チュートリアル -ブレイブカード初心者-
新章始めます。完結まで終わっているので楽しんでいってください。
「お前の育て方が間違ってたんじゃないのか!!」
「私のせいだっていうの!!」
部屋の外から二人が喧嘩をするような声が聞こえてくる。
ああ、また今日もか僕は暗い気持ちになりながら膝を抱え丸くなっていた。
これも全て僕がいけないんだ。僕がVRをプレイすることができないから…。
でも今日こそはっと僕はVRをプレイする端末を手に取り頭に装着する。
薄れ行く意識の中、新たに仮想現実でできた景色が見えてきた。
その時、見える景色に警告の表示が大量に表れる。
「うがぁああ。あああぁああ!!」
そして同時に自分を襲う激痛に僕はうめき声を上げた。
痛みにもがき苦しんでいると僕は強制的に現実へと意識を戻された。
すぐさま端末を投げ捨てる。だめだいつもより酷い。僕は痛みに呻きながら倒れ意識を失った…。
☆☆☆
気が付くと病院にいた。
ベットの上から辺りを見回すとそこには申し訳なさそうにしている医師と看護師たちがいた。それ以外には誰もいなかった。
…それで僕は全てを理解した。
絶望し病室を飛び出す。上手く動かない体を動かしながら僕はひたすら走った。
そして一人の老人とぶつかってしまう。
「わっ!!」
「おっと」
病弱で小柄な僕は思いっきり吹き飛ばされてしまう。
「大丈夫かい、君?走ったりしたらあぶないよ」
老人はやさしくそう問いかけてくる。
だが、その時の僕は乱暴にその声を振り払う。
「良いんです。どうせ僕なんて!!」
「どうしたんだい。そんなことを言うなんて」
その時、僕を追ってきた医師たちがこの場所に到着する。老人はそれを見て彼らに事情を聴いた。
「どうしたんだい?この子は」
「あのこの子は電脳アレルギーで…」
その言葉で老人は全て納得したようだった。
「…そうか。ごめんね。これも私のせいなんだ」
なんでこの人は自分のせいだといっているのだろうか?
「もうほっといてくださいよ!!VRが出来ない僕何てどうせ何もできないんだ!!」
電脳アレルギーとなったものはVRが多用されるような社会で生き残ることは難しい。それに加えアレルギーという病名がついていることで子供にもその体質が移るとして恋愛のようなことをすることすらかなわない。社会の底辺、役立たずの屑。それが僕なのだ。
「何もできないわけじゃないさ」
「何ができるっていんだよ!!」
老人の無責任な言葉に僕は怒りをあらわにする。
「これを…」
そう言って渡されたのは数十枚の紙束だった。
「これは?」
僕は疑問の声をあげる。
「カードゲームさ、電脳アレルギーだって楽しむことはできる」
僕はその紙束と老人を見つめる。
「来なさい。私が君が君でいられるところに案内しよう」
…これが僕が初めてカードゲームに出会った日だった…。
☆☆☆
「瀬那君、瀬那君。おきなさい」
ゆさゆさと揺られている。どうやら今まで夢を見ていたらしい。起きて目を覚ますと乱雑に散らばったカードが目に入った。
「あ、あわわわわ、しまった」
寝ている時に涎が垂れてしまったのだろう。売り物のカードの中のいくつかのものが濡れてしまっている。僕は話しかけてきた店長に必死の思いで誤った。
「店長すみません。うたたねしてしまって…この存在分はバイト代から引いてもらって構わないですから!!]
店長はニコニコ笑いながら大丈夫だよっと言う
「これ位ならまだ拭けばなんとかなりますから。それよりもまた徹夜で勉強をしていたんですか?あまり良いことではありませんよ?」
店長の言葉にうっと痛いところを突かれながら僕は言い訳の言葉を述べる。
「だって早く卒業したいんです。普通に通っても嫌な目にしか合わないですから…」
早く卒業して店長が営むこのカードショップでアルバイトではなくしっかりと働きたいのだ。それが今の僕の夢そして目標なのだから。
「まだ若いんですからそんなに生き急がなくていいんですよ瀬那君。…そうだ、涎を商品に垂らした罰としてこれの実験台になってもらいましょうかね」
そういって店長は店の物置から何かの機械の操作装置のようなものを取り出す。
「なんですか?それ?」
「これはタクティカルコントローラと呼ばれるものです」
「タクティカルコントローラ?」
僕は聞いたことのない言葉に思わず聞き返してしまう。
「とあるVR開発会社が開発したものでね。現在のVRの端末を使用せず。現実世界にいながらこれを利用したコントローラの操作でVRのキャラを動かすことができるんですよ」
「VR…」
思わず僕は不機嫌な気持ちになってしまう。
「瀬那君がVRに嫌悪感を持っていることは知っている。まあ、君の立場でVRを好きになるっていうのも難しいだろうしね。…でもVRだってもともと人に嫌われるために作られたわけじゃない。楽しんで欲しいだけだと思うんだ。…私も瀬那君にこのままVRを嫌いになって全てを捨てるのではなく、VRを好きになって前に進んで欲しいと思うんだだからこれのテストプレイヤーになって欲しいんだよ」
「…わかりました。店長がそこまで言うなら僕ももう一度だけやってみます。それで何のタイトルのものをプレイすればいいんですか?」
店長は笑顔を見せ一つのゲームのタイトルを取り出す。
「それはこのブレイブカードだね」
☆☆☆
「ねえねえ?遊ぼう?」
「ダメだ今仕事中なんだよ」
俺は周りをうろちょろしながら服を引っ張る優理を無視しながらプログラムのコードを書いていた。俺の職業は自営業のアプリの制作者だ。これで何とか食っていっている。
…時代は変わった。数年前までは思いもよらなかっただろう。まさか当時優勢だったサービス業が衰退し、ブラックとされていた製造や運輸業がエリートの職業になるなど。
VRの進歩はそれほどまでに社会を変えたのだ、わざわざ店まで出向き、人間の店員と話して商品を買うよりも、VRを付けるだけで店に移動でき、わかりやすく、愚痴もいくらでも聞いてくれるNPCの方が優れていた。結果サービス業は全てVRのNPCに乗っ取られ、サービス産業は一部を除いて衰退してしまった。それによって相対的に価値が高まったのが運輸、製造業だ。VRの開発によりソフト系の技術は目覚ましい発展を遂げたそれに対してハードいわゆるロボット産業はあまり発展しなかった。その為製造、運輸は機械化することが出来ず、人間が行うしかなかった。その為重要度が上がったのだ。それにVRで物を買ったとしても現物としてそれを届ける必要がある。あらゆるものは運輸業のものによって運ばれるその過程で社会的不適合者に商品を託すわけにはいかないため、今ではトラックの運ちゃんですら高安定、高収入、高待遇でなるには資格のいる職業なのだ。
まあ、そんなこんなで俺のアプリ開発者っていのも割とまともな職業でなおかつそれなりに同じ職業の者がいる。遊んでいては大変なことになってしまうのだ。
ぽちぽちと画面を見つめながらキーボードを叩く俺の横でまだ優理は俺の服を引っ張る。
「ねえねえおじさん」
「おじさんじゃありません!!」
「ねえねえお兄ちゃん」
「お前のお兄ちゃんじゃありません!!」
「ねえねえ弟さん」
「弟さんってなんだ!?」
「ねえねえ…」
「…満足か?…」
「むう」
俺は手元の作業を止めてため息を付く。
「はあ。しょうがないだろう金稼がないと生活していけないんだから」
「…でも。この間。私手伝ったよね。いつもより速く終わったんじゃ?」
「…ギク!!」
そうなのだ、優理はVRチルドレン…その中でも特に優秀な人物であり、プログラミングもイラスト、音楽作成もなんでもござれのスーパー幼女だったのだ。
「汚いプログラムも見やすくしたし、ライブラリも作った」
「ぐぅう」
「中途半端なイラストも私が書いてまともに直した」
「がはぁ」
「音感の欠片すらない音楽も私がぱぱっと作成した…これ以上何をやるというの?」
「ぬぬぬ」
悪意のない幼女の言葉が俺の胸を抉る。俺がアプリ制作一本でやっていけるのは全ての素材を自分で作っているからだ。本来素材を作るのは大変で大体の場合は分業して作成に当たる。そこを俺はプロキシ作成で培ったイラスト作成能力とデュエリストの巣窟と言える理系大学で培ったプログラミング力。そして必死で勉強した音楽でやっとの思いでやっていた。
…それをあっさり超えられた。正直に言おう。もう今回の分の仕事は終えていると言ってもいい。いつもなら遊びに出かけている頃合いだ。だからといって…いくら天才児といっても小学生くらいの幼女にいい年をしたおっさんが養われているっと言うのはあれだ。ちょっと認めたくない。だから俺はまだこうやってポチポチとしているのだ。
「だいたいお前学校はどうした。学校は!こんな平日の朝っぱらから部屋にいて。お父さんは認めませんからね!!」
「お前じゃない優理。…学校とかもう終わったし」
「終わった?まだ始まったころだろう?」
「飛び級。もう義務教育終わってる」
「そうか…そう言えばそんな制度もあったな…」
俺は遠いところを見つめながら呟く。現在の学校にはしっかりとした飛び級制度が存在していた。これはいわゆるゆとり教育の反動なのだろう。早い段階から学業でどんどん進んでいける制度を作って勉強させようという政府の目論見から生まれたものだ。…まあ、実際はただのパフォーマンスで本当に使うやつがいるとは思っていなかったのだろう特に支援とか、それによって卒業した時の対策もただなく。勢いで作られたといってもいい制度だった。
だが、その勢いで作られた制度の利用者が現れる…そうVRチルドレンたちだ。
その為、いまや10代前半や一桁代の社会人が生まれ様々なところで問題になっているとかいないとか。
ここにその実例がいるのか…と頭を抱える。特に他に否定も思いつかない…というか普通に論破されそうだ。
「はあ仕方ないな、じゃあブレイブカードやるか」
結局俺が折れ。VRの世界に遊びにいくことになった。
☆☆☆
「これは…すごい…」
僕は今、テレビ画面を見ながらブレイブカードをプレイしていた。
正直このようなコントローラ操作型のゲームをやるのは初めてだ。そういうものがあるとは知識で知っていたが実際にやってみるとすごくいいものだと分かる。
今までアレルギーのせいでろくにVRの景色を見ることなんてできなかっただがこれで遊べば僕でも堪能することができる。幻想的で…作りこまれた仮想の世界につい僕は感嘆の声を発してしまった。
現状、他のファンタジーゲームと違い、音声による演唱と簡単な行動により戦うことができるブレイブカードしか使えないらしいがこのタクティカルコントローラは素晴らしいものだ後で店長にお礼を言わなくちゃ。
そう考えながら僕はキャラクターを動かす。魔物退治のために草原を駆け抜けるのだった…。




