者が楽しんでいる、この世界の創造主とも言える存在だ。にも関わらず、誰よりもこの世界を楽しんでいない。愛していない。…いや、感情を何も持ち込んでいない」
「そうですか」
確かにそうかもしれない。私はただ世界を守ろうとしているだけだ。そこに感情を挟む余地はない。いや、挟めば何かミスを犯してしまう可能性するある。だから、ただ淡々と処理してきた。
「…っち。その態度がいらつく。俺は身の程をわきまえないガキは嫌いだが、自分の成果を認めずに澄ました顔している、こちらのことを意にも返そうともしない、くそやろうはもっと嫌いだ」
そう言ってアクアは陣地から出ようとする。
「どこに行く気ですか?」
「…攻めに回る、このチームのリーダーにはお前が伝えておけ」
アクアはそう言って走り去っていった。