イベント -特別ステージ-
「クリアランス・ランス!」
その言葉と共にエイトは腕を前に押し出した。恐らく見えないがあそこにはある。俺はそう考え一歩下がりつつ、予想される場所に双剣槍をでたらめに振るう。運よく不可視の槍とぶつかり、攻撃を防げた。だがこのまま続けると負けることはわかり切っている。だからこそ俺は提案する。
「なあ?場所移さない?」
「移すわけないでしょ」
「デスヨネー」
現状はとても不利だ。以前戦ったのは砂漠ステージだった。足元の砂を巻き上げることで不可視の物体に砂を付け、見えるようにすることで何とか相打ちまで持って行ったのだ。だがここは遺跡。岩で作られたフィールドにはそのような要素は一つもない。
(フッハハハハハハハハ…ですが笑えますねぇ、あの一件ではあなたは、私に取って最高の舞台で相打ち、一方あなたに有利なこの場では負けそうになっています。随分と差がつきましたぁ。悔しいですねぇ)
そんなくだらない自虐をしつつ、俺は考える。とにかくここで戦い続ければ負けるのは俺だ。思いを掛けた分だけ強くなる…クリアを使い、ひたすらに対人戦を極めたエイトにこのただの遺跡で俺が万が一にも勝てる要素はない。積み上げてきたものが違うのだ。
(ならば無理矢理にでも場所を変えるだけ!元来、魔皇ってのは自分に有利なフィールドで勇者を待つもんだぜ!!)
「クリアランス・ソード!!」
動き出そうと考えた俺の目の前でエイトがさらにカードを発動させる。そして槍ではない方の手をこちらに付き出してきた。
俺は手札を確認し、瞬時に対応を考える
<A-灼熱炎舞…手を振り回すことで全てを焼き尽くす灼熱の炎を周りに生み出す。やけどしないようにご注意を!>
<M-魔王化…発動後、能力値上昇、飛行能力獲得、使用カード威力上昇の効果を得る。ただし演唱を行うと効果が消える。魔王化とか…まじ中二…(笑)>
<I-コストパワー…デッキのカードをコストとして支払その分だけの威力の爆発を起こす。さあさあコストを払いなさい。カードとは力なのです>
<M-リベレイションフォース…デッキから三枚のカードを墓地に送る。その後、墓地のカードを一枚手札に加え、一枚をデッキトップに置く。え~っと結構複雑…>
<A-斬鉄剣…岩ごと相手を切り裂く一撃。使用後武器の威力が落ちる。一回ぽっきり大特価>
「灼熱炎舞!!」
(例え見えなくても物体はある。なら丸ごと空間を攻撃する!!)
手から発生した炎が周囲全てを焼き尽くす。だがその中に剣の形をしたものは存在しない。
(なぜ…まさか!!)
そう思った俺の右手に痛みが走った。それを掴んでみると何も見えないのに感触でダガーだということが分かる。手札の斬鉄剣がダメージにより消えていた。
「見えないなら発動してなくても、別の何かを発動してても気づかないよね」
「洒落たマネを…まんまと騙されたぜ」
エイトは元からクリアランス・ソードなど発動していなかったのだ。奴は発動したと見せかけて俺に防御を強要した。そして防御が終わり生まれる隙をこっそりと発動したダガーを投げて狙ったのだ。
「…やっぱり、これ以上は手を考えている暇はないな!コストパワー!!俺はコストを5枚払う!!そして魔王化!!」
コストパワーはコストを払うほど威力の高い爆発を起こすアイテム。俺はそれを発生させ、エイトに向かって投げると同時にコストを払う。そして自分はその結果を確認することもなく魔王化で空へと飛びだした。
強力な爆発が起こる。エイトは不可視の盾でそれを防いでいた。
(ダメージすら与えられていないか!!)
「そう簡単に逃がすと思うか!喰らえ!!」
そう言ってエイトは槍を投げる。
「うわ!」
見えない槍を回避する手段の無い俺に命中し、そして俺は遺跡の建物の中へと落ちていった…
☆☆☆
「このあたりに落ちたとはずだけど…」
あの後、炎皇を見失ってしまった。止める筈に槍を放ったはずが落としてしまったことで逆に見失ってしまったのだ。
「失敗したな~。さてどう来る?」
勇者らしく攻めていきたいものだけどね。炎皇のスタイル的におそらくゲリラ戦を仕掛けてくるだろう。特にこのような建物の中は奴のフィールドだ。注意がかなり必要になる。
遺跡の中を注意深く進んでいく。その時、奥から物音がした。
「そこか!!クリアランス・ウィップ!!」
見えない鞭を出現させ!そこを狙う。回復させた手札から一枚減り、現在の手札は四枚だ。
ちなみに手札はこれだ。
<I-クリアランス・ソード…見えない剣を出す。主人公がもっているように見えなくても、確かにそこにはあるのだ!>
<I-クリアランス・カノン…強力な射撃を行うカノンを出す。弾数は1。弾もカノンも不可視。俺の射線に立つんじゃねーぜ?>
<M-クリアランス・ブラスト…見えない衝撃波を生み出す魔法。人を驚かすのに使いましょう!>
<M-クリアランス・ステップ…見えない足場を作り出す魔法。これで君もイリュージョニスト!>
破壊した壁から炎皇が飛び出してきた。しかし炎皇は二人いた。そしてその二人の炎皇がこちらに向け走ってくる。
(二人…!?手札は両方ある…ということはモンタージュモンスターではなく、幻覚系の魔法!それならば…!!)
「ふっ!」
俺は炎皇たちが向かってくる先にある壁を破壊する。幻覚系の魔法は実体を持たない。つまり壁を破壊した破片がすり抜けない方が本物!!
二人の内、手前の炎皇に細かな破片が当たる。それを見て、俺はそちらに鞭を振るった。
「そっちか!!」
そしてその攻撃は炎皇に当たり…モンタージュモンスターとなってダメージを受け消えた。
「何!?」
予想が外れた俺は驚きの声をあげる。馬鹿なモンタージュモンスターは手札まで再現できないはず…なぜ…。
その時、俺は気づいた。モンタージュモンスター単体では手札を再現できなくても幻覚系の魔法を使えば再現できる。
(そうか!手札がないモンタージュモンスターの特徴を誤魔化すために幻覚系の魔法を同時に使い歩かせたのか、手札の幻覚をモンタージュモンスターの動きに重ねることでそちらを本物だと誤認させたんだな…なら本物の炎皇は!)
俺がそう考えた時に天井の壁が破壊された。
「どんな相手でも粉砕、玉砕、大喝采!!それが孤高なる魔王の流儀だ!!」
そしてそこから炎皇が飛び出す。偽物を攻撃していた俺は一瞬の隙を突かれ動くことができない。
「くらいな!!」
そして炎皇の双剣槍が俺の腹へと当たる。ダメージを受けながら倒れる俺を炎皇は更に押し込んだ。すると床のが割れ下へと落ちていく。
「ぐ…地下!?」
「特別ステージさ!お前を倒すためのな!!」
そしてそのまま地下を落ちていく。そして大きな水しぶきを立てた後、俺達の戦いの場は水の中へと移った。




