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コンテストデュエル

 『レディース&ジェントルメン~!!早くも第二回戦の時間となりました~!!第二回戦は様々なプレイヤーの創作した演技が見れるデュエル。コンテストデュエルとなっています!では早速、解説をお願いいたします』

 『は~い。では解説を始めたいと思います!!コンテストデュエルは五枚の手札と一枚のドローカードを使い、カード同士の組み合わせやコンボで観客を楽しませる演技をすることを目的としたデュエルです。この戦いは直接的なバトルではありません。一人ずつ発表を行い、様々な観点からポイント付けを行って、そのポイントを競い合って貰います!!』

 『公平なポイント付けになるように審査委員はNPC審査員と特別に来てもらった、このブレイブカード運営であるPT社の社員が行います!組み合わせて、タイミング良く使って、演じて。最高の演技を見せる。それが~』

 『『コンテストデュエル!!』』

 『では、第一グループの発表から始めましょう!!』


 その言葉と共に次々と演技が始まっていく、それぞれが自分の趣向を凝らした演技を行い、会場はどんどん盛り上がっていった。


 私は控室からその様子を観察していた。色々見ているがビビっと来るものがまだない。自分はどういう物が好きなのだろうか。絵の助さんはどういう物に憧れるか、その傾向が人の感性であり、センスだと言っていたが、だとしたら自分のセンスはどういう物なのだろう。師匠の生き様に感動することもあったから、やはりああいうタイプなのだろうか、だが少し違う気もする。


 そんなことを考えていると絵の助さんの演技の順番になっていた。


 「それでは、皆さまにはあっしの絵巻をみてもらいましょう…虎の絵巻、火の絵巻発動!!」


 その言葉と共に絵の助さんの手に二枚の巻物が召喚される。


 「あっしの絵巻は開くことで発動するアイテム。一回こっきりしかつかえやせんが、モンスターを召喚したり、魔法を発動したりと様々なカードと同じ効果を発動することができやす。…では虎と火の宴を始めやしょう」


 絵巻を開くとそこから虎と火の輪が飛び出す。多くの人が虎で火の輪を潜るもようしかと思ったが、そうではなかった。虎が立っているとそこに火の輪がやってきてその輪が縮まり虎を炎上させる。


 ざわつく会場の中、絵の助さんが語り出す。


 「物語の始まり、人々に災厄をもたらした虎は炎に包まれ打倒された」


 虎のモンスターが苦悶の声を上げる。絵の助さんは更に続けた。


 「虎は浄化の炎に包まれながらとある思いを抱いた。生まれ変わったら人々に災厄をもたらすのではなく救いたいと。そしてその心に浄化の炎は答えた」


 炎の中から、青白い炎でできた虎が咆哮と共に姿を現す。属性進化だ!絵の助さんは話に合わせて虎のモンスターに炎を浴びせて進化させたのだ。


 まるで昔話を聞かせる紙芝居のように絵巻に召喚されたモンスターが動き、物語は進んでいく。


 「虎は自分の身に起きたことが理解できなかった。だが、徐々に冷静になると使命感に突き動かされた。虎は駆け出した。自分を打倒した者達の仲間となるために。虎の姿を見た人間たちは驚き、虎を再び倒そうと動き出す。虎は必至の思いで敵意をないことを示すが、人間たちは信用しない。だが、人間のリーダーは条件を出すことで虎を信用しようと言い始めたのだ」


 その言葉と共に虎のモンスターが嬉しさを表すように駆け回る。


 「三つの条件を出そう。それを越えれば君に悪意がないと認めて、共に人々のために働こうじゃないか。人間のリーダーの言葉に従い、虎は冒険の旅に出ることになった。一つ目の条件。絶望の壁に巣を作り、壁を越える人間を襲う鳥の害獣…それを倒すために壁へとたどり着いた虎の前に目的の鳥が姿を現す」


 そう言うと絵の助さんは新たな絵巻を出現させ、そこから鳥のモンスターを出現させた。目の前で鳥のモンスターと虎のモンスターの壮絶な戦いが始まる。


 「戦いは熾烈を極めた。だが、虎は苦難の末、鳥の害獣を倒すことに成功した。止めを刺そうとする虎。だが、その瞬間、鳥の害獣が守ろうとしていたものが目に入る。それは鳥の害獣の子供だった。鳥はただ、自分の子供を守ろうとしていただけだったのだ。それを見た虎は止めを刺すことを迷った。虎は救いたいと思い、生まれ変わったのだ。なのに鳥を殺し、鳥の子供たちを間接的に殺そうとしている…虎は迷いに迷い。結局、止めを刺すのを止めた。そして鳥に自分の仲間になるように伝えた。人間のリーダーに正直に話せばきっと理解してくれる。そう、考えたのだ。虎は育児に戻った鳥とまた会う約束をして第二の条件へと向かった」


 鳥がそこで舞台から遠ざかり、また虎が歩き出す。


 「第二の条件。それは高価な宝石の原石を洞窟の奥から探し出してくることだった。薄暗く狭い洞窟。進むのは困難を極めたが、炎の体になった虎は上手く体の大きさを変えることで進むことができた。虎はきっとこの体も人々の役に立つためにこのようになったのだと感謝しながら進む。宝石を手に入れた虎は何の問題も無く帰還する」


 虎がスキップをしながら移動していた。そしてそこへ鳥が合流する。


 「虎は順調に進んでいることを喜んだ。鳥も仲間に入り。三つ目の条件も簡単だろうと考えた。三つ目の条件、それはとある防壁を作ることだった。虎は鳥と協力して立派な防壁を作りだした。そしてそれを聞いた人間たちが集まってきた。虎は言った。条件は全て果たした。悪意がないことを認めて欲しいと。人間は言った。そこに鳥が残っている。条件は全て達成されていないと。だが、虎はその返答は予想していた。虎は人間たちに鳥がなぜあそこで人を襲っていたかを語り、そしてもう危険はないと語る。だが、人間は認めない。それを見ていた鳥は動いた。自ら防壁に向かい命を落とす。鳥は言った。自分の命はあの時尽きていたはずだった。伸ばしてもらった時間で子供たちは巣立った。だからお返しがしたいと。鳥は死んだ」


 鳥のモンスターは壁にぶつかり、消滅する。虎のモンスターは嘆きながらも対話を続ける。


 「これで条件は満たされた。さあ、認めてくれ。虎の慟哭のような叫びを人間のリーダーは受ける。人間のリーダーは深く頷くと、手を上げて部下に何かの合図を送った。…その瞬間!」


 絵の助が新たな絵巻を取り出し、虎のモンスターの上空にゴーレムを出現させる。虎のモンスターはゴーレムに潰され、苦悶の声を上げる。


 「突如合われたゴーレムに虎は押しつぶされた。どうしてっと虎が問いかけると人間のリーダーは何でもないように言う。もとより悪意があろうとなかろうとお前達を活かすつもりはない、厄災は取り除かなければならない。第一の条件は厄災同士潰し合わせるため、第二の条件はお前を倒す資金集めのため、第三の条件はお前を倒す武器自身をお前に作らせるためだと宣言する。虎はその言葉を聞き、絶望した。なぜ改心したのにこんな目に合わなければならないのかと、自分が生まれ変わったのはなぜなのかと。虎は願い答えを求める」


 『願いの結晶たる道具の極致。今、創造し、作りだし、その手に集え…ドロー!!』


 絵の助さんが流れに合わせてカードをドローする。絵の助さんはそのカードを確認すると一瞬考えるようにした後、話を続ける。ゴーレムは虎に攻撃を仕掛け、虎のモンスターは消滅した。


 「虎は答えることを得ることなく倒された。人間は喜び、騒いだ。だが、その時。不思議なことが起った。虎が倒された場所。そこに何かが集まり、生まれようとしていた。人間は一瞬で理解した。虎が蘇ろうとしていると」


 絵の助は新たな絵巻から虎のモンスターを再び召喚する。


 「虎は蘇った。そして理解した。これは試練なのだ。因果応報。厄災は繰り返される。再び、人に災いをもたらすものとなった虎は全てを破壊した。そして暴れ続けた。そんな中で再び虎を人間の攻撃が襲う」


 絵巻から巨大な槍が出現して虎を貫いた。


 「また、虎は生まれ変わるだろう。救うものとして。だが、また虎は生まれ変わるだろう。元の厄災として。永遠と繰り返されていくのだ…以上でござんす」


 そう言って絵の助さんは退場する。良くわからなかったが童話的な昔話的な何かだったのだろう。ああいった話は教訓的な意味合いを強く持つ。この絵の助さんの演技も何かそう言った意味合いを持ったストーリーだったのかもしれない。


 私は絵の助さんの演技を見て思った。


 「これも私に合わないな~」


 絵の助さんの演技が終わり、次に舞台に立ったのはガウガオーさんだった。


 「では、俺の演技を始めるとしよう。俺の演技はシンプルイズベスト!さあ、この正義のポーズを見るといい!変身…烈火フォーム!!」


 その言葉と共にガウガオーさんの姿が変わる。あれは変身系統のカードを使ったデッキだ。同じような変身カードを持っている私は瞬時に理解した。変身カードは姿を変えることで変身している間何かしらの効果を得続けるマジックカードだ。


 変身を終えたガウガオーはひたすらポーズを取る。そして気が向いたタイミングで別の姿に変身し、またポーズを取り続けた。そして満足するとどこかへ去って行った。


 「奔放な演技でした。…う~ん。ああいうの少し惹かれるかも?」


 ガウガオーの演技は、見せるというよりただ自分がやりたいことをやると言った感じだった。その自由度には少しばかり惹かれるものがある。


 それからもしばらく演技が続き、ついに椿姫さんの出番になった。


 椿姫さんは何も言わずに舞台に立つと優雅にデッキを展開する。


 「月花の舞」


 短くそれだけ言うと椿姫さんはおもむろに体を動かし踊り出す。現代の激しいダンスとは違ったどちらかと言えば奉納などの儀式のために踊るような踊り。完成度は高く、不思議と神聖なものを見ているような気分になる踊りだが、今のところカードを使わない何の変哲もない踊りだ。だが、そう思った所で椿姫さんの動きが変わる。踊りが激しくなるにつれカードの効果を使いだす。それは魔法とスキル…そして魔技だ。踊るように突き出した手の先からスキルによる輝線が描かれ、周囲に発生させた光り輝く魔法の球体と調和する。それは暗き月夜に踊る、光り輝く花のように見えた。

 踊りが続き、クライマックスに入っていく。膝を着き、何かに捧げる様に空に向かって腕を大きく突き出す。すると空に大きな氷の月が姿を現した。腕を突きだすことで一定距離離れたところを攻撃するスキルと攻撃点を凍らせる魔法を合わせた魔技だ。今まで見えなかった月をその場に作り出した。椿姫さんは一例すると演技を終えた。演技中、ほとんど喋らなかった。何も言わず魅せる。そんな信念が伝わってくるような演技だった。


 「綺麗…」


 思わず出てしまったのはそんな言葉だった。単純に美しい、考え抜かれたカードと踊りの組み合わせ、最初から最後まで自分の魅せるべきものをやって終わらす信念。どれも今の自分に真似できないことだ。

 …今にして思えば、自分はらしさを出すために言葉に頼りすぎていたのかもしれない。どことなく中二なロールをして皆と同じだと満足しているところはなかっただろうか?自分だけが欲しくてそう言ったことをやっていたはずなのに、世間の目にさらされて隠し通して、それを止めてからもまた隠すことにならないように同じような趣味の人たちと似たようなことをしようと躍起になっていたなかったか。

 やりたいことはある。だけど知られるのが怖い。評価されなかったらどうしよう。そう考えて似たような者達の集団を探してそれに合わせる。…でも結局それは評価を気にしてやりたいことをやれてはいなかったのだ。

 ああ、それでっと私はその時思った。


 師匠は魔皇ロールなんかしてるが無理やりそれを作っているわけではなかった。ただ楽しむためにロールをして、たまにロールになっていないときもある。他人の思う魔皇というロールではなく自分の思う魔皇を演じていた。だからこそ師匠にしたいと思ったのかもしれない。絵の助さんも椿姫さんもガウガオーもそうだ。他の人には何の価値もなくても、それはやり方が違うと言われても、きっと自分のそれはこういうものだと言ってやり方を変えなかっただろう。自分自身がそれで良いと思えばそれだけが真実なのだ。それはエゴなのかもしれない。でも誰だって駄目だと思うことのためにわざわざ行動しない。どんな人間だって、それが良いことだと自分のエゴを持って行動するだけだ。本当に自分の意思で何かを成すなら覚悟が必要だ。周りからどんな評価をされても受け入れる覚悟を、その上で貫き通し、極める覚悟。私が憧れた部分はきっとそこなのだろう。


 ならやることは決まっている。


 順番となった私は会場へと向かった。



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