蠢く思い
…ユーリの勝利を注意深く見守っていたのはユーリの知り合いを除くと二人だけだった。その一人楓は楽しそうにその様子を見ていており、隣にいるマサキに話しかけた。
「ねえねえ、見てよマサキ。あの子、勝ったよ。さすがアタシと引き分けただけあるよ~。そうでなくっちゃ斬りがいが無いもんね。やっぱりアタシの刀は強者の血が似合うと思うんだ~」
「はいはい、そうですね」
「…なんか、適当じゃない?反応。ね、レン~。マサキが適当なんだけど~」
「マサキ。しっかりと対応しろよ。お前の仕事だぞ」
「いや、勝手に仕事にして押し付けるないでよ!?大体、僕がやる気を失っているのはお前達が勝手にタッグデュエルのメンバーを変えてたからじゃないか。始まってしまったらもう変えられないだろ!そのせいで僕が脱出デュエルやることになるし…はあ。折角の準備が無意味になるじゃないか」
「まあ、準備は別の段階でも使えるしさ、元気だそう」
「レン、君ね…」
いさかいを始めた二人をしり目に楓は画面に注目する。
「出てくるかな~タッグデュエル。早くまた、戦いたいな~」
もう一人の存在。それはねこねこだった。ねこねこは忌々しいとい言った視線でユーリの活躍を見ている。
「MMO殺し…」
そんなねこねこの様子を見た、ガウガオーが声を掛ける。
「ねこねこ、どうした?」
「…いや。なんでもない」
そう言ってねこねこはどこかに去って行った。
☆☆☆
「大金星だなユーリ。おめでとう。良い戦いだったぞ」
「むっ!」
得意げな顔をするユーリ。俺達は戻ってきたユーリをみんな祝っていた。あのもふもふさんやシノン、ワンダーリングに競り勝ったのだ。しっかりと考えた良い試合だった。これはうちのレギオンに流れが来ているのかもしれない。
「よし、この調子でどんどん行こう。次はミストだな。しっかりと頑張って来いよ」
「え"?」
「「「「え?」」」」
ミストのおかしな反応に、残りの全員が疑問の声を上げる。ミストは明らかにやっべ~と言った雰囲気で焦り始めた。それを見かねた俺が代表して声を掛ける。
「どうしたミスト。そんなに慌てて」
「え~と…次、私でしたっけ?一日目にクイズ以外試合がなかったから。すっかり観客気分でした…どうしましょう師匠!コンテストデュエルなのに何の用意もしていません!!」
「断言するなよ!てか、自分の出番を忘れるな!…どうするってどうしようも無いぜ。もうすぐ時間だ会場に向かわないと!!」
ユーリの勝利の余韻など何処かに行ってしまった。コンテストデュエルは他のデュエルと違いある程度見せ方を考えなければならないデュエルだ。何も用意してないととんでもない演技になり、戦うことなく負けてしまうかもしれない。あまりの事実に皆でわたわたと焦り始める。それを見たユーリが自分への称賛があっさり終わってしまったことに気付き口を曲げる。
「むぅ…」
「と、とりあえず。移動しながら考えるんだ。もしできなかったら出たとこ勝負しかねぇ」
「みんなで可能な限り考えましょう!!」
そんな感じで俺達は慌てながら移動した。




